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雑誌『土俗と伝説』はもう1冊あった?

 民俗学の雑誌では、同時代に発行された雑誌で雑誌名の重複がしばしば起こった。いくつか例を挙げたい。柳田国男が組織した民間伝承の会の機関誌『民間伝承』の発行前に佐々木喜善の発行した『民間伝承』があった。また、以下の記事でも紹介したように、福原清八の発行していた『俚俗と民譚』も当初は『民間伝承』という雑誌名にする予定であった。

『土の香』加賀紫水の発行した雑誌、谷川磐雄(大場磐雄)の発行した雑誌の2種類があり、このことは拙noteでも紹介したことがある。

雑誌名に「土」が含まれている関連では、『土のいろ』は遠州の飯尾哲爾(注1)、福岡の梅林新市によって発行されていた。さらに以下の記事でも紹介したように、『郷土趣味』は田中緑紅が発行していた京都の雑誌として知られているが、愛知県小牧でも別の『郷土趣味』が発行されていた。

 このような雑誌名の重複はまだあるだろう。そして重複が起こり、『民間伝承』、『郷土趣味』のように一方がよく知られている場合、もう一方は忘れ去られてしまうことも起こる。(『土の香』のように両方忘れられてしまう場合もあるが)

 折口信夫により発行されていた『土俗と伝説』は復刻がされていたり、竹田旦編『民俗学関係雑誌文献総覧』(国書刊行会、1978年)に総目次が掲載されていたりとよく知られている民俗学関連雑誌の1冊であろう。先日、この雑誌名と同名の雑誌があることを知った。以下の記事で紹介した趣味誌『片言』第4号の「寄贈御礼」の中に『土俗と伝説』第2輯が含まれている。発行者は拙noteでも紹介したことのある九十九豊勝(黄人)である。

九十九の『土俗と伝説』の詳細は不明だが、寄贈された雑誌として紹介されていることから発行されていたことは確かであろう。ちなみに、この雑誌は、鈴木文子「玩具と帝国―趣味家集団の通信ネットワークと植民地」(『文学部論集』93(佛教大学文学部、2009年))でも言及されている。

(注1)飯尾哲爾に関しては、神保町のオタ様の以下の記事で経歴が紹介されている。

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