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【愛という病】「女ということ」を追求する

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆

〜「おんな」を追求する〜

何をきっかけにこの本を読もうと思ったのかは忘れたが、普段の僕ならまぁ手に取らないタイプの本である。

本書は「女であること」についてとことん追求していくエッセイである。

著者の中村うさぎさんは、なかなか面白い(!?)経歴を持つ方で、ジュニア小説で大ヒットしたものの、その後買い物依存症やホスト狂いに陥った。オカマ(本文中の表現を使わせていただいた)の夫と結婚しており、友人知人にはシングル女性やオカマの人が多い。
本書が連載されていたのが2007〜2010年ごろであり、当時としては奇抜な人物だろう。
それだけに、書かれている内容は、多様性やLGBTQが叫ばれている今の時代では本にする事も憚られるのではないかと思うようなことも書いてあり、なかなか刺激的で面白い。

特に、男の僕からすれば、「首のたるみが気になるの」もそうだが、女性の書く赤裸々な文章は非常に興味深い。
まぁ、女性である著者がどこまで本音で書いているのかはわからないが、とにかく、男の僕の感覚では思いつかないような発想が面白い。

巻末には著者自身も自分の文章を「妄言」と書いており、正直、本書の中で書かれている内容がどれほど当たっているのかは定かではないが、「ほほぉ、なるほどなぁ」と納得してしまうところは多々あり、中村うさぎさんの発想力と筆力に脱帽した次第である。


〜男と女の常識を疑え〜

僕が本書の中で1番妙に納得してしまったのは「母なるオカマ」というエッセイである。

これにはオカマと結婚した著者が買い物依存症やホストにハマったことを夫が許してくれたのをきっかけに気づいたことが書かれている。

現代人は成人しても潜在的に「母」の存在を求めている。男性は女性と結婚することで「母」の存在を得られるが、女性にとっての「母」は女性であるから「女の生々しさ」があり、そこに引っかかってしまう。
中村うさぎさんは夫がオカマであるがゆえに、「放蕩息子」である自分の「母」になってくれているような気がする。
というのだ。

このエッセイには、今までに味わったことのない衝撃があった。
ある意味、僕らは「男」と「女」に縛られている限り、本当に安らげる場所に行くことは出来ないのでは?という疑問すら持ってしまった。

と、こんな風に自分の価値観や常識をひっくり返すような刺激的なエッセイの数々である。
今の時代では少々内容や表現が激しすぎる面もあるかもしれないが、「ああ、こういう考え方もあるんだな」とライトな気持ちで読むのが良いかもしれない。
あまり深くこの本に入り込みすぎると、そこから戻って来れなくなるかもしれない怖さもある一冊だ。

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