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アートと建築の旅 グラスゴー 3

お天気にも恵まれ、今のところ充実した内容のグラスゴーの旅。3日目のこの日(2019年6月27日)は、引き続きチャールズ・レニー・マッキントッシュの作品を軸に、グラスゴー大学のある市内西部に足を伸ばしてみることにした。

グラスゴーでのこれまでの訪問地

グラスゴーをスコットランドの旅に組み込んだ理由、グラスゴー入りした日のこと -

チャールズ・レニー・マッキントッシュの作品やアートサイトを周った2日目 -

この日、気温は25度ほどまで上がり、日の当たるところでは確実に日焼けするだろう、それぐらいに快晴の素晴らしいお天気だった。

グラスゴー大学に隣接しており、美術館・博物館を取り囲むケルヴィングローヴ公園(後述)。青と緑のコントラストが美しい。

私は市内中心部から、少し離れたグラスゴー大学まで歩いて向かってみることにした。

グラスゴー大学(University of Glasgow)

グラスゴー大学に立ち寄った理由 - それはマッキントッシュハウス、ハンタリアン博物館(いずれも後述)など、大学内に目当てのアートサイトがあるからで、実は大学そのものは目的ではなかった。当時キャンパスに関する情報は持ち合わせておらず、それ故大学自体には失礼ながら興味もなく、見て周るつもりもなかった。

しかし、私が訪れたのは6月下旬は、日本よりも短い太陽の季節、そしてヨーロッパでは卒業式のシーズンでもある。さらに前述の通り、この日は気温も上がり、ここスコットランドでは一年で指折り数えるくらい美しい日だっただろう。私は構内に足を踏み入れて、その素晴らしさと美しさに魅了されてしまった。

緑萌ゆるスコットランドの6月。グリーンが青空と校舎に映えて一際美しい。

到着したのは朝の11時過ぎだったが、構内のグリーンでは、早くもランチを取ったり、気持ち良い陽気に寝転がって会話を楽しんでいる学生たちがちらほら。イギリスでは天気の良い日にはよく「太陽を楽しんでね!」と挨拶がてら言うけれど、それはやはり雨の多い国だけに、太陽の光が貴重だと言うこと。こんなお日和に、太陽を楽しまないわけにはいかない。

緑あふれるキャンパス構内。
木陰で休憩のひととき。

さらにこの日、構内では卒業式が行われていた。お天気も祝福する中、正装した学生たちとその家族が、中庭で嬉しそうに写真を撮りあったり歓談する様子は殊の外美しく、こちらまで心打たれるものを感じるほどだった。そんな場に立ち会えると思っていなかった私はこの偶然に感謝したい気分になり、同時に心の中で祝福を送ったりもした。

長方形型のメインキャンパスは小高い丘に建っており、それ故この中庭は日本式の2階で、まるで空中庭園を思わせるつくり。セレモニーを終えた学生とその家族たちは、歓談したり、写真を撮ったりと晴れの日を思い思いに祝福していた。その姿は旅行者の私にもきらきらしていてとても眩しかったことが、今でも胸の内に残っている。

これはハンタリアン博物館内から望んだ中庭を撮ったもの。卒業式に相応しいお日和の日、幸せそうな卒業生とその家族に、偶然通り合わせた私もしあわせを分けてもらった、そんな気分だった。

こんな美しいキャンパスで学生生活を送るなんて羨ましいものだと後日調べてみると、グラスゴー大学は15世紀に創設されたイギリスで4番目に古い大学で、案の定ゴシック様式のキャンパスはグラスゴーの観光名所になっているという。時間が許す方、そして季節が良ければ、この美しいキャンパスに足を伸ばしてみてはどうだろう。

University of Glasgow
Glasgow G12 8QQ
https://www.gla.ac.uk

ハンタリアンアートギャラリー(Hunterian Art Gallery)・マッキントッシュハウス(The Mackintosh House)

グラスゴー大学内に併設されたこの二つ、ハンタリアンアートギャラリーはマッキントッシュのコレクションを有したギャラリーで、同じ建物内にマッキントッシュハウスが併設されている。マッキントッシュハウスは、マッキントッシュと妻マーガレットのグラスゴーの自宅を再現したもので、あの有名なハイバックチェアを始め、彼らのモダンな部屋作りが数多く見られる。実際のところ、それらは今ここに誰かが住んでいる、と聞いても不自然ではなく、それほど“モダン”なテイストに満ちあふれていた。それはもちろん建築家のマッキントッシュ自身の手によるものだったからかもしれず、その頃の一般的なそれとは少し離れるかもしれないが、それでも建築好きにはもちろん、インテリアがお好きな方にも楽しめる空間ではないだろうか。ベッドやデスク、椅子、それらの配置など、一つ一つがマッキントッシュ夫妻の手によるものだと思うと、私たちにインスピレーションを与えるものは少なからずあり、また興味深い。しかし残念ながらいずれも撮影禁止だったため、写真はない…のだが、マッキントッシュハウスのサイトにヴァーチャルツアーを見つけたので、代わりにこちらをお楽しみいただければと思う。

ハンタリアンアートギャラリー
二つは同じ建物内にある。

なお、マッキントッシュハウスは有料となるので、行かれる際はwebサイトで確認いただくのがいいだろう。

Hunterian Art Gallery
https://www.gla.ac.uk/hunterian/visit/ourvenues/hunterianartgallery/

The Mackintosh House
https://www.gla.ac.uk/hunterian/collections/permanentdisplays/themackintoshhouse/

University of Glasgow,
82 Hillhead Street,
Glasgow, G12 8QQ

ハンタリアン博物館(Hunterian Museum)

グラスゴー大学内にあるもう一つのアートサイト、ハンタリアン博物館。ハンタリアンアートギャラリーと総称して、“The Hunterian”と呼ばれている。

スコットランド最古の公立博物館で、コレクションも古代ローマやエジプトのものから、外科手術の道具などさまざま。私はどちらかというとコレクションよりもゴシック様式の建築を楽しんだのだが、19世紀のこのクラシックな雰囲気は貴重なものなので、ゴシック様式がお好きな方には特に垂涎の場所だろう。また私が訪れたのは平日だったからか、入館者はほぼ数人で、人気を気にすることなくゆったりと過ごせた。なお、入場料は無料である。

ゴシック様式の天井高く荘厳な雰囲気の入り口。
スコットランド最古の博物館とあって建築自体もかなり古いが、重厚な雰囲気もありクラシックな博物館らしい構え。
開放感のある博物館内。
まるで開館当時(この博物館がオープンしたのは1807年)の雰囲気を思わせる博物館階下の踊り場。

Hunterian Museum
University of Glasgow
Main Building North Front, University Avenue, Glasgow, G12 8QQ
https://www.gla.ac.uk/hunterian/visit/ourvenues/hunterianmuseum/

ケルヴィングローヴ公園(Kelvingrove Park)

グラスゴー大学に隣接するこの公園の、通り抜けるまでに数十分はかかるであろう広い敷地には美術館・博物館もあり、学生はもとより地元の人たちの憩いの場となっている。このケルヴィングローヴ美術館・博物館もグラスゴーの見どころの一つであるが、私は時間的に難しかったためスキップすることにした。それ故美術館・博物館のレポートはできないのだが、お天気もありこの公園も一筆に値する素晴らしさだったので、ここに書き加えようと思う。

公園を横断しているケルヴィンウェイは、さながらグリーントンネル。この時期、車で走り抜けたらさぞかし気持ちいいに違いない。ウォーキングもとても楽しく、緑が眩しい緑道だった。

公園入り口にある案内図。この公園がいかに広いかが見てとれる。
公園内を流れるケルヴィン川。整備されつつも美しい自然あふれる公園。

お天気の良いこの日は多くの若者たちが、休憩したり日光浴したりランチをしたり…まるで絵に描いたように穏やかなひとときを楽しんでいた。ピクニックはスコットランド、そしてイギリスの人々にとって最上の娯楽である。

木々の間からグラスゴー大学がうっすらと覗く。美術館と博物館の他には何もないけれど、散歩や憩いの場にうってつけということはもちろん、通りすがりの旅行者の私にも美しく素晴らしいと言わしめるこの公園。イギリスでは、日本よりも道路上にごみがありきれいでないことの方が多いのに、不思議なことに公園ではごみが落ちているのをあまりを見ない。そして大体の公園にはお金を使う場所もない。手ぶらか、飲み物などピクニックの準備をして訪れ、太陽とおしゃべりと、そしてリラックスすることをひたすら楽しむのがイギリス流。犬と散歩している人も非常に多い。人混みに疲れたら、公園で軽く散歩するのも悪くはない。運良くここイギリスでお天気に恵まれたら、このイギリス式の娯楽を試してみてはどうだろうか。

Kelvingrove Park
Otago Street
Glasgow G12 8NR

満喫したグラスゴー大学周辺を後に、私は後ろ髪ひかれる思いでケルヴィングローヴ公園を後にした。2泊3日のグラスゴーの旅は当初想像し得ないほど充実したものになった。たくさんのインスピレーションを両手いっぱいに抱えた気分で、次の町に向かうべくグラスゴー駅へと私は急いだ。

※ 挿入されている写真及び画像はすべて筆者によるものです。

(Glasgow 27 Jun 2019)

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