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読書79 『伝言』

    中脇初枝著

日本の敗戦とともに、新京の町には中華民国の国旗が掲げられ、ソ連軍がなだれこんで来る。

満州で生まれたひろみが、異国のような故郷、日本に引き揚げるまでの過酷な日々。

大日本帝国が傀儡した満州の崩壊を、日本人のひろみ、中国人の李太太、関東軍で極秘研究に携わる島田の視点から描かれる。

ひろみたちが作っていた軍事機密といわれたものが、風船爆弾だったと知った。
満州開拓というのが、中国人の土地を奪うことだったと知った。
おいしい饅頭をくれた李太太さんから、終戦後にうけてはいけないやさしさをうけていたことが、あやまちだったことを知った。
戦争はわけへだてするのだと知った。

「気づけなかったから」の後悔。
(東京新聞web 書評から)
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「満州の歴史を語り継ぐ高知の会」の崎山ひろみさんの体験をもとに、児童文学作家でもある中脇初枝さんが執筆された作品です。

印象に残った場面は、李太太とご主人の健明が、終戦後「親日狗子」と罵られ、いわれのない嫌がらせを受けても、ひろみたち家族に、変わらず親切に接してくれたこと。
李太太は、ひろみと妹に靴を縫ってあげようとします。
ひろみは後で、自分たちに関わったために健明夫婦がつらい立場に追いやられたことを知り、後悔します。
誰の想いも、やるせないと思いました。

気づけなくて、見過ごして、やり過ごしたことを後悔しないように。
今、ひろみさんは93歳です。自分にできることをやり続けています。
かつての満州にも行きました。
終盤に、孫とのやりとりを通じて、ひろみさんが取り組んでいる内容も綴られています。

戦争の話は、どの話も悲惨で苦しいですが、決して忘れてはいけない。伝えていかないといけないという想いが伝わってきます。

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