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ギフト

フィンランドのとある島。

三人の男達が漂流した。

身体の強い男。
頭の賢い男。
生まれつき足の悪い、杖を持った男。

人の気配は全くしない。

冬至を迎える極夜に曇り空。一日中暗い。

絶望の演出を際立たせるように
さらに濃霧は男達を包み込む。

隣の男の顔すら朧げである。

悴んだ指を擦り合わせて暖を取る。

遠くに微かな白い灯りが目に入った。

灯台ではないか?

三人は希望の光を見た。

灯台であれば頂上に登り
そこで助けを求めよう。

平地で手を振っても気づかれる保証は無い。

白い灯りは消えたり見えたり。

霞が常に揺らめき、視界を遮る。

身体の強い男が率先して
灯りの方向を頼りに走った。

灯りが見えようと見えまいが
とにかく彼は走った。

皆の為に。

五里霧中。

彼の足が地面につかなくなった。

極寒の海に飛び込んでしまったようだ。

一日経っても男は帰ってこない。

二人だけでも生き延びなければ。

頭の賢い男が向かった。

彼は灯りが見えなければ決して動かない。

慎重に慎重に。見失わないように。

帰り道の為に枝を地面に差し込みながら。

突如、目の前に現れる、白灯。

常時点灯ではなかったようだ。

灯台が手を差し伸べてくれたようだった。

時間はかかったが、ようやく報われた。

やはり灯台だ。

後は歩み寄るだけ。

灯台下暗し。

彼もまた足が地面につかなくなった。

入江だった。目の前は海、先は灯台。



ある漁師が灯台の頂上に人影を見た。

杖を持った足の悪い男だ。

疲れているのか、男の腰は前傾に。

船に乗せた。彼は憔悴している。

何故僕だけが。と一言呟き

自身が忌み嫌っていた杖を抱きしめ昏睡。

生まれながらの足と杖が彼を連れてきたようだ。


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