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【2024への期待】河野諒祐が大柄なFWの力を引き出す

日本代表がベトナム代表に決められた2024年のアジアカップ初失点が衝撃的だった。

左CKの場面、ニアサイドに鋭いボールが飛んでくると、グエン・ディン・バクがバックヘッドで合わせる。遠藤航の前から放たれたヘディングシュートは、ゴール右上隅に吸い込まれていく。PA内を固めていた日本代表の選手は棒立ち。GK鈴木彩艶もボールを見送ることしかできなかった。

ベトナム代表が日本代表のセットプレーの守備を分析して隙を突いてきたという前提はある。しかし、ニアサイドをピンポイントに狙ったボールは球速があり、体を懸命に反らせながら打ったヘディングシュートは正確にコントロールされていた。10連勝を引っ提げてアジアカップに突入した日本代表は成す術がなかった。圧倒的な精度によって生まれた得点だった。

2024シーズンを戦うファジアーノ岡山にも、相手に防ぐチャンスを与えない精度を持った選手がいる。在籍4シーズン目を迎える河野諒祐だ。

河野の武器は、正確無比なクロス。タッチライン沿いを駆け上がってからシャープに振る右足は、美しい放物線を描く。ゴール前の味方にピンポイントで届き、右サイドからゴールを演出する。

狙ったところに蹴る。一見、シンプルなプレーに見える。しかし、毎回ピンポイントクロスを供給し続けるのは簡単ではない。走りながら蹴るクロスは体重が外側に逃げてしまい、ボールに力を伝えるのが難しく、ラインを割ることもある。だが、河野は腰の回転をうまく利用して確実に折り返す。クロスを手前の相手選手にぶつけることも、ほとんどない。だから、河野はすごい。

今季、FW登録の選手は全員180cmオーバー。齋藤恵太が181cm、太田龍之介が185cm、グレイソンが186cm、ルカオが191cmと高身長が揃う。ゴール前に走り込む4選手の姿を想像すると、実に恐ろしい。迫力のある攻撃に期待できる。練習を見ていると、昨季よりもダイレクトにゴール前にボールを入れていくシーンが多い。チームとして“ガタイの良い”FWを生かす戦い方をしていくのだろう。

際立つのは、グレイソンのヘディングの上手さ。慶南FCでは、後ろから飛んでくるアーリークロスからも、横からのクロスからもネットを揺らして13得点を決めた。頭をボールに当てる感覚が優れ、練習でも枠の隅を突いたシュートを披露している。その姿はミッチェル・デューク(町田)を彷彿とするもので、背番号9にはヘディングシュートでの得点に期待が膨らむ。

グレイソンを筆頭に大柄なFWの力を最大限に引き出すのが、河野の右足だ。

「河野のクロスはチャンスになる」。

FWがそう思いながらゴール前で待ち構えると、ゴールを狙える場所を必死に探し、「自分が決めるんだ!」という強い気持ちで勢いよく走り込める。ミスキックをするかもしれないと思っていたら、無意識に相手ボールになった時のことを考えてしまう。正確なクロスを安定供給できる河野の存在が、フルパワーの動き出しを促す。

河野は、一昨季に10アシストを達成。そのうち、8アシストがセットプレーを含むクロスによるものだった。第13節・ホーム東京V戦では、右サイドを駆け上がってから高弾道のボールを放り込み、デュークの高さを生かした。第26節・アウェイ大分戦では、中の状況を確認してから曲げて落とすボールを柳育崇に届けて得点をお膳立てしている。

昨季はケガも影響して5アシストに留まったが、30歳を迎える今季は再起を誓う。ライバルが登場する度にポジションを勝ち取り生き残ってきた河野のことだ。実力者が加入して激しさが増すポジション争いに燃え、FWの顔ぶれを見て再び二桁アシストを残すと意気込んでいるに違いない。

河野が正確なクロスを供給し、サイズのあるFWが得点を決める。背番号16のアシストが増えれば増えるほど、ファジアーノが積み上げる勝点も増えていく。相手が棒立ちしてしまうほどの精度を発揮し、今度こそ悲願のJ1昇格を成し遂げる。

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