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喫茶店から一歩も動けない

夏、暑い、夏、暑い。
夏と暑がおなじ漢字に見えてきて、夏。

暑いということがすべてを凌駕して、今なにか優しい言葉をかけられたら容易に泣いてしまいそうなほどに身体がやられている。

せっかく神戸に来たのに。
行きたい本屋さんがたくさんあるのに。
本棚を眺める目が滑って、額から流れる雫ばかりが気になる。本棚に集中できないことがくやしくて、ああ、夏…と思う。

本屋めぐりのはずが、涼しいところをもとめて神戸の街を徘徊するふたつの身体。ドラッグストアがいちばん涼しい。休憩に休憩を重ねても一向に暑さが身体から退いてくれない。

たまらず喫茶店で注文したマンゴーミルクかき氷はキンとして、食べるうちにすこしずつ身体が元にもどる感覚があった。溶けていく氷の粒、汗をかくアイスティーのグラス。ぼんやりとした頭で、かろうじて1003さんで購入できた『プールサイド』をひらく。

冒頭の文章に泣いてしまいそうになる。
夏をもっとたのしめる心と身体でありたかったと思う。

かき氷、溶ける前に食べ切れたことないなあ。

熱風がまとわりつく夏の日差しの下へ出るのがこわい。ここから動き出す勇気がない、夏。

そんなふうにして、溶けた思考のまま喫茶店で書き殴った言葉たちを慰めるように、その後すこし回復して行った本の栞さんでなぜかとんでもなく元気になり、本を数冊買った。本屋さんありがとう。

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