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谷郁雄の詩のノート7

先日、読まない本を200冊くらいまとめてブックオフに買い取ってもらいました。全部で4500円ちょっと。おかげで狭い部屋が少しだけ広くなりました。読まない本は他にもまだたくさんあります。というより何度も読み返すような本はごくわずかです。読まない本は売り払い、お金に変え、その本を読みたい人に読んでもらったほうが、本も幸せでしょう。売り払った本の中には自分の詩集も含まれています。いつか誰かが読んでくれるのでしょうか? 


「七月の街角」

頭上に
空が
青く開いた

人々は
光の中を
行き交っていた

どこへ
行くのか
忘れるような日

どこから
来たのか
思い出しそうな日

未来のある日
今日は
なかったことにされてしまう


「静けさ」

君がこの世に
生まれたときに
聴いた音楽

そよ風の音
鳥の声
猫の足音
ラジオの音

そして

はじめて
聴いた
世界の静けさ


「日傘」

この夏
日傘を差す男を
見ましたか?

ぼくは
見ました

焼けつく
坂道に
くっきり映る

日傘を差した
ぼくの影


「栞」

出会いが
そのまま
別れであるような出会い

はじめましてが
そのまま
さよならであるような出会い

人を笑顔にする
花束のような出会い

その人の名前を
知ることもなく
それ以前も
それ以後も
知ることの叶わない出会い

出会いの中でも
もっとも
美しい出会い

そんな
あのときの
あの人が
その日のままに
ぼくの心の中に生きている

本に
挟んだ
栞のように





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