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北欧フィンランドのグルテンフリー事情

先日興味深い記事を書いている方を見かけました。

グルテンフリーがここまで市民権を持っていることに非常に驚いたのですが、この理由については分からないままです。ただの健康志向なのか、ラクトースフリーのように、北欧の方の体質的なものに合わせてなのか。

Joyful Career Journeysさんの記事より


そうなんですよー、グルテンフリーはこちらでは一般的です。
自分もこちらに来て間もないころは驚きました。

北欧に旅行した方でも気になった方はいるのではないでしょうか。
スーパーはもちろん、レストランのほとんどにグルテンフリーの選択肢があります。

ピザ屋ですらグルテンフリーのピザ生地ありますと謳うところがあります。
(焼窯は共有してたりするので100%小麦フリーとは言い難いですが、そこまで重篤でない人は食べられるのかもしれません。)


北欧人の体質に合わせて作られてます

健康のためグルテンフリー生活をしている人は一定数いるでしょう。
しかしそれよりも大きな理由があります。それはラクトースフリーと一緒で体質的、むしろ遺伝的な理由です。

セリアック病というものをご存じでしょうか。
フィンランド語では「Keliakia(ケリアキア)」と言われています。
英語だと「Coeliac disease」ですね。

セリアック病とは、グルテンに過敏に反応することで、自分自身の小腸の粘膜を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患のひとつです。 北欧人に多い遺伝性の疾患で、欧州では150人に1人、欧米では250人に1人の割合で発症すると言われており、日本を含むアジア人が発症するのは極めて稀といえます。

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Väestötutkimuksissa keliakiaa on todettu noin 2 prosentilla suomalaisista. Ihokeliakiaa esiintyy noin 10 %:lla aikuisista keliaakikoista.

セリアック病患者はフィンランド人の約2%、疱疹状皮膚炎患者は約10%いると人口調査で明らかになった。

疱疹状皮膚炎はグルテンに触れると赤い水疱や蕁麻疹が現れる疾患です。

患者数は4万人いるとされていますが、知らないうちにセリアック病を発症している患者は7万人いるといわれています。
症状は腹痛以外にも多岐にわたるため、発見が遅れるパターンが多いのではないでしょうか。そうなると患者数は単純計算で11万人です。
実際は統計よりも多く患者がいることになります。


グルテンフリーというと食物アレルギーの方を対象にしたものと思いがちですが、グルテンを取れない理由というのは様々です。

セリアック病は自己免疫疾患、小麦アレルギーやグルテンアレルギーは食物アレルギーです。グルテン過敏症は原因がセリアック病でも食物アレルギーでもない場合を指します。


フィンランドをはじめとした北欧でグルテンフリー(小麦フリー)が一般的なのはこういった背景があります。


グルテンフリーの粉も一般的

グルテンフリーの製パン・製菓用粉もスーパーでは一般的です。

Sunnuntai、フィンランド語で日曜日という意味です

こちらはグルテンフリー粉として有名な Sunnuntai ブランドのものです。

手で触った感覚としてはコーンスターチや片栗粉を連想します。明らかに小麦粉とは異なりますがケーキなどに使っても仕上がりはかなり似ているので代用が非常にしやすいです。
※グルテンが入っていないのでパンやプッラ作りに使用する場合、レシピによっては多少の調整が必要になる時があるかもしれません。

!使用時の注意!
このSunnuntaiブランドを始めとした一部のグルテンフリー粉はグルテンを除去した小麦デンプン(Vehnätärkkelys)が入っています。
つまりグルテンアレルギーの人には問題ないですが、小麦アレルギーの人にとっては問題があります

グルテンがダメなのか小麦がダメなのか、日本だと混同されがちですがこの二つは違いがあります。フィンランドで人に振舞うための甘いものを作る時は気を付けましょう。

セリアック病はグルテンフリーなら基本的に大丈夫との認識ですが、人によると思うので確認は怠らないようにしましょう。


そんな小麦アレルギーの人にもフレンドリーなお菓子やパンを作る時は以下の粉類を使用するのがフィンランドでは一般的です。

  • 米粉

  • とうもろこし粉(コーンスターチとは別のものです)

  • そば粉

  • モロコシ粉(デュラ種)

上3つは日本人にとっても馴染みがありますね。モロコシ粉はご存じでない方もいるかもしれないのでちょっと解説します。

モロコシはおもに種皮にタンニンを多く含むため、精白を強めにしないと渋みが強くなる。この性質が嫌われ、インドやアフリカを除いては食用利用は衰退した。近年では健康意識の高まりから雑穀が先進国を中心に見直され、アメリカでタンニンを含まないホワイトソルガムが開発されるなど、復権に向けた動きもみられる。ホワイトソルガムはグルテンを含まないため、セリアック病患者のためのグルテン・フリー食材として使用される。

そんなモロコシ粉(デュラ種)は「Durrajauho」としてフィンランドで売られています。ちなみにjauhoは粉という意味です。

Täysjyväは全粒粉という意味になります



またそこまで一般的ではないかもしれませんが、テフという穀物粉も売られています。フィンランド語では「Teff-jauho」です。


オーツ麦(Kaura)もグルテンフリーの穀物としてはよく食されています。
グラノーラやミューズリーはグルテンフリーで製造されるのが一般的な印象です。




おすすめグルテンフリー商品

スウェーデンの会社 Semper はグルテンフリーの商品を多く展開しています。
自分はアレルギーでもセリアック病でもありませんが、そういった人が職場や友人宅に居て、何か甘いものを持参する場合ここのクッキーを買う時があります。

普通に美味しいので是非買ってみてください。
北欧土産にもいいかもしれません。


Nauti elämästä vapaasti - ilman gluteenia!
人生を自由に楽しんで、グルテン無しで!


またビールもグルテンフリー対応商品は多いです。

オーガニック、グルテンフリー、ヴィーガン対応商品は明記するのがスタンダードです




こういった背景もありグルテンフリーの商品が多く開発され、一般的ともいえる位置になりました。アレルギーや遺伝性疾患を持っていても食生活が制限されていると感じない社会を目指すのは素晴らしいことです。

技術が進歩し、よりよい商品が開発されていくのは楽しみですね。