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【いとへんの旅】こぎん・裂織・端縫い・アイヌ衣装、装飾する北の魂にふれる旅

日本各地の衣装や布をめぐる【いとへんの旅】をしている変態、タケチヒロミです。

いとへんの旅とは、ドレスのオーダー制作とリメイクの仕事をしているわたしが、たったひとりで、誰に頼まれたわけでもないのに、じぶんの興味と研究のためだけにしている旅のことです。

北海道と北東北

さて、この1年ほどで、わたしのなかで日本の北方面ブームがやってきています。具体的に言うと、「北海道と北東北」ブームです。

北東北とは、東北地方の北三県、つまり青森県、秋田県、岩手県のことをいいます。

JALの「どこかにマイル」で北海道に呼ばれたり、仕事で青森県に呼んでいただいたり、だれに頼まれたわけでもないのにごく個人的な研究の旅【いとへんの旅】で秋田県に行ったりしています。そして今年の夏には岩手県にも。

北海道と北東北の手しごとといえば、アイヌの衣装アットゥシやカパラミプ、津軽のこぎん、刺し子、南部裂織(さきおり)、そして秋田の端縫い衣装。それらはもともと、布や生地の不足から生まれた、補強や保温、補修のための技術でした。つまり「つくろいの技術」だともいえます。

刺し子

物資不足や藩政の禁止などの、負の一面から生まれた手しごとではありますが、いにしえの人びとはやがて、それらを美しく装飾することをはじめました。目を数えて模様にしたり、縞を織ったり、わずかな端切れを美しく並べて配色したり、模様に魔除けの意味をこめたりしたのです。

アイヌの衣装「アットゥシ」 端のトゲのような部分は魔除けの意味

厳しい状況下でも美しさを求めた人々の、装飾する魂にわたしは強く惹きつけられます。生きるためには実用だけでなく「美しさ」も必要不可欠なのだと、その布たちは力強く教えてくれます。

南部裂織(さきおり)

同時にわたしはこのころ、大学の学芸員資格過程の必須授業で「考古学」「民俗学」に関する科目を履修しておりました。すると、学んでいくうえでこの北のあたりの地名がよく出てくることに気がつきます。

三内丸山遺跡や亀ヶ岡石器時代遺跡、中空土偶の著保内野遺跡など、みんな「北のあたり」にあります。そう、「縄文」です。縄文の遺構や土偶、土器などはこの「北のあたり」から多く出土しています。

北海道と北東北、そう聞いて思い出すのはやっぱり「縄文」というキーワードです。

世界遺産 北海道・北東北の縄文遺跡群

これは何か衣装にも関連がありそうだと思って、ちょっと調べてみることにしました。また、わたしなりの見解もまじえて、北海道と北東北の布や衣装について考察してみようと思います。

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ドレスの仕立て屋タケチヒロミです。 日本各地の布をめぐる「いとへんの旅」を、大学院の研究としてすることになりました! 研究にはお金がかかります💦いただいたサポートはありがたく、研究の旅の費用に使わせていただきます!