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復讐代行

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【完結】 内容に、性的暴力や惨虐的描写を含みますので、年齢制限は十八歳以上を推奨しています。 人々が復讐したいと望んだ時、報酬が『自身の寿命』だったらどうするーー? なお、本作… もっと読む
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#ミステリー

チャプターエンド

チャプターエンド

チャプターエンド

 ――真っ白な空間にその人はいた。

 上か下か、天井か地面かも定かでは無い空間にその人は横たわっており、まるで目醒めを待つ神の如く祈る様子で眠っている。

 ーー俺は、目を覚ました。

 俺?

 そう思い、ゆっくりと上半身を起こす。

 首の付け根から両サイドに伸びる腕を動かし手の平を自身の目で見て確かめる。

「ああそうか。お前はこの姿がいいんだな」

 彼はそう呟いて静

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チャプター11

チャプター11

チャプター11

「…復讐を代行してくれるって本当なの?」

 その女性は開口一番にそう聞いてきた。

「……」

 シンは向かいのソファに座る女性を値踏みするように見る。

「ねぇ。聞いてるんだから答えてよ」

 女性はテーブルに手をついて身を乗り出し、少し拗ねたような表情を見せる。

「要件を言え」

 端的に言い放つシン。

「ー…ッ」
 シンの低い言い回しに女性は一瞬だけ躊躇したが、
「復

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復讐代行8

復讐代行8

チャプター8

 ――その女性は所作ひとつひとつに気品があった。
 立ち振る舞いから、差し出された紅茶の飲み方全てに品の良さを漂わせている。

「…すみません」

 紅茶を飲んで一息付いた女性は少しはにかんだように微笑んだ。

「あの……」
 徐に一枚のポラロイド写真を、小さめのハンドバッグから取り出してテーブルに置いた。

「そこに映る人達に復讐をお願いします」

「……」
 黙って写真を手にす

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復讐代行7

復讐代行7

チャプター7

「…なん、で……こんな事に………?」

 ――その言葉は声にならなかった。

 斗真(とうま)は俯き自身の胸を見る。中心から少し左寄りのあたりに、約一センチ程の赤黒い穴がポッカリと空いている。

 ――撃たれた――

 そう意識する前に斗真は前のめりに倒れた。床に強く身体を打ちつける音がするが、斗真の痛覚は既に絶えていた。

 薄れゆく意識と共に閉じそうになる瞼を必死に見開き、彼が

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復讐代行6

復讐代行6

チャプター6

「お前が『復讐代行』をやるって?」

 その男は、ソファに大股で腰掛けるなり片腕を背もたれにかけ、もう一方の腕は後ろに控える男に葉巻を用意するように差し出す。その仕草と同時に、差し出した手には葉巻が既にありいつでも【燻(くゆ)らせる】ようになっていた。

 男の見た目は――【お供】を二人従え、冠婚葬祭の正装であろう黒の背広を着崩している。どこかの反社会的組織の一員であろう。

 男

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復讐代行5

復讐代行5

チャプター5

 ――その子は中学一年生で、大人しい印象とこちらの言動に身体が怯えているのが見て取れた。

「…あり…がとう、ございます……」
 目の前のテーブルにオレンジジュースの入ったグラスが置かれると消え入りそうな声で軽く頭を下げた。

 少女がジュースを一口飲むのを見計らって、シンもまた紅茶に手をつける。

 本来なら、ここで依頼者が口を開くのを待つのだが、目の前の少女からはそんな素振りが

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復讐代行4

復讐代行4

チャプター4

「パパに、『ふくしゅう』をしてください!」

 その少女は、出されたオレンジジュースをストローで一気に吸い上げると美味しそうに『プハ〜』と一息ついて開口一番に言った。

 少女というにはまだ幼い未就学児で六歳くらいだろうか。

「……」
 そんな少女にも顔色ひとつ変えることのないシンは少女を一瞥し、
「嬢ちゃん、歳は?」

「『じょうちゃん』じゃないよ〜。みやびなの〜」
 床に届か

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復讐代行3

復讐代行3

チャプター3

「…俺の…妻を殺してくれ……ッ」
 
 悲鳴にも似た声で頭を下げる男性に、向かいに座っていたシンとその隣に寄り添うように佇む神門穢流(みがどえる)は互いの顔を見合わせた。

 視線をすぐに前に戻したのはシンで、テーブルにある依頼者の携帯を手に取り『お借りしても?』一言告げると、男性は応答するように小さく頷く。シンが携帯の画面を見ると、そこには一人の女性の写真画像が映し出されていた。

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復讐代行2

復讐代行2

チャプター2

 その少女は、あてがわれたソファに腰掛けた途端、辺りをキョロキョロと物色し「ふぅん?」仕舞いには間抜けな相槌を打った。

 差し出された紅茶を何も言わず一口。

「…ねぇ。本っ当に復讐なんて代行出来るの?」
 身を乗り出すように向かいに座るシンに詰め寄る。

「…疑うなら他所へ行け」
 シンは表情を変えず端的に言い放つ。

「あ。怒ったぁ? ただちょっと聞いただけじゃん〜〜」

 

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復讐代行1

チャプター1

「…頼む! 俺はアイツに復讐がしたい…!」
少年はそう言う。あてがわれたソファに腰掛けながら膝に顔がつきそうになるくらい、頭を下げている。真っ黒な学生服を着込んでいるのとまだ幼い顔立ちから少年が中学生である事は容易に想像できた。

「顔を上げてくださいな」助手なのだろうか、まるで女優のような女性が少年の前に紅茶の入ったティーカップをテーブルに置いた。

「…何で『復讐』したい?」

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