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【海外作家】好きな短編集10選

前回は「長編小説5選」でしたが、今回は「短編集10選」です。
数が倍になった理由は単純で、私が短編を好んで読むから。国内外問わず「短編集」に目がない人間です。

あんまり長文になりすぎないように、今回はさくさくと書きます。




1.『ジゴロとジゴレット』サマセット・モーム

開幕早々モームさん。好きなんですモームさん。
確か『月と六ペンス』を読んでいたく感激した後に短編集が出てることを知って読んだらやっぱり面白くて「長編も短編も面白いなんてずるい!」という謎の感激を抱いた記憶があるような…。
人間描写に定評のあるモームさんなので、えぐいものから清々しいものまで多彩な振り幅で魅了してくれます。収録8篇全部推し!


2.『誕生日の子どもたち』トルーマン・カポーティ

奇跡という表現を軽々しく使うべきではないのは承知の上で、本作収録の『クリスマスの思い出』を、奇跡のような美しい一作だと称えたい。この作品を知ってからというもの、毎年クリスマスが近づくと必ず「フルーツケーキの季節が来たよ!」の言葉を思い出します。
で、その『クリスマスの思い出』は新潮文庫から出ている『ティファニーで朝食を』でも読めます(そちらも同じく村上春樹さん訳)が、同じ登場人物の物語『感謝祭の客』と続けて読めるこちらを選びました。
表題作も良いです。『おじいさんの思い出』も良いです。春樹訳カポーティが好きです。


3.『世界が終わるわけではなく』ケイト・アトキンソン

揺らぐことのないひとつの事実も、人によって優しい希望になったり容赦のない絶望になったりするものですよね。
収録の12篇すべて緩く繋がっていて、そしてずっと不思議で不穏。表紙のイラストの摩訶不思議さに惹かれる人へ。


4.『観光』ラッタウット・ラープチャルーンサップ

タイで生きる様々な境遇のひとたちを、臨場感たっぷりに描く短編集。小説のすごいところって、国も文化も価値観も全然違う他人の人生をひととき生きられること。そう感じさせる筆力です。


5.『なにかが首のまわりに』チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

真綿で首を絞められるような感覚を表現したタイトルで、アメリカ移民の現実やナイジェリアの市井の人々の日常を語る短編集です。アディーチェの文章って淡々と書かれてるのに、伝わってくる情景や感情の濃度がすごい。もちろん翻訳したくぼたのぞみさんの功績でもある。


6.『セヘルが見なかった夜明け』セラハッティン・デミルタシュ

トルコの政治家が獄中で書いた短編集だそうです。まずもってその背景に惹かれざるを得ませんよね。
今回紹介する本の中で、これだけ恋人から借りて読んだので手許に現物がありません。ただこれを読んで「名誉殺人」を知った、あの衝撃が忘れられないので入れてみました。


7.『いずれすべては海の中に』サラ・ピンスカー

SFです。表紙が最高、って勢いで書いちゃったけどもちろん内容も良いよ。中でも著者と同じサラ・ピンスカーという名前の女性が並行世界から一堂に介したイベントで殺人事件が起きる…という作品のタイトルが『そして(Nマイナス1)人しかいなくなった』なの、発想の鮮やかさに拍手喝采です。


8.『天使だけが聞いている12の物語』

タイトルに惹かれて買ったらアンソロジーでした。収録作すべて「誰にも言えないけど誰かに聞いてほしい」そんな感情や出来事を綴った作品。ぴったりの書名だと思います。
個人的には編者でもあるニック・ホーンビィ『乳首のイエス様』がめちゃくちゃ刺さった(パッと見ぎょっとするタイトルですよね)。自分が無宗教だからこそ、私にとっての「イエス様」って何だろうって考え込んでしまいました。


9.『居心地の悪い部屋』

こちらもアンソロジーで、岸本佐知子さん編訳。「読み終わったあとモヤモヤする、けど心に残る」そんな作品を集めたそうです。12篇のうち純粋なホラーが1篇だけありますが、怖い話がほんっっっとうに苦手な私でも問題なかったので大丈夫だと思います多分。
アンナ・カヴァンは昔読んだ『氷』がいまいちピンとこなかったのに、本作収録の『あざ』で見事に好きな作家になりました。あとはブライアン・エヴンソンとレイ・ウグサヴィッチを知るきっかけをくれたことに感謝しかない。


10.『ナイン・ストーリーズ』サリンジャー

新潮文庫の野崎孝さん訳はすでに古典なのかな。
(最近河出文庫から柴田元幸さん訳が出ましたし)
しかし私は野崎さんの訳が好きです。大好きです。もしこれから先の人生でたった一冊の小説しか読めないとしたら、迷わずこの本を選びます。


まとめ

本当は大好きすぎる『ナイン・ストーリーズ』にちなんで9選にするはずだったんですが、どうしても選びきれなくて10選になりました。
(noteの目次の仕様で、折りたたまれた状態でも一覧表示できる数が10のため)

そしてこれでも、シーラッハとかサキとかテッド・チャンとかスチュアート・ダイベックとかフランツ・カフカとか削ってるんです。
とはいえ20選までいくと長すぎますよねさすがに。

今後もきっと素晴らしい小説に出会えるはずなので、今回削った分もいつか別の機会にまとめたいです。
お読みいただきありがとうございました。
今日も良い日になりますように◎



※このnoteを書いたきっかけはこちら。


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