ヨシタカ

埼玉県出身36歳。温泉ソムリエマスター。 これまでに源泉かけ流しを中心に全国500カ所…

ヨシタカ

埼玉県出身36歳。温泉ソムリエマスター。 これまでに源泉かけ流しを中心に全国500カ所の温泉地を巡る。 10代の頃より原因不明の体調不良と激痛に悩まされ、2021年1月に「線維筋痛症」と判明。 平癒を願い「闘病・湯治記録」を綴ります。

マガジン

  • 安くて良い宿 赤倉いづみ荘

    全3回。山形と宮城の境、赤倉温泉いづみ荘の滞在記録。 豊富な湯量と小さな素朴な宿。食と湯、そして経営者のお人柄、たまりません。

  • 私と温泉と湯治

    私が線維筋痛症と断定される前、生きる希望もなにもない中でフラフラ放蕩生活に出ます。期間もゴールも決めず、唯一の趣味であった温泉を巡り様々な湯と人に出会います。私の湯治の原点となった旅の日記です。

  • 秋の鳴子温泉湯治

    シルバーウイークを利用し、秋の湯治に出ました。 目指すは鳴子温泉高東旅館。常連さんとの再会や、旅人との出会い。自炊グルメや館主に女将さんとの交流を綴ります。

  • 増富温泉 湯治日記

    全5話です。一年振りに訪れた増富温泉三英荘。世界屈指のラジウム泉に浸かり、快復を目指し湯治を行います。85歳の女将さん、3歳になるシーズーモモとの共同生活です。

  • 猛暑の新潟湯治

    全6話です。7月中旬、苛烈な都会の暑さから逃れるように、新潟の温湯に向かいワーケーションに挑みます。出会った旨い物と素晴らしい湯、素敵な女将さんを描きます。

最近の記事

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【2022年振り返り】最高の温泉宿・湯治宿10選

館主 「ヨシタカさん、本当に申し訳ございません。4月から200円値上げになってしまうんです。ギリギリのところでやっていて・・・」 私  「そんな、謝らないでくださいよ。物価がこれだけ上昇しているのに、旅館だけ値上げしないなんておかしい。浮気はしません、また必ず来ますから」  今年の世情を象徴するような一コマでした。大好きな温湯の宿での出来事です。御主人の申し訳なさそうな顔が忘れられません。 はじめに 持病の快癒、そして世の泰平を願い過ごしました2022年。 残念ながらその

    • 私の湯河原温泉の楽しみ方 【元湯旅館 光陽館】

       初めて湯河原を訪ねたのは恐らく15年ほど前のこと。恐らくというのも、学生時分に旧友と向かった先が熱海か湯河原だったか、、露天風呂からの景色はうっすら覚えていますが、往路の特急での痛飲ですっかり酔漢と成り下がり、宿を覚えていません。  湯の記憶に至っては絶無。当時は循環消毒の有無や、剰え銭湯と温泉の区別すらつかないと言っても大過ないほど温泉に関しては蒙昧でした。温泉旅行の目的は遊興にあったのです。  それから約5年後、街は既視感がありましたのでこれが2度目の訪問。温泉への

      • 【惜別の投宿】五十沢温泉ゆもとかん(旧館)

         卵臭を帯びた透徹な源泉に身体を沈めると、滴る汗に一掬の涙が混じりました。この湯に浸かるのもこれで最後。星霜を刻んだこの木賃宿に泊まるのも、そして恐らく、女将さん会うのも・・・  苅田に孫生えの青が目立ち始めたころでしょうか。10月の下旬、日本一の米処南魚沼から悲しい報せが届きました。思い出深い一軒の湯治宿が閉業するといいます。手帳を確認し荷電をします。宿の番号ではなく、女将さんのスマホに。 私  「やめるって聞きましたけど、本当ですか?」 女将 「そうなの、12月24日

        • 谷川温泉 男二人旅③<終>【至高のぬる湯宿 セルバン】

          <前回はこちら> 私 「ここから先、見えないはずの鉄条網が見えるんですよね。『セレブ以外お断り』ってね。ここ(湯テルメ谷川・日帰り温泉)までは何度も来たのですが。宿泊なんて挑むまでもないと」 K 「旅館たにがわ、金盛館せゝらぎ、水上山荘、仙寿庵。我々とは無縁ですからね。私も谷川温泉宿泊は初めてです」 私 「セルバンか。フランス語かな、マッターホルンでしたっけ?この宿全然知らなかったです」 K 「小暮先生(※群馬温泉界のレジェンド)も絶賛しているので、湯は間違いないでしょう」

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        【2022年振り返り】最高の温泉宿・湯治宿10選

        マガジン

        • 安くて良い宿 赤倉いづみ荘
          3本
        • 私と温泉と湯治
          12本
        • 秋の鳴子温泉湯治
          7本
        • 増富温泉 湯治日記
          5本
        • 猛暑の新潟湯治
          6本
        • 6月の信州湯治
          3本

        記事

          谷川温泉 男二人旅②【水上 米屋旅館~土合駅散歩】

          <前回はこちら>  沼田から北上し、到着したのは上越線は水上駅。数分すると下り列車が入線、改札を出てきたYさんと合流した。定期的に顔を合わせている二名を私が引き合わせる形となった。  「お二人は初めてですか。そんな気がしないです。宿も同じようなところ行ってますものね」  温泉好きの中でも、食事を重視する者、サービス・接客を重視する者、意匠の凝らされた建築美、或は風光明媚な絶景露天風呂を好む者、価値観は人それぞれ。そんな中にあって、少々ボロい宿でも委細構わず、源泉の質と湯

          谷川温泉 男二人旅②【水上 米屋旅館~土合駅散歩】

          谷川温泉 男二人旅①【沼田の鄙びた中華屋】

           「ええ、あの日、脳が涎を垂らしたんですよ。年に数回起こるのです。熱くもなく冷たくもなく、源泉が人肌程度の湯温にアジャストした瞬間。整う?いやそれは、良質な源泉に浸かるとままあるのですが、『降臨する』という感じなんです。心身が一度分離して、蒼穹が暗転して、光の柱が降りてきて、円光を纏った弥勒菩薩と同化して、あれはもはや合法ドラッグですよ。脳から、ダラリと・・・」  初夏の某日、私は友人のKさんを群馬県は沼田にある中華屋で待っていた。今年2月に湯宿温泉に同宿して以来4ヶ月振り

          谷川温泉 男二人旅①【沼田の鄙びた中華屋】

          渾身の自炊飯・湯治飯【鳴子の名作10選】

           私と温泉との付き合いは幼少期に遡ります。 両親に連れられて訪れた大型ホテル。湯よりも食事に夢中です。普段は食卓に並ぶことがない豪奢な夕餉。天ぷらに煮物に刺身、陶板焼きまで。よき思い出です。  それが、今は・・・  浴衣に丹前に調理器具、寝具までもを愛車に積載し、幾重もの山河を跋渉の末、たどり着くのはいつも簡素な湯治宿。食事はほぼ自炊です。食欲が落ちて食べれない?それもありますが、連泊で2食付ですと忽ち螻蛄になってしまいます。  それに、私の定宿がある鳴子温泉には光輝燦

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          山形 赤倉温泉いづみ荘③<終>【有難し、旨い米と宿の人】

          <前回はこちら>  「この米、どこの物ですか?」  山の宿でおいしいご飯に出会うと、ついつい御主人や女将さんにこの質問をしてしまいます。人間、嫌でも生きていれば腹が減ります。私はパンを食べないので、主食のコメは重宝します。  どうせ買うものなので、できるだけ安く、そして旨いものを。 突き詰めると馴染みの湯治宿で買うか、その取引先を訪ね米屋で買います。車移動であれば5キロを持ち帰ることくらいは造作ありません。ちなみに水も天然水を20ℓのポリタンクに積んで帰ります。  い

          山形 赤倉温泉いづみ荘③<終>【有難し、旨い米と宿の人】

          山形 赤倉温泉いづみ荘②【豊富な湯量と小さな浴槽】

          <前回はこちら>  山形の温泉地の中でも、蔵王や肘折、銀山温泉と比べると赤倉の知名度はそれほど高くないようです。日本の湯治場の代表と言えば鳴子(宮城)と肘折でしょうか、その間に位置する赤倉は何度も通過していました。  恐らくYさんに薦められなければ、この地に宿泊することはなかったと思います。痛みや痺れを取ることが私たちの懇望であり、様々な加療の末に辿り着いたのが温泉療法です。  もちろん家風呂には毎日入りますし、湯の花も入浴剤も投入します。 しかし良い源泉を捉えた時の感

          山形 赤倉温泉いづみ荘②【豊富な湯量と小さな浴槽】

          山形 赤倉温泉いづみ荘①【安くて良い、素朴な宿】

           【剛毅木訥仁に近し】  良い言葉ですね。硬骨で、素朴で口数が少なく、道徳の最高峰「仁」に近し人物。自分には及ぶことのできない領域であり、理想の生き方でもあります。  私が再び三度と訪れる宿の館主には、こんな方が多いように思います。 あまりカッチリしていても、過度な厚遇をされても、拝金主義が見えて余りあるのも、、出過ぎた主人もちょっと。。注文が多く恐縮です。  鷹揚としたお人柄に油断した刹那、温泉の話となると一瞬眉間に縦線がピッと走り、熱く語り始めます。時には山の宿で厳

          山形 赤倉温泉いづみ荘①【安くて良い、素朴な宿】

          湯宿温泉 男二人旅②〈終〉【ひなびた温泉~湯本館と金田屋旅館】

          <前回はこちら> 私 「『好きな温泉地は?』って聞かれると『湯宿』って答えちゃうんですよね。自炊出来るところがあれば週単位で湯治したいくらいです」 K 「私もです。住みたいくらいです。宿だと中生館(四万温泉)なんですけど、温泉街を問われると湯宿になります」 私 「Kさんに勧められて中生館行きました。最高でしたよ。内湯も離れの露天も」「湯だけなら金湯館(霧積温泉)とか松渓館(松の湯温泉)の方が好きかもしれません。でも温泉街となると湯宿なんです」  投宿はKさんの定宿であり、

          湯宿温泉 男二人旅②〈終〉【ひなびた温泉~湯本館と金田屋旅館】

          湯宿温泉 男二人旅①【猿ヶ京温泉のボロい中華屋】

           「Kさん、あの中華屋どうしいているでしょうね。ええ、冬湯宿から猿ヶ京町民センターに行く途中で、左手にあったあのボロい店ですよ。Kさん、あれは好きな中華屋でしたよ--」 私 「Kさん、ここ強烈ですよ。入りますか?危険な香りがしますね」 K 「これは勝負ですね。しかしキツいビジュアルで」   「口コミの評価の高い店に入って、それが旨くてもロマンがない」 私 「御意にござります」  どうも人と戯れるのは苦手だ。私の旅は必ず一人、2人旅は久々。 だがKさんとは以前からいつか旅を

          湯宿温泉 男二人旅①【猿ヶ京温泉のボロい中華屋】

          嶽温泉の思い出

           最後に嶽温泉に行ったのは、昨年の5月です。この時、どうしても青森に行っておきたかったのです。理由が2つあります。  1つは体調面です。私は線維筋痛症という痼疾があります。また原因不明の発作が度々起こり、スパイク熱に白血球の異常も起こります。  年々進行していく病症の悪化は歯止めがかからず、様々な薬理療法を試しますが激痛は治まりません。長距離の移動、閉塞感のある飛行機や新幹線は痛みが出ます。  4~5月にかけて、大型連休に有給を噛ませ、テレワークをしつつ1ヵ月近いロングラ

          嶽温泉の思い出

          安くて旨い!温泉地で見つけた鄙びた中華屋 10選

           冬将軍の到来、温泉が恋しい季節。 私の愛する肘折温泉、2mも積もりましたか。あの街を想うと、角にポツンとある小さなラーメン屋を思い出すなあ。ちょっと襤褸くて安くて、味はシンプルで。何故か屋号は「もち屋」って。  そう言えば、あそこにもあったっけな。 街の外れに、色褪せた暖簾に建付けの悪い戸。暗いけど、どうもやっているみたいだ。疎らな客、誰もいないカウンターでまずはギョーザとビール。温泉で流した塩分は、ラーメンでチャージするものよ。  東京の行列店の方が旨い?そんな野暮

          安くて旨い!温泉地で見つけた鄙びた中華屋 10選

          私と温泉と湯治⑫<完結>【高東旅館~地獄から這いあがる】

          <前回はこちら>  東鳴子のいさぜん旅館での1泊を経て、次の御宿が結果的にラストダイブとなりました。お隣の温泉地「川渡温泉 高東旅館」です。これまで私が最もお世話になっている御宿です。  予約をする時はいつも電話で。御主人も女将さんも受話器を取り、私と分かると「あれから身体は大丈夫ですか?」と応えてくれます。  この時は1週間の滞在でした。正直この時も何をしていたか、痛みの状態がどうだったかなど、ほとんど記憶にないです。と言うより、何もしていなかったのだと思います。

          私と温泉と湯治⑫<完結>【高東旅館~地獄から這いあがる】

          私と温泉と湯治⑪【勘七湯~いさぜん旅館 ネコのいる宿】

          <前回はこちら>   なかやま山荘での宿泊は大晦日の1泊のみでした。この夜の内に、元日の宿を探します。一部屋キャンセルで空いたのか、東鳴子の「勘七湯」が連泊で取れました。こちらは以前立ち寄りで来たことがありました。正月ということで多少値段は色が付いていましたが、致し方ありません。  御主人がとても温雅で、且つ温泉のことになると熱くその情熱を語ってくれます。私が興味深げに色々と質問しても、嫌な顔一つせず全てレシーブしてくれました。  東鳴子の辺りは黒湯が出ます。2つの源泉

          私と温泉と湯治⑪【勘七湯~いさぜん旅館 ネコのいる宿】