たま子

本、猫、デザイン、食、 美術、映画、音楽、日々おもうこと。 忘れないための記録。 読…

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本、猫、デザイン、食、 美術、映画、音楽、日々おもうこと。 忘れないための記録。 読書日記 Instagram : tama_co_co

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新しいものに息切れ

春は新しいものがどしどし作られる季節なので、家にこもってデザインすることが多いわたしも、撮影や取材などで外出が増える。そうすると、日頃、寝かせている体力をふんだんに使うこととなり、きっちり眠くなるので寝る前に開いた本は数ページ足らずで閉じられることとなる。(それは不服) そんな中、移動中に読んでいた若林正恭の紀行エッセイ『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』がおもしろい。 若林が、資本主義国家に住む日本人として、社会主義国家キューバの地に訪れ、等身大の感覚で疑問を持

    • 朝の河川敷、過ぎる日

      朝5:30に目を冷ます。同居人とふたり昨日の16時からぶっ通しで眠っていたようで、起き抜けのぼうとした頭のまま、同居人は「寝るのたのしかったねぇ」とにこやかにしている。寝るのがたのしいって何とおもいながら、確かにたのしい感じがあった。心地よさの先のたのしさ。気温は20度。数ヶ月ぶりに長袖に腕を通す。部屋ではフジファブリックの『花』が流れている。もう長いこと半袖で暮らしていたから、久しぶりの長袖の感覚に心底ほっとする。 せっかく早起きしたので朝ごはんを外で食べようということに

      • 喫茶店から一歩も動けない

        夏、暑い、夏、暑い。 夏と暑がおなじ漢字に見えてきて、夏。 暑いということがすべてを凌駕して、今なにか優しい言葉をかけられたら容易に泣いてしまいそうなほどに身体がやられている。 せっかく神戸に来たのに。 行きたい本屋さんがたくさんあるのに。 本棚を眺める目が滑って、額から流れる雫ばかりが気になる。本棚に集中できないことがくやしくて、ああ、夏…と思う。 本屋めぐりのはずが、涼しいところをもとめて神戸の街を徘徊するふたつの身体。ドラッグストアがいちばん涼しい。休憩に休憩を重

        • 空っぽに見える夜

          夜、ベッドで本を読んでいると、シピがお腹の上にやってきて眠りだした。安心する匂いとあたたかさにつつまれて、わたしも本を片手にうとうとと気づけば眠っていた。 隣のキッチンから、ぐぉんぐぉんの後に、ぽっぽっぽっぽっ、カランカラン、という音が順番に聞こえて目を覚ます。23時30分。同居人が夜な夜な電動ミルで豆を挽き、アイスコーヒーを淹れる音。「わたしもー」とすこし声をはるも届かない。仕方なくシピをおろしてキッチンへ向かい、ヘッドフォンで音楽を聴く同居人にお気に入りの陶器のカップを

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          夜の鳥、記憶

          夜、12時21分。 部屋のカーテンを開けて、まだこんなに起きている人がいるのだと隣のマンションを見る。 白、青、赤、黄、暗闇に光る窓の灯りはカーテンの色が浮かび上がるとこんなにいろんな色になるのだなと、ぼうと思う。 こんな風にぼう、とどうでもいいことを考えていられる余白が日々のなかにはあってほしいし、寝る前はできるだけ今日のことも明日のことも考えずにいたい。 そうこうしているうちに、ひとつ窓の灯りが消え、外ではバラバラと雨が降りはじめ、はやいとこ目を閉じないと眠れなくなり

          夜の鳥、記憶

          瞬間、瞬間、瞬間

          昨年の秋ごろまで働いていた会社の同僚ふたりと、春が来たら会おうね、それまではそれぞれにがんばろうねと約束していた。 朝は選挙へ行くので昼からでもいい?と連絡を入れてすぐに、ふたりのうちのひとりAは海外から日本へ来ているので参政権がないのだということに思い至り、落ち込む。ぽろっと発した言葉がもしかしたら誰かへの暴力になっているかもしれないと、いつも気をつけているつもりなのに、やってしまう。 そんなことをひとり考えてもんもんしながらふたりと合流し、会った瞬間にわたしの名前を呼

          瞬間、瞬間、瞬間

          日曜日の読書

          朝、窓からそよそよと風が入りこみ、きもちのいい薄い青空に雲が浮かんでいた。昨日買ったプレーンとくるみのデニッシュを両方とも薄く切って軽めに焼き、アールグレイの紅茶をとぽぽと注ぐ。デニッシュはかりっふわっと口の中でうれしい。 同居人と日がな一日、窓際のソファの肘掛けの両側にもたれて向かい合わせに座り、本を読んだり、映画を観たり、音楽を聴いたり、おかしな踊りを披露したり、ときどき猫を愛でて過ごす。ベランダでは洗濯物が洗剤の匂いを連れて揺れている。これぞ我が家の日曜日。 締切の

          日曜日の読書

          単純な想いに立ち返る

          ここ数日は、先週末の三田でのLIVEを思い返す日々を送っている。折坂悠太もくるりもnever young beachもよかった。なんだかもやもやする春の、今のタイミングで聴けてよかった。 ネバヤンの『明るい未来』という曲を聴いたとき、体は揺れながらも鼻の奥はぐっと熱くなっていた。初めて生で観るネバヤンだから前の方で観たいと、同居人から離れてそそくさひとり前の方へ行ってしまったことを途中で後悔し、隣で聴けばよかったと思う。 生きていると、すぐに深刻ぶってしまうけど、本当は明

          単純な想いに立ち返る

          本作りは壮絶。

          今は書籍デザインの仕事を二冊ほど抱えていて、うれしい反面、締め切りに追われながら作家さんと編集さんと励まし合いながらひぃひぃ言っている。 毎日、明け方の4時頃にここまで書きました…いったん仮眠します……などとメールがきていて、寝てーーー!!!となりながら、でもやはり文章が届かないことには編集さん、校閲さんのチェック、文章に合わせたイラストの制作、そしてわたしの組版や修正が追いつかないし、さらにはスケジュールに焦る印刷会社さん、その間にも本屋をまわっている営業さん、本屋で棚を

          本作りは壮絶。

          あの頃、夢見た世界

          もうすぐ「ハリーポッターレガシー」というゲームのプレステ4版が発売される。普段はめったにゲームをしないけど、同居人がこれならすきなんじゃない?と教えてくれて以来ずっと、やるのを心待ちにしている。夏には東京に、ハリーポッターの舞台裏を体験できるパークもできるらしい。昔から母親が大のハリーポッター好きなので、その影響で自然とわたしも大好きになった。人が落ち着いた時期に一緒に行こうねと約束している。 それらを楽しむ解像度を上げるべく、ハリーポッターを全シリーズ読み直したい。という

          あの頃、夢見た世界

          月曜日、そして火曜日

          今日は曇り。昨日もその前も。雨や曇りの日がつづくときもちも塞ぎがちになる。からっと晴れた日が得意ではないわりには、どんよりした日も得意ではない。うすい晴れ間に風がきもちいい日が一番いい。 そうして今日は月曜日。仕事なんてできたもんじゃない。PCの前に座りたくない。こういう塞いだ気分のときは本来仕事をしている時間に仕事をしていないと罪悪感にかられる。どうせどこかで時間を見つけてやるのだから、誰に怒られるでもないのに、なんだかずっと後ろめたいきもちになる。 本も読めない。映画

          月曜日、そして火曜日

          風の歌を聴け

          この間、シネ・ヌーヴォで大森一樹監督の追悼上映『風の歌を聴け』があったことを本屋プラグラジオを聴いていて知る。行くことはできなかったのだけど、長い間わすれていた記憶をふいに取りもどした。 20歳になりたての頃、一緒に住んでいた当時の彼とは家族ぐるみのお付き合いをさせてもらっていて、ときどき遠くの地からやってくるお母さんや妹さんとも会っていた。 その彼のお父さんがある日突然、彼と私の住む家にやってきた。これまでほとんど会ったことのなかったお父さんは、静かさのなかに好奇心の強

          風の歌を聴け

          遠いところを見つめて

          先日、ゆうきさんがTwitterで開いていた、午後の静かなスペースを仕事をしながら聴いていた。心地よい音楽と、ひとりのときの澄んだ声と、ときどき猫のにゃーという鳴き声、ページをめくる音。 自分もカタカタとPCに向かいながら、同じ空間にいるような居心地のよさを感じていた。 そのときに、さよちゃんっぽいのを見つけたんだよと言って読んでくれた安田茜さんの短歌がとてもよく、しかもゆうきさんの声がすきなのでなおさらによく感じられて、仕事をしながらつい手をとめてほわあと聴き入ってしま

          遠いところを見つめて

          夕暮れのばくだん

          バスを降りて、淀川沿いの河川敷をとぼとぼ10分ほど歩いて家に向かう、夕暮れどきの帰り道。 できて一年くらいのバスケットボールのコートの横を通る。近頃は子どもたちに大人気で、いつ通っても玉入れ状態になっている。のどかだ。 大きな歌声が聴こえてきたので声の主を探してまわりを見渡す。でも夢中でボールを投げる子どもたち以外には、土手に座り込むおじさんしかいない。 じっと遠くを見つめるおじさん。川を見ているのだろうか。もう一度あたりを見回してみても、おじさんしかいない。声もそこか

          夕暮れのばくだん

          イマジン

          先週にひきつづき、音の方へ。 GEZAN LIVE。 美しいことも、汚いことも、いろんなことを背負わせてきた彼の声は、前日に襲撃にあったのだという。いつもの声以上の嗄れ声でなんども頭を叩きながら苦しそうに歌う姿。 「でも、不都合なこととか、人に隠したいようなこととか、そういうものもぜんぶ見せていきたいと思っているから」 いつもの声で歌う彼を思い出しながら、その日の彼を見る。聴く。これが LIVEにくるということだ、と実感をもって思う。 それでも後半になるにつれてすこし

          イマジン

          言葉になる前の音

          先週、神戸の太陽と虎へ下津光史さんの弾き語りLIVEへ行ってきた。 LIVEハウスまでの道中「次なに聴きたい?」とLIVE中に言われたらというようなことを妄想し、今日は迷いなく「美しい春」って言うなぁ。などと考えていたものだから、その曲のイントロが弾かれはじめた瞬間、細胞がぶわあと湧き立ち、たまらず涙があふれていた。 たぶんその瞬間、武庫川の水面はきらめき、魚は踊り、鳥は歌っていたはずだし、自分も鳥にでもなって広いところに飛び出したような開放感を全身で味わっていた。 ど

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