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オスグッド・シュラッター病(成長痛、膝の痛み)の鍼灸治療

疫学:10~15歳の男子に多い。脛骨粗面付近に疼痛が見られる。運動時に症状が悪化する。

原因:大腿四頭筋などの使い過ぎで、膝蓋骨遠位端、膝蓋靭帯、脛骨粗面にかかる機械的牽引力が増加する。

一般的な治療法:安静で経過観察。キックやジャンプ動作は禁止とする。理学療法と対症療法が主で、重症の場合は手術となることがある。

当院の治療法:主には大腿四頭筋と前脛骨筋へ刺鍼します。通常、2~5回程度の刺鍼で完全に痛みが消失します。病院で「部活を止めないと治らないよ!」と医師に宣告され、ガッカリ顔の学生がよく来院しますが、軽症であれば3回程度の施術で痛みから解放され、部活を再開出来るようになります。元々慢性腰痛があったり、下肢全体のコリが強いような場合は、10回前後かかることもありますが、当院においては比較的簡単に治せる病態の1つです。 

オスグッド病は小学校高学年~中学生くらいの子供に多く見られる病態です。特に、バレーボールやバスケットボール、サッカー、剣道などで、強く足を踏み込むようなスポーツをやっている子供に多くみられる病態でもあります。整形外科においても、大腿直筋や中間広筋、前脛骨筋の使いすぎが原因であることは薄々わかっているようですが、病院ではこれといった治療法が確率しておらず、「しばらく部活動を休んで安静にして下さい。」とか、「運動の前後に太ももの前の筋肉を十分に伸ばすようなストレッチをして下さい。」などと言い放つだけで、結局は治せないことが多いようです。当院では、早ければ1回の治療で痛みが半減、平均的には3回程度の治療で痛みから解放されます。オスグッド病があった人は、成年期以降にタナ障害(棚障害)に移行することもあるようですが、これも鍼をすることで改善します。しかし発症してからかなり時間が経っていると、腰、骨盤周囲から大腿部、膝下の筋肉が硬化して、慢性的な腰痛、膝痛、ハムストリングスや腓腹筋(ふくらはぎ)のつり、痙攣もみられる場合があります。この場合は、腰、臀部、下肢前面と後面、膝裏、腸骨筋への刺鍼が必要になるため、中高生の膝痛よりも厄介で、改善するまで時間がかかることがあります。軽度であれば、数回の治療で済みますが、重度であったり、太っている場合は腰、股関節、下肢への日常的な荷重が大きいため、半年以上の時間を改善まで費やすことがあります。しかし、鍼をすれば改善します。

そもそも、なぜこのような痛みが出るのかを神経学的に考え、どうアプローチすれば良いかを考えれば、自ずと治療法は絞られてきます。つまり、バレーボールやバスケットボール、剣道などのように、足底部における摩擦抵抗が極めて高い状態(体育館の床は滑り難いうえに、滑り難いバッシュなどを履くから、足底部では余計に抵抗値が上がる。)で、激しく踏み込むスポーツにおいては、大腿直筋や前脛骨筋が収縮する割合が他のスポーツに比べて高く、その結果、それらの筋肉が付着している膝関節前部で「引っ張り合い」が起こり、炎症や痛み、関節の変形を引き起こすことになるのです。原理・病態としては、関節の動きが似ている車軸関節である肘関節で起こるテニス肘、野球肘などとほぼ同じです。

多くの医療者は、痛みの出ている関節部ばかりに囚われそこばかりを治療しようと躍起になっていますが、実際は関節部に問題があるのではなく、関節に付着している筋肉に問題があることが多いのです。ゆえに、その問題の筋肉をどうにかしてやれば、関節部の痛みはウソのように消えてしまいます。で、どうすれば良いかと言えば単純に、使い過ぎで異常収縮を起こし、関節部へのテンションを強めている筋肉に鍼を刺して、元の健全な状態に近づくようにゆるめてやれば良いのです。しかし、膝下の痛みは膝下に付着する大腿部の筋肉が原因であるケースは少ないです。それゆえに病院では大腿部の筋肉をゆるめてやれば治ると信じているようですが、実際に治るケースは少ないようです(実際には別の筋肉や疼痛部の癒着などに原因があることがほとんどで、そこに刺鍼すればほとんどのケースで完治します)。病院などのように、薬物性肝障害や薬物性腎障害を起こし得る鎮痛剤などで一時的に痛みを誤魔化すのではなく、刺鍼によって痛みの原因となっている筋肉を安全にゆるめてやることで、本当の無痛状態、つまりは完治したと言える状態まで導くのです。

膏薬や湿布などの鎮痛剤の類は筋肉をゆるめるモノではありませんから、たとえそれで痛みが消えたとしても完治したとは言えず、マヤカシに過ぎません(ちなみに、モーラステープなどは日光過敏症などの副作用があり、重篤な皮膚症状が出現する患者もいますので、気軽に貼るのも考え物です)。つまり、生物の生存に必要不可欠な痛みの伝導回路を薬物によって強制的に断つことで、「痛みを感じない」状態にしているだけなのです。ゆえに、薬の効果が無くなれば、短期間で痛みが再発します。そもそも、痛みは休ませるための生理的に自然なサインであり、痛みを抑えて動かすことは関節や筋肉、骨、靭帯を損傷させる可能性があります。

しかし、鍼で完全に筋肉をゆるめてやれば、その後よほど使い過ぎない限りは、再発しにくくなります。万が一痛みが出たとしても、最悪の時の痛みが出ることはなく、「ちょっと痛むかな」という感じで痛みが出るので、その時に1~2回くらい鍼をすれば、簡単にまた良い状態へと治ってしまいます。つまり、鍼で一度完全に筋肉を良い状態にしておくと、その後は能動的に回復する力が強く発動するようになるため、それまでのようにひどく悪くなることはないのです。

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