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#41 『本屋』と『本業』

2024年3月某日

息つく暇もない年度末、体調などを崩さないように乗り切りたいものである。忙しない状況だと、趣味である読書の時間が減ってしまい、本の手触りが恋しくなる。

さて、全国的に書店が減少していることは周知の事実であるが、その背景にある要因としては「出版不況」が挙げられることが多い。すなわち、「紙の本が売れないから、その小売店も厳しい」という単純な話である。一方、本が読まれていないかと言われるとそうではない。実際、ビジネス賢者のみなさんは揃って読書習慣の重要性を説いているし、研究者などは職業読書家といっても過言ではないからだ。このような状況に鑑みると、売れてないのは「本」であって「読書」ではないことがわかる。少し「本」と「読書」の価値について考えてみたい。

「本屋」で販売されているものは「本」である。私たちは「本」をプロダクトとして購入する。プロダクトとしての「本」は紙の束でしかないので、当然、安い。一方、私たちは「本」というプロダクトに「時間」や「意識」を投下することで「情報の交換」を行う。その結果、「気づき」とか「学び」とかを得る。「気づき」や「学び」という価値は、レバレッジが効く知識という価値となり、なおかつ自分の中にストックされる無形資産となり、魅力的なものである。このことから、私たちは、安い「本」を起点に、「読書」を通じて大きな価値を享受することができる。「読書はコスパが良い」と言われる所以である。

このことは、「モノとコト」みたいな話であり、マーケティング研究の世界では「サービス・ドミナント・ロジック」という理論で説明されていたりする。ことさらに検討するものでもないかもしれない。

"サービスドミナントロジック(Service Dominant Logic、SDL)とは、有形のモノ(製品)と無形の活動(サービス)を区別せず包括して捉え、顧客が利用することで体験価値を持つという考え方"

Google Search Generative Experience

しかしながら、この「本」と「読書」の価値の違いを考えることで、「本屋」のビジネスモデルの持続可能性を高めることが可能かもしれない。すなわち「本」を売るのではなく「読書の価値」を売る、みたいな話なのだけれども。そうすると、今後、「本屋」は「本を売る業態」ではなく「本との"関係性"を売る業態」への変化に可能性がありそうだ。「本屋(ほんや)」から「本業(ほんぎょう)」に変わるイメージである。既に、そのような方向性に整合する新世代の業態も登場している。泊まれる本屋、コミュニティを軸とした本屋、店主が選書してくれる本屋…などなど。

筆者も、「本業(ほんぎょう)」に挑戦してみたい。まずは、副業として。お後がよろしいようで。

ほなら。

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