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リアリティゲーム

現実の世界が嫌になって
バーチャル空間へと逃げ込む人が増えていると言う

そんな僕もずっと学校に行けなくなっていて
毎日バーチャルという名のゲームの中に入り浸り
そこに引きこもっている一人だ

発端は何だっけ?
軽いいじめを受けて学校が楽しくなくなって
毎日がつまらなくて、人や外が怖くなり始めて

気づいたら学校に足が向かなくなっていたんだ

何日か休むとそれはクセになって
休めば休むほど行きづらくなっていて
これじゃ駄目だとわかりつつも
中身の無い毎日が過ぎて行った

そのバーチャル空間はゲームとは言えど
街並みや風景は現実と見違えるほどにリアルで

姿は違えど中の人は何処かに実在する誰か
アバターを着た本物の人間たちがいる

他の人と話して楽しむ人もいれば
家を作ったり服を楽しんだり
その中でお金を稼ぐ人や恋をする人もいたりで
知らない知識や面白い人にも出くわせた

その中には僕と同じような境遇の人もいたりする

そして何か月か入り浸るとわかって来る事がある
ここはゲームだけどゲームじゃない
ただの現実のコピーにすぎないのだと

お互いの本当の顔が見えない分
好き放題する人も中にはいて
現実の何かから逃避したくて来たはずなのに
ここでもいじめられている人も見た
馴染めずにずっと一人の人もいる

もしこのゲーム内で遊べるゲームが
バーチャルの中のバーチャルが実装されたなら
さらに奥へと引きこもってしまう人もいるんだろう

いくら姿を変えて別の誰かに成り切ろうとしても
現実の世界で人間関係が苦手な人が
ここで上手に振舞えるはずがないんだ

例えそこが偽の世界だとしても
それほどまでにこのゲームはリアルだった

それに気づいた僕は
それならまだ現実の方が面白いのでは?
そう思い始めていた

現実世界の方がよほどゲームらしく見えて来たんだいや、もしかしたらこの現実だって
誰かが作ったゲームの中かもしれないと

そう思ったら少し気が楽になって
数か月ぶりに学校へと足を運んだ

もちろん怖くて何度も引き返そうとしたけれど
まるで新学期のような感覚の中を歩き
自分の席に座って教室を見渡す

チャイムが鳴って授業をしてまたチャイムが鳴って
僕の事なんて誰も気にしてなんかいなかった
この数か月が嘘のように普通だった

淡々と授業は進んで一日が終わると
張り詰めていた緊張から解放され
少し気の抜けた僕は隣の席の子と話をしていた

その子も入学以来ずっと来ていなくて
最近来るようになったんだとかで
でも初めて会ったはずなのにそんな気がしなくて
どことなくその声や仕草に既視感を感じたのは

ゲーム内にいた、そこで何度か話した人と
優しい言葉をかけてくれた人と重なったから

もしかして、と言いかけて言葉を飲み込んだ

もし同一人物だったとしても
僕と同じようにあの世界の中では
別の人物を演じていたはずだから

また最初から仲良くなりたいと思った
次は本当の自分のままの姿で

きっと、良い友達になれそうな気がしたから

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