それでは今日も幸田露伴の『露団々[ツユダンダン]』を読んでいきたいと思います。
9月頃、二三ヶ月の旅行から帰ってきたるびな。はじめの五六日は旅中の談話をして暮らしますが、ちぇりいに託したしんじあへの手紙が返事がふた月経っても返ってこないことが心配になります。静かなある夜、風がヒューという澄み渡る音に……やおら身を起こし、椅子を離れて、廊下に出て、音のするほうに歩きます。雲行き過ぎて空明るくなると、紛う方なきしんじあがいます。るび「しんじあ様」。しん「久しくお目にかかりませんでしたがお達者で」。るび「よそよそしい他人行儀。ちェりいにはお逢いなさりませんでしたか」。しん「ちェりいからあなたの心入れをも承り、うれしく思いましたが、いくらあなたと私の間に思い思うても無益のこと……また私があの広告に応ずることは、私もしんじあと申す男一匹、正当の恋を正当の方法で成就しようと勤めるには勇気を惜しみませんが、無法の想像の欲に使われてあなたを釣ろうとはしにくいこと……ただこれだけはお知らせ申そうと、先日伺いましたれば……」。るび「え……」。
ということで、この続きは……
また明日、近代でお会いしましょう!