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旅の備忘録

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旅先の夜を、愛している。

旅先の夜を、愛している。

「それでは、また。」
「今度は、益田で一泊しますね。」

益田駅前で知人と挨拶を交わし、フルーツサンドを手に特急列車に乗り込んだ。

電車は、ガタゴト音を立てて、時おり大きく揺れながら東へと進んでゆく。
視界が開け、左手には真冬の日本海が広がる。
買ったばかりのフルーツサンドを頬張り、イヤホンを耳に差し込んで。背もたれをゆっくりと倒す。

うとうとと少し眠っている間に、電車は松江駅に到着した。

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宮古島に呼ばれて。

宮古島に呼ばれて。

先日、仕事の都合で宮古島を訪れた。
沖縄本島や石垣島には何度か訪れていたけれど、宮古島に足を踏み入れるのははじめて。

宮古島の上空からは、島の周りをぐるりと取り囲む美しい青色の海がよく見えた。
後から聞いたところによると、宮古島には大きな河川が流れていないので土砂が海に流れ込まず、澄んだ青色が保たれているらしい。

五月の初め、梅雨入り前の島に降り注ぐ日差しはカラッとしていて吹く風は心地よく。

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瀬戸内の、光と風に魅せられて。

瀬戸内の、光と風に魅せられて。

最終日の朝、雨予報だったにも関わらずお天気は予想外の晴れ。

部屋には、朝の光が静かに差し込んでいて、窓の外は変わらず凪の海。
朝ごはんは、鯛めしのお弁当だった。
お弁当箱を包むデニムの風呂敷も可愛い。

朝食の後は、少しだけ海沿いを散歩した。
夏の朝みたいな爽やかな空気に、ふかく、深呼吸をしたくなる。
海の近い街は、内地よりもひと足早く夏のような空気を感じるので好きだ。

お宿をチェックアウトし

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岡山、海の近いまち。

岡山、海の近いまち。

旅の二日目は、淡路島を出発し徳島、香川経由で岡山を目指す。

せっかく徳島を通るので!ということで、まずはうず潮の見える道の駅へ。
高台では、まっすぐ立っていられないほどの強い風が吹いていて、
太陽に照らされて瀬戸内海が煌々とまぶしく輝いていた。

あ、渦が巻いてる気がする!これがうず潮かな!とふたり騒ぎながら車は大きな橋を渡り、四国へ。

昼食は、やっぱり讃岐うどんが食べたいよねということで、急

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はじめまして、淡路島。

はじめまして、淡路島。

2021年の暮れに会社を辞めてひとり、旅をして以来。
一年と少しぶりに、今度は妹とふたり、瀬戸内へ旅をしました。

東京から約一時間、飛行機で神戸空港へ。
実ははじめましての、兵庫県!
車を借りて、まずは淡路島へ向かう。

お昼は、森のオトさんにて。

淡路島の食材をたっぷり使った、森のオトプレートを注文。
机にお皿が置かれた瞬間、思わず わあっと声がこぼれる。

一品一品、どれに手をつけても信じ

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春の初め、栃木へ。

春の初め、栃木へ。

先日、一泊二日の栃木旅へ行ってきました。

土曜日、雨の中レンタカーを借りて東京を出発。
まずは朝マックで腹ごしらえ。
まだ街が目覚めきっていないような、人のまばらな土曜日の朝。
いつもと違う、旅行の日特有の空気に胸を躍らせて。

小雨の降りしきる中、東北自動車道を北へ、北へ。

お昼は栃木市内のパーラートチギさんへ。
大正時代の洋館をリノベーションしておられるそうで、レトロな外観もとっても素敵。

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冬の終わり、再び沖縄へ。

冬の終わり、再び沖縄へ。

3ヶ月ぶりに、わたしは早朝6時の羽田空港で搭乗を待っていた。

眠い目を擦りながらの日の出フライト。
飛行機は轟音とともに地上を離れ、眼下にはまだ半分眠ったような東京の街と、朝日に照らされた橙色の静かな東京湾が広がり、そこを幾隻もの船が行き交っているのが見えた。
この場所、この時間帯にしか味わえない最高の、至福のひととき。
早起きは辛いけれど、やっぱり早朝フライトはやめられない。

石垣空港に降り

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福島、中距離バスに揺られて。

福島、中距離バスに揺られて。

気が付けば、1月が風のように過ぎ去って、2月を迎えていた。
相変わらず、日本全国津々浦々、駆けまわる日々を送っている。

先々週まで鳥取、その次は盛岡、その次は千葉と埼玉、そして福島。月末には沖縄。そんな感じ。

こころがずっと落ち着かないような、忙しなく、ふわふわとした不思議な日々だ。

先日、福島で中距離バスに乗った。
いわきから福島駅周辺へ。二時間ほどのバスの旅。

発車前に、名産品のほっき

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砂丘、そして海のあるところ。

砂丘、そして海のあるところ。

仕事柄ほんとうに出張の多い毎日を送っているのだけど、2023年の出張初めはそう、ここ鳥取。

前回訪れたのは二十数年前…
まだ6歳か7歳か、小さな子どもだった頃。

家族四人、新潟から車ではるばる父の実家のある広島へ向かう途中、鳥取砂丘に立ち寄った。

といっても、わたしが分かっているのは立ち寄ったらしい、ということだけ。

ほぼ記憶はないのだけど、なんとなく。頭の片隅で、どこまでも続くように見え

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まだ夏の匂いがした、沖縄。

まだ夏の匂いがした、沖縄。

10月の終わりに、ついにコロナになってしまって。
かなりキツい療養期間を終え、回復したとはいえまだなんともいえない倦怠感を残したまま、仕事で沖縄を訪れることになった。

早朝6:35、羽田発。
こんなに早起きしたのはいつぶりだろう。
眠い目を擦りながら、搭乗口のそばでアナウンスを待っているうち、朝日がゆっくりと空港内をオレンジ色に染めていく。

朝日とほぼ同時のフライト。
窓側の席をちゃっかりと確

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札幌、そして長沼町へ。

札幌、そして長沼町へ。

ひとり、旅をした北海道。
洞爺湖を出た後は車を走らせ札幌へ向かった。

雨の中訪れた、アトリエモリヒコさん。
カウンター席の隅っこに座って頂いた林檎のシブーストがあまりに美味しくて、今も忘れられない。

帰る頃には、お店には私ひとりになっていた。
窓の外を、傘を差した人びとが行き交っている。
試しにお店の方にお願いしてみたら快く店内の写真も撮らせていただき、とっても心温まる時間を過ごすことができた

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洞爺湖、湖畔の夏。

洞爺湖、湖畔の夏。

八月某日。久しぶりの早起きでなんとか6:55羽田発の飛行機に乗り込み、私は欠伸を繰り返しながら空の上にいた。

会社員の夏休みは短い。
向かう先は、北の大地、北海道。
一番の目的地は、数年前からいつか訪れたいと憧れていた洞爺湖だ。

新千歳空港に降り立ち、レンタカーに乗り込む。
霧雨が降って空気は肌寒い。長袖の上着を持ってきたことを確認し、ほっと安堵の息をついた。

途中、支笏湖やニセコに立ち寄り

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タイ・バンコクの夜風を思い出す。

タイ・バンコクの夜風を思い出す。

タイ・バンコクのことを思い出すとき、
脳裏に一番はじめに思い浮かぶのは昼間の景色ではなく、髪を揺らして通り過ぎていく生温い夜風だ。

未知のウイルスが世界を脅かすその一年ほど前、当時の仕事の出張で一週間ほどバンコクに滞在した。
昼間はイベントの準備やら運営やらで一日中会場に缶詰めで、
昼食の350円のカオソーイを楽しみになんとか乗り切る、かなりハードな日々だったけれど。
夜になると、束の間の自由な

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赤い電車は、品川から僕らを乗せてひとっとび。

赤い電車は、品川から僕らを乗せてひとっとび。

七月某日。
その日、東京では明け方までしとしとと雨が降っていた。

朝起きて、雨雲レーダーを10分おきに眺める。
三浦半島にかかっている雨雲は、正午までには東京湾へ抜けていきそうだ。

私たちは、みさきまぐろきっぷを買って、品川から、赤い電車に乗り込んだ。

ファソラシドレミファソー。
くるりの「赤い電車」のメロディーが頭の中で流れている。
電車は、線路沿いの家々のすぐそばを走ってゆく。
人びとの

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