それでは今日も幸田露伴の『露団々[ツユダンダン]』を読んでいきたいと思います。
恋は盲目の天女とは良い例えで、この情の趣きの美しくして哀れ深く、尊くして面白いのは、霞の中で乙女が遊ぶごとく、苔なめらかなる架け橋を盲者が辿るごとし。恋とは偽りのない心の白絹に描く模様の色々、とても理屈で推せないのが人情。四年程前、しんじあはぶんせいむに招かれて、ぶんせいむの製鉄所で演説したとき、はじめてるびな嬢に会い、美しい乙女だと思い、その後しばしば往来し、慣れるにつけ、ともに昔や今を語り、得難き貴女だとわかりますが、自分はわずかな財産であり、富家の娘と縁など組めば、世の人から欲のためと言われるだろうと苦しく、切ない月日を送ります。その日も演説会でしたが、帰りにじゃくそん君に呼び止められ、馬車に乗って、しんじあの自宅に向かいます。客室に伴い、しんじあが座るのを待ち、じゃくそんは「はなはだ唐突のことですが……」と言います。
ということで、この続きは……
また明日、近代でお会いしましょう!