見出し画像

尾道三部作を生んだ不思議な友情物語

トム・モダンジャズ・クラブ(TMC)

 瀬戸内の海上交通の要衝・瀬戸田港前に建つ老舗「住之江旅館」の玄関脇に1枚の写真が掛かる。2020年4月10日に亡くなった大林宣彦監督(享年82)が「転校生」の撮影で旅館を訪れた時の1コマだ。胸にはアルファベットの「TOM」の3文字。監督の心友・須賀務さんが営んでいたジャズ喫茶「TOM(トム)」の常連客たちで結成された「トム・モダンジャズ・クラブ(TMC)」の会員証を兼ねたTシャツだ。写真が撮られた1981年8月16日、監督は芸達者で腰の低い務さんを従業員役に指名し、この旅館で旅館シーンの撮影を行った。日本を代表する映画監督と平凡な喫茶店マスター、不思議な関係の2人の物語を書くことにした。

ここから先は

1,399字 / 10画像

¥ 150

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?