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主戦場再開への第1歩

2019年に上映された映画「主戦場」(監督・脚本・撮影・編集・ナレーション ミキ・デザキ 配給 東風)。私も観ております。ところが、上記の記事にあるように、ケント・ギルバートさんら一部の出演者が上映中止を求める裁判を起こしていました。裁判の事を知った時、「出演を承諾しておいて、何を言ってるんだ!?」と正直思いましたが、幸い請求は棄却され、上映は「適法」との判決が出ました。(2021.1.27 東京地裁 柴田義明裁判長)この映画は現在上映している所がありませんが、観たい人はたくさんいるでしょうから、これを上映復活への第1歩にしてほしいと思います。

主戦場とは。

「主戦場」は、従軍慰安婦問題をテーマにしたドキュメンタリーで、デザキ監督による総勢27名の方へのインタビューで構成されています。(詳細は上記リンクから公式サイトをご覧ください。)

登場する27名の中には歴史学者もいれば、憲法学者や歴史学者もいますし、ジャーナリストもいます。政治家もいますし、元慰安婦の家族もいますし、平和資料館のスタッフもいます。また、保守派とリベラル派では見解が異なるし、日本人、韓国人、アメリカ人でも視点は異なります。

従軍慰安婦問題は真相が分かれる点も多々あり、今後も多分決着はつかないと思います。それだけ議論を呼ぶ内容だからこそ、立場や見解の異なる27名のインタビューとニュース映像を複合的に組み合わせて、映画を観た1人1人に向き合って考えてもらうのが狙いなのです。

ギルバード弁護士の主張には無理がある。

デザキ監督らを提訴した原告の一人がケント・ギルバートさん(カリフォルニア州弁護士)ですが、映画の狙いを踏まえると、彼の主張にはかなり無理があると思います。まず、「卒業制作ドキュメンタリー映画が商業映画になっていた」という主張ですが、映画は広く一般の人達に観てもらうためのものです。また、上映された映画館も概ね客席30名程の小規模な所が大半でしたし、チケットも1,500円と安価でした。映画1本撮ると億単位のお金が瞬時に出ていきますし、時間もかかっています。

制作した映画は、チケットを販売して経費を回収して、映画館で上映して(またはネットで配信して)、みんなの元に届いて初めて完成なんですよ。

ですから、ギルバートさんの言っていることは、商業映画かどうか以前に、映画という文化の息の根を殺してしまいかねないと思います。

また、「内容に偏りがある」という訴えも、「一体何を言ってるの!?」と思いました。そもそも報道・ドキュメンタリーは多面的な取材は要求されているものの人間が制作する以上「公平中立」とか「不偏不党」とかあり得ないのです。逆にそんな血も涙もない無感情な映像を観たいでしょうか。それに、ギルバートさんを出さなかったならともかく、ちゃんと出演しています。ですから、彼の考えの一部も、賛否はともかく観た人には届いているはずです。また、根拠となる史料の一部も映画には載せています。前項にも書いたように、この映画は慰安婦問題に対して広く一般に議論を呼びかけるのが狙いですから、ギルバートさんの見解を載せるけれど、彼と反対の見解も載せますよ、というのは当然でしょう。

表現の自由を確かなものに。

ミキ・デザキさんは、この裁判での勝訴を「日本のおける表現の自由の勝利」と総括しました。私もこの映画を観た一人として、ミキさんの見解に賛同します。特に、従軍慰安婦の様な大きな議論を巻き起こす内容である以上、裁判結果は報道やドキュメンタリーの場にも大きな影響を与えていたと思います。「主戦場」が再び観られる日がいつになるかは分かりませんが、この映画を通じて、表現の自由、報道の自由、知る権利がしっかりと確立される一歩になってもらいたいです。そのために、私もできる事から発信をしていきます。

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