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【四色問題】難問をめぐる数学ドラマ

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜四色問題とは?〜

本書は、「四色問題」が解かれるまでの、数学者たちの苦悩の歴史を通じた数学ドラマが描かれている。

まず、「四色問題」とは何か?
最大でも四色あればどんな地図でも隣り合う国々が違う色になるように塗り分けられるのか?という問題である。

一見簡単そうなこの問題に、多くの数学者が挑戦し、問題が解かれるまで124年の歳月を費やすこととなった。
数学の世界では、単純な問題ほど解くのが難しいと言われるが、この四色問題はその良い例だ。
この問題が解かれるまでの過程こそが数学の面白さだ。数々の天才たちが頭を悩ませた問題をめぐるドラマは非常に読み応えがある。


〜人間の思考とは何か?〜

数多くの天才たちがこの問題を解くために、色々なパターン分けや条件付けを検討して試行錯誤するも、ことごとく天才たちを嘲笑うように解決の尻尾を掴ませない「四色問題」。
この問題を解くために、コンピューターの存在が必要だったというのは皮肉なことである。

結果として、「四色問題」はコンピューターによる力技で解かれ、単純で検討しやすい証明、いわゆる「エレガントな証明」では解かれていないのが現実である。
複雑なプログラムによる大量計算で「地図を塗り分けるのには、四色あれば足りる」と結論は出せたものの、コンピューターによる大量処理は人間の手で細部まで検証を行うことは不可能である。

果たして、これを「証明した」と言えるのか?

終盤にかけてのこの問いは、ある意味現代社会に対する問いでもある。
人間の思考の営みとしての数学をコンピューターの力で「解いた」と結論することは、人間の思考を否定することにはならないのか?または、コンピューターを人間の思考の延長として受け入れるのか?
いずれにせよ、この問いはAI化していく現代の課題や問題とどう接していくのかという問いに近しいものがある。
もはや機械と人間の関係という哲学的な領域にまで問いは拡張される。

人間にとって複雑で理解しがたい「証明」を受け入れるか否か。この判断は、機械化していく現代において自分たちの振る舞いを決める覚悟となるだろう。

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