見出し画像

映画感想 スターウォーズ9

!ネタバレあり!
!結末まで書いています!

 某サイトを見ていて……。
 おっ、『スターウォーズ9』テレビ放送するのか! へえー、いつだろ、いつだろ。録画して見よー…………昨日だった。
 というわけで、Amazon Prime Videoにお金を払ってレンタル。まあテレビ放送は左右カットされちゃうわけだから、Amazon Prime Videoのほうが良いでしょう。ただ、Amazon Prime Videoはあまり画質が良くないというのが……。ブロックノイズが結構出るのが気になるなぁ。ブルーレイで見たかったな……。そのブルーレイを買う余裕すらない。
 前作である『スターウォーズ8』を観た後、「できるだけ早く『~9』を観よう」と思っていたのだけど、その後すっかり忘れてて、気付けばテレビ放送でやるっという時まで来て、しかもそのテレビ放送も気付けば終わってて……。ニートだけど案外あれこれやってて忙しいんだ。

 さて、本編のお話。今回は時系列順に物語を追っていこう。

 冒頭はカイロ・レンのお話。相変わらずダース・ベイダーお爺ちゃんへの憧れを捨てきれない中二病カイロ・レンは、パルパティーンに会うためのキーアイテムを探していた。それが今回のマクガフィン、ウェイファインダー。カイロ・レンは“偉大なる祖父”のようになりたいがために、パルパティーンを殺し、自分が皇帝になることを夢見ていた。
 仮にもカイロ・レンはこの時点でファースト・オーダーの最高指導者だったはずなのに、その上司たるパルパティーンの居場所を知らなかった。ということはかなりの機密体制で計画が進行していたことがわかる。
 パルパティーンは生きていた……というかクローン体。『スターウォーズ6』に登場していた個体とは別。でも年寄りだからなのか、クローン体だからなのか、肉体は生命維持装置に繋げられているのに関わらず朽ちかけている。
 パルパティーンはカイロ・レンにレイ抹殺を指示する。ここが後のシーンと矛盾するところで、パルパティーンはレイを生きたまま連れてくることを望んでいたはず。ここでどうしてカイロ・レンに「レイ抹殺」を指示したのか……推測としてはパルパティーンはカイロ・レンの中にいくらか残っているライトフォースを感知し、それをダークサイドに堕とすためにレイ抹殺を試練として与えた……かな? ということは、カイロ・レンにレイ抹殺はできやしない、と考えていたのだろうか。あるいはパルパティーンの能力の中に「幻惑」の力があり(かつてアナキンを陥れたような……※)、カイロ・レンはそれにまんまとかかった……のかも知れない。
 ともかくもカイロ・レンはパルパティーンの「余の願いさえ聞けば全てお前のもの」という甘言を聞き、レイ抹殺に邁進を始める。

(※ ジェダイの力の中には、相手を意のままに操る力もある。『エピソード9』では敵艦隊に忍び込んだレイが、トルーパーの思考を操作する場面がある)

 一方、相変わらずのレジスタンスの一同は、ジャングルに身を隠しながら、次なる作戦を練っていた。
 レジスタンス達もパルパティーンがクローン体で生きていたことをスパイ情報から知る。パルパティーンがいるのは星図にも載っていないエクセゴルと呼ばれる未知の領域。しかも攻撃が始まるのは16時間後……。レイはルークが残したノートの中から、シスのウェイファインダーが必要であることを知り、仲間達と共に探しに行くことに。
 何かの目的を達成するために、別の何かを探す……という構成。素直な冒険探索ものとして映画を作り上げている。ここが9作目のいいところ。『スターウォーズ8』はひねりすぎて何がしたいのかわからない、サイコパスな映画だった。でもこういう冒険映画的な作りこそが『スターウォーズ』本来の姿。『~9』でその姿を取り戻してくれている。

 ここで驚くのはレイア姫が普通に出演していること。
 どうやら『グラディエーター』のオリヴァー・リードと同じ方式で撮影されたらしい。
 『グラディエーター』のオリヴァー・-リードと同じ手法とは? 有名な話だから知っている人の方が多いと思うが、念のために説明しよう。オリヴァー・リードは映画『グラディエーター』において重要人物として出演していたが、その最後のシーンを撮影する直前、交通事故によってこの世を去ってしまった。ではラストシーンはどうするか? 『グラディエーター』スタッフはオリヴァー・リード出演の他のシーンを切り抜き、あたかも他出演者と対話しているかのように脚本を作り、登場シーンを作り上げた。
 件のシーンというのは、鉄格子越しにマキシマムことラッセル・クロウと対話するシーン。「善人になるつもりか?」「ハッ!」と対話するのだが、このオリヴァー・リードの台詞は本来全く別のシーンで、別のニュアンスで撮っていた台詞。それに、マキシマムがそれっぽい台詞でやり返す流れになっている。CGでオリヴァー・リードの口元を作り替えたりもしていない。それで見ていて違和感がないというか、気付いた人はほとんどいなかった。台詞を考えた脚本家の大勝利である。

 『スターウォーズ9』のレイア出演シーンはどうやらこれを拡大して、前作で撮っていたアーカイブを元に、相手役のレイの台詞を工夫して、対話しているように作ったようだ。違和感が全くないことに驚く。レイア姫の出演シーン自体非常に多く、よくこんなにたくさんの出演シーンを(台詞回しがおかしくなることもなく)作れたなぁ……と驚く。それだけ『スターウォーズ8』で余計なシーンを撮っていた……ということなのだろうけど。無駄にたくさん撮っていた前作監督に感謝だ。
 そのレイア姫、レイが旅立つ時に「本当の自分を恐れないで」という言葉を残す。ということはレイア姫は、レイの体内に眠っているフォースの正体に気付いているのだ。
 後にルークの台詞の中でわかることだが、レイア姫は『スターウォーズ6』での戦いの後、フォースの力を順当に覚醒させ、特に予言の力を特化させていたようだ。そこで間もなくレイという娘が現れ、苦闘することにも気付いていたようだ。

 という、旅立ちまでの経緯を作るまでに19分。全体を通して見ても、上映時間142分というやや長めの尺で、ストーリー転換が20分おきにやってくる。かなり詰め込んだ構成になっている。詰め込みすぎ感が出ているけれども、「あと16時間で総攻撃が始まる……」という緊迫感が出ていることも確か。良い悪いはなかなか判断しづらいところ。

 次にレイ達一行はパサーナへとやってくる。ルークもかつてウェイファインダーを探していたが、パサーナまでやってきたけれども、肝心の輸送船の中がもぬけの殻。捜索が行き詰まり、断念していた。
 パサーナのアキ・アキ祭のシーン。ここはかなり贅沢に作られたシーン。風景の奥の奥まで着ぐるみを着たキャラクター達で覆い尽くされている。見た目的にもかなり賑やかに作られて、楽しいシーンだ。

 アキ・アキ祭の中を歩いていると、レイはカイロ・レンとコンタクトする。ここは『スターウォーズ8』から継承されたシーンで、どんなに遠く離れてもお互いの存在を察知できるが、しかし相手がどこにいるかがわからない……とちょっと面白い見せ方になっている。
 で、カイロ・レンはレイが身につけている首飾りを奪い、そこからパサーナにいることを特定する。レイはカイロ・レンに居場所を知られたことを気付き、急いで行動するようになる。タイムリミットが16時間の上に、追跡者が常に背後まで迫っている……というなかなか面白い状況を作っている。

 その後にカルリジアン将軍と会い、スピーダーに載っての活劇シーンがあるのだが、どーでもいいんで、飛ばすとしよう。

 スピーダーから転落して流砂に落ちる一行。そこでフィンがレイに「聞いてくれ!」と何か言いかける。
 ここで何を言いかけたのか? フィンがレイにだけ言いたかったこととは?
 それはフィンにもどうやらフォースが宿っているらしい……という話。
 『スターウォーズ9』の中でも、間もなくフィンはカイロ・レンがやってきていることを察知するし、最後の戦いの場面でフィンは謎の直感で旗艦が変わったことを突き止めるし、その次には危機に陥っているレイを察知して「レイ!」と叫んでいる。これはもう、完全にフォースに目覚めている。
 「フィンもフォースに目覚めかけている」……ということを念頭に置いて『エピソード9』を見れば、フィンの言っている少し謎めいた台詞の全てがわかってくる。どう考えてもこれはフォースに覚醒しかけている……という台詞が随所に見かけることができるはずだ。
 フィンにも実はフォースが宿っている疑惑は、実は『スターウォーズ7』の頃からすでに噂として囁かれていた。というのも、『スターウォーズ7』でフィンは当たり前のようにライトセイバーを持って戦っていたからだ(ハン・ソロにもフォースがあると語られていた。これは『~5』で一度ライトセイバーを使うシーンがあったため)。ライトセイバーのあのビームは、フォースの持ち主でないと発生できないはずなのに……? 『スターウォーズ8』ではかつての上司であったトルーパーを撃破。フィンはフォースの使い手として覚醒しかけていたが、しかしジェダイとしての訓練を受けることができなかった……というキャラクターだ。
(もしかしたら、『~7』で不用意にライトセイバーを持つシーンを作ってしまったがために、フォースの持ち主として覚醒する場面が『~9』で描かれたのかも知れない)
 でもフィンにとっても、自身にフォースがあることはまだ半信半疑なところがあり、それでその筋の先輩たるレイにだけ話を聞いてもらいたかったらしい……。
(どうもこのシーン、レイとフィンのロマンスだと思った人がいるようなので、そうじゃないですよ……ということをここに書いておく)

 さて、ここからレイはフォースの力をどんどん覚醒させていく。まずは怪我をしている大蛇を回復させてしまう。
 フォースってこんなことできたっけ??
 はい、できません。今までにそんなシーンはなかった。
 でもなぜレイがこんな力を持ち始めたのか……というと、レイが今までにない度外れたフォースの持ち主……ということを見せるため。どうしてレイがそんなフォースの持ち主なのか、という理由は間もなく明らかにされるので、それはさておき。
 次に、レイはカイロ・レンの載るタイ・ファイターを生身で撃破する。まるで東方不敗だ。
 さらに、飛び立とうとする輸送船を、フォースの力で掴み取ってしまう。今まで、水中に沈んだXウィングをフォースの力で持ち上げるシーンなどはあったが、加速している最中の飛行船をフォースの力で掴み取ってしまったのはレイが初めて。
(あとすでに書いたが、トルーパーの思考を完全にコントロール下に置いてしまうなどもした)
 しかし力加減が難しいらしく、レイの右手から電流が放たれ、輸送船を破壊してしまう。輸送船をフォースで掴んだだけではなく、さらに破壊までやってしまった……。しかも見覚えのある青い電流。さて、そろそろレイの正体が何者であるのか、ヒントは充分に揃った頃だろう。
 でも答え合わせはちょっと先お送り。
 ここまでの展開でおよそ40分。『スターウォーズ9』は20分おきに転換点が来る。慌ただしい展開が続いている。

 例の短剣を発見したレイ達だが、そこに書かれている言葉はC3-POでも解読不能……いや解読不能なのではなく、通訳禁止にされている言語。C3-POに解読させるために、一回メモリーを消去する必要があった……。
「この任務に失敗すれば、全てが無になります。今までの苦労も。費やした時間も。目に焼き付けているのです。友達の姿を」
 C3-POはなかなか感動的な台詞を言って、メモリー消去を受け入れるのだが……。
 でもしばらくして特に何でもなかったみたいにメモリーは復活してしまう。じゃあ、ここのシーンはなんだったんだか……。いっそC3-POの記憶をここで消去してしまって、過去シリーズとの接点を全て消去してしまえば良かったんじゃないか、とは思う。『7~9』のテーマは過去シリーズからの刷新と継承だから、全シリーズ登場しているC3-POの記憶もここでいったん消してしまって、前シリーズとの繋がりも消してしまえば良かったのに……という気はしている。変に前シリーズを引きずるよりかは、そちらのほうが良かったんじゃないか。

 それはさておき、一方ポーとゾーリは昔なにかしらあったらしい。そのゾーリとの対話シーンに、

「孤立したと思わせるのが奴らの作戦。覚えてる? 味方はまだいる」

 というものがある。
 なんでもなさそうだが、実は重要な台詞。
 レジスタンスたちはジャングルにこもって、孤軍奮闘をやっているつもりだが、実はそれは帝国側の分断作戦によるものだった。銀河のあちこちに小規模なレジスタンスがあって、それぞれで活動しているのだが、帝国の分断作戦によってそれぞれコンタクトが取れず、みんな活動しているのは自分たちだけ、孤立していると思い込んでいる。
 それがラストシーンに入り、分断されていた大小様々なレジスタンスが結集してくるシーンへと繋がってくる。
 ラストシーンで、なぜ救援が来たのかわからない……という意見を見かけたのだが、ポイントはここの台詞。まあわかりにくいっちゃ、わかりにくい。ちなみに導いたのはカルリジアン将軍。あの短期間で各所のレジスタンスを回って蜂起したのか? ……という疑問はさておく。

 C3-POから情報を得たレイ達は、キジーミを離脱しようとするが、ここでまたレイが並外れたフォースを発揮して、空中に浮かぶ艦隊を見てそこにチューイがいることを察知する。
 そこでいろいろあって、レイとカイロ・レンが再会する。
「お前の行く末を見たいからだ。お前の持つ力は、奴の持つ力。お前は奴の孫。お前はパルパティーン家の者」
 ここでついにレイの正体が明らかになる。レイがどうしてあれだけのフォースを発揮できたのか。それはパルパティーンの直系だから。しかも後の展開を見ると、パルパティーンの転生者であるらしい。強大なフォースの力を持っているが、それはライトサイドではなく、ダークサイドのものだった……!
 と、いう話は私は『エピソード8』の段階で気付いていた。レイは修行の最中、次第に自身の内面深いところに入っていき、そこで不穏なものを発見し、怯えるようになる……。このシーンを見て、私は「あ、さては……」と気付いた(『エピソード9』のポスターで、レイが赤いライトセイバー持ってたしね)。カイロ・レンはワルに憧れる中二病だけど、レイは本物だな、と。
 やっと答え合わせができた……。

 閑話休題。
 なぜカイロ・レンがダークサイドに堕ちてしまったのか……?
 私が考えていた理由は、前回の感想文の時にも書いたが、『スターウォーズ』の世界ではライトとダークは常に釣り合うもの……らしい。それで『エピソード4・5・6』では銀河皇帝とダースベイダーという圧倒的なダークサイドが君臨する世界となり、それで強力なライトサイドであるルーク・スカイウォーカーが生まれた。
 しかしルークは銀河皇帝とダースベイダーを討ち滅ぼし、「唯一のジェダイ」にして「唯一のライトサイド」になってしまった。そのルークが弟子を取り、修行を施せばどうあっても弟子はダークサイドになる。フォースのライト/ダークは常にバランスを取り合うものだからだ。
 ルークは錯乱してカイロ・レンを殺そうとするが、それが切っ掛けにカイロ・レンはぐれて不良グループに入ってしまう……。
 と、こんなふうに考えていた。

 最後まで謎だったのが、カイロ・レンとレイの魂が通じ合ってしまっていた理由。
「俺の母はベイダーの娘。お前の父は皇帝の息子。だが奴は知らない。俺たちはフォースの中の一対。2つで1つ。2人で皇帝を殺し、共に玉座に座ろう」
 というカイロ・レンの台詞がある。単に、あの世界観において唯一のフォースを持つ者同士になってしまった2人……というだけではなく、何かしら理由があるのだろう。属性が近いからだろうか……ともにライトとダーク両方のフォースを持つ特異体だった。しかしこの謎について、特に明言されず。「なぜか」通じ合ってしまった、という状況のまま、答えは示されなかった。
(でも、それでクライマックスシーンでやたらと格好いいライトセイバー受け渡しシーンが描かれたので、それで良しとしよう)
 ダークサイドを持つ者同士、フォースが惹かれあったのか、それともレイが並外れたフォースの持ち主だったから同じダークサイド属性のカイロ・レンを引き込んでしまったのか……。
 レイはどうやらパルパティーンの転生者だったようだが、しかしその属性はダークではなくライト寄り……。こうなったのはもしかするとカイロ・レンからライトの属性に影響を受けていたから……かもしれない。
 この辺りの謎、どうにか理屈を付けたいが、いい考えは浮かばない。

 それはさておき、レイはパルパティーンの孫であることが発覚する。レイの父親はパルパティーンの息子であったが、「平凡を望んだ」と台詞にあるように、銀河皇帝の後を継ごうとは考えていなかった。
 帝国が滅んだ後に庶民になったのか、あるいはその以前に帝国の継承者の立場から脱走したのか……これはよくわからない。とにかくもレイの両親は帝国との関わりを捨て去ろうとしていたようだ。

 お話は1時間7分。エンドア星系の月へとやってくる。相変わらず慌ただしくお話が進行している。
 エンドア星系の月には、デス・スターの残骸が残っている。パルパティーン艦隊の攻撃が始まるまで、もう時間がない……という状況。レイは1人スキマーを盗み、荒波を越えてデス・スターの中へと入っていく。
 そこでウェイファインダーを発見するが、突如現れるダークサイドに堕ちた自分自身……。赤いライトセイバーで薙刀型……この形はダースモールのもの。これは『エピソード6』のオマージュシーン。ルークも修行中、ダースベイダーの幻影と戦うシーンがあった。ジェダイは自分の恐れているものと対峙する……という幻覚を見るようだ。内面的な恐れをいかに克服するか……という英雄物語にありがちな試練の一つである。
 デス・スターにはカイロ・レンも現れて「暗黒面が俺たちの本質」という台詞が出てくる。果たしてレイはダークサイドに堕ちてしまうのか……!
 レイとカイロ・レンは戦うことになり、その最後にレイはカイロ・レンの体をライトセイバーで貫いてしまう……。レイはすぐにその傷を修復し、カイロ・レンが乗ってきたタイ・ファイターを奪って去って行ってしまう。
 ……カイロ・レンはどうやってあそこから離脱したんだろう……。
 その後、ハン・ソロの亡霊が現れ、さっきの戦いで「カイロ・レンは死んだ」と告げられる。「俺の息子は生きている」。ライトサイド、ダークサイドをずっと揺れていたカイロ・レンはここでようやく中二病を卒業し、ライトサイドに戻っていく。レイが刺し殺したのは、カイロ・レンのダークサイドの部分だったんだね。

 一方のレイは自身が闇属性に堕ちるのではないか……いや間違いなく闇属性に堕ちる未来が見えてしまい、絶望する。
 そこに現れるのがルークの亡霊。レイアもレイの正体を知っていて修行させていた……ということを教えられる。「血よりも強いものがある」とルークは諭し、レイアが持っていたライトセイバーを託させる。レイアには予言の力が備わっていて、そのライトセイバーが未来を切り拓く……と教えられる。

 カイロ・レンの乗っていたタイ・ファイター(※)にウェイファインダーを載せたままだった、ということに気付き、レイはパルパティーンのいる異次元へと向かう。
(ウェイファインダーが2対……というところも、今回のテーマ、「2対」と対応して作られた設定。ご都合主義っぽくも見えるけど)
 パルパティーンのいる場所エクセゴルだが、どこの星図にも乗っていない……と言いながらも、ラストシーンを見ると実はエンドア付近で目撃されている。ではどうして「どこにいるかわからない」という状況になっていたのか? おそらくパルパティーン艦隊のいるあの場所は、こちら側と少し次元の違うところにいたんじゃないかな。4次元だか5次元だかわからないけど。その場所へは所定のルートを通った後、ワープしないと行けないという、かなり厄介めな場所になっているので、そういうことなのだろう。実はわりと近くなのだけど、通常状態で認知できないような場所……。
 そこへ行くまで、やたらと細くて暗くて難儀な場所を通過しなくてはならないから、「宇宙の中の異界」を表現したかったのだろうと思う。異界というのは何かと細くて暗いトンネルを抜けなくては行けない……というのが神話から続く約束事だから。

※ 私、アレをずっとタイ・ファイターというのだと思ってたけど、ひょっとして違う? 正式名称はわからないです。

 とにかくもやっとレイはパルパティーンの艦隊のいるエクセゴルを突き止め、レジスタンスもそれを追っていく。
 そこにあったのは、水平線まで続く無数の艦隊。でも「ナビシステムをこの旗艦に切り替える」という台詞が出てくる。ということは、あの艦隊、全部が全部人が乗っているわけじゃなくて、一部の旗艦が指令を出してコントロールしている仕組みなんじゃないかな。普通に考えて、あれだけの艦隊、どうやってそのぶんの人材を集めたんだ……という疑問がある。作中「若者狩り」という言葉が出てくるように、あの時代の帝国は「強制徴用」によって人材をかき集めていたらしい。

 強制徴用は17世紀のイギリスでもやっていて、簡単に言えば体格の良さそうな若者を見付けて拉致して訓練させる……というもの。でもそうやって作った軍隊って士気の問題からいってただの烏合の衆になりやすいんだ。17世紀のイギリス海軍はほとんど強制徴用だったから、あまりにも弱く、当時の海賊に対処できなかったくらいだし(50%が訓練中の“しごき”で死んでいた……という話もある)。
 『スターウォーズ』世界でもその問題は顕在化していて、それが脱走したフィンやジャナといったキャラクターとして描かれている。強制徴用をやると、むしろ“訓練された脱走者・反逆者”を生みやすいんだ。17世紀イギリスの海賊も、もと海軍が多かった。強制徴用が“訓練されたならず者”を生んでしまった。
 そういう強制徴用に頼らなくてはならない……というところで、帝国の弱体化っぷりが見えてくる。
 というわけで、ラストシーンに出てくるおびただしい艦隊の大半はどうやら中に人は乗っていないらしい。極秘に作った艦隊だったから、それはもう仕方ないというか……。

 ついにレイはパルパティーンのクローンと会うことになる。
 ここでパルパティーンは「わしを殺して、皇帝を継ぐのじゃー!」ということを言う。あれ? 殺すの? じゃあ殺せばいいじゃない。……と思った人もいたようだ(そういう感想文を見かけた)。
 でも、ここでレイはパルパティーンを殺してはならない。なぜならレイはどうやらパルパティーンの転生者らしい(だから圧倒的なフォースを持っている)。しかも闇属性。ここでパルパティーンを殺したら、その魂が即座にレイに移ってしまう。パルパティーンは若い娘の体を手に入れて「やったー! 若返った! しかも美人! イエーイ!」という状態になる。
(ここのパルパティーンはあくまでもクローンなので、肉体は非常に弱い)
 このブログで何度も書いてきていることだが、「神様というのは死ぬ」。古代人は儀式の時に、老いてしまった神を殺し、その体から漏れ出た魂を掴んで、次なる若い肉体を持った依り代に移す……ということをやっていた。これは特定の部族が……というのではなく、それこそ世界中の様々な部族・民族が昔やっていた生け贄の儀式だ。
 最近、この儀式が描かれた作品というと『ヘレディタリー 継承』。あの映画みたいな感じ。別に特殊な事例ではない。
 このシーンは、パルパティーンはレイに対して、それをやれと迫っている。レイはパルパティーンの前までやってきたけど、倒せないことに気付き、詰んでしまう。

 パルパティーンはしょうがねーな……とレイとカイロ・ベンから魂を吸収。すると「お前ら繋がってたんかーい!」と気付き、闇属性のフォースを一度に手に入って一気に若返る。パルパティーンは、「じゃあ魂を吸収すればそれでいいや」と転換する。本当はレイの若々しくて美人の肉体が欲しかったんだけどね。でも2人分のフォースを吸収して元気になったから、それで子作りすればいいや、とパルパティーンは開き直る。
 一度は倒れかけたレイだが、英霊たちの声を聞き、立ち上がる。そしてレイは、充分に力を取り戻したパルパティーンの電撃攻撃を跳ね返して撃破する。レイ自身が倒すと魂を乗っ取られるが、自分の力で自滅させるぶんには問題なかったわけだ。パルパティーンが力を取り戻してくれたおかげで、自分の電撃の力が強くなり過ぎで自滅。フォースを吸収される展開には、それだけの意味はあったんだ。

 パルパティーンを倒して力尽きるレイ。そこにやってくる、カイロ・ベン。カイロ・ベンは自分にしてくれたように、レイを蘇生して、力尽きて倒れる……。これが普通。あれだけのフォースを消費しちゃうと、自分が死んじゃう。レイだけがおかしいくらいにフォースを持っていたから、治癒魔法を使いまくっても平気だったわけだ。
 回復したレイは、カイロ・ベンとキス。べろちゅー。感激して思わず……という感じみたいだけど。いらなかったなぁ……。抱き合うだけで良かったのに。

 パルパティーンの野望を打ち砕き、エピローグへ。
 レイはタトウィーンのルークが育った家へとやってくる。そこで、ルークとレイア姫のライトセイバーを砂の中に埋めて埋葬の代わりとする。
 レイは“3本目”のライトセイバーを手に取り、黄金に輝くビームを出す。黄金! あの色がライトサイドもダークサイドも超克した色……ということなのだろう。
 でもあの3本目のライトセイバーどこから……?

 最後にレイは「スカイウォーカー」の名前を継いで映画を終える。
 スカイウォーカーの名前を継いだのは、カイロ・ベンと魂で通じ合える関係になったからだね。血縁ではなく、魂で引き継ぐ者になった。血縁でいうとレイはパルパティーンの系譜だけど、魂はスカイウォーカーの系譜だから、そっちのほうを名乗るんだ……と。それはルークの「血よりも強いものがある」という台詞に関連してくる。血縁ではなく、魂のほうが重要だ……という考え方だ。
 レイはライトでもダークでもない、ゴールドのフォースを持つ唯一無二のジェダイとなり、スカイウォーカーの名前を継いだ。これで「新しいスターウォーズ」としての幕開けを作り上げた。ここまで見終えて、ちゃんと次なるシリーズへ続く橋渡しをしてくれて、ホッと一安心。『エピソード7・8・9』の3作品が過去の6部作品との関連性を終了させ、新たな時代へと刷新をテーマとしていた。それも、単に旧作の焼き直し、繰り返しのお話ではなく、ちゃんと「次なる局面へ」の橋渡しもしてくれた。いろいろあったけど、目的は達成されたわけだ(特に『~8』はいらなかった)。
 これまでの『スターウォーズ』はライトとダークの対立のお話が延々……だったわけだけど、それを乗り越えて、その両方をたった一人で手にした、レイという究極のジェダイが出現した。『スターウォーズ7・8・9』はこれまでの『スターウォーズ』を少しずつなぞりつつ別の何かをやる……というテーマだったけれど、この先は全く違う、新しいシリーズが生まれるわけだ。
 そうはいっても、これ以降は参照物がないから、創造はより大変になるだろうけど。もしも『スターウォーズ10』がぬるい前シリーズの焼き直しだったら、その時は「おいおい、何やってるんだよ」って私は言う。ここでこそ、まったく違うこと、をやるべきでしょう……って。

 その次回作たる『スターウォーズ10』の予定だが、現状を言うと、凍結されている。予定であると、2022年に「エピソード10公開」だったのだけど、その予定は無期限先送りになった。先送りにされている理由は、例のなんとかウイルスによってそもそも撮影ができない……という事情はあるのだが、ここで「はい次」と言われても拙速。ユーザーの側にとっても気持ちの整理がつかない。スターウォーズは間に何年もの隔たりがあるから、「ついに来た!」というお祭り騒ぎができるのに(オリンピックみたいなもんよ)、そんなに次から次へとやられては、ありがたみもなくなる。
 今回の新シリーズ『7・8・9』が残した課題は、きちんとした計画をまず始めに練ること。いくら何でも見切り発車が過ぎる。ディズニー社の儲け優先した挙げ句、あれだけピカピカに輝いていた伝説の映画が、新シリーズ『7・8・9』を通してすっかりくすんでしまった。もしも『7・8・9』の出来が良く、『スターウォーズ』の系譜がより輝くものになっていたのなら文句はないのだけど、現状、逆の現象は起きている。
 最終的に『スターウォーズ9』でこれまでにない展開、新しい局面を切り出したのだけど、そこまでの構成がバタバタしすぎて、肝心のシーンが伝わってない。『スターウォーズ9』の感想をAmazon Prime Videoで見た時にひろい読みしたけど、ぜんぜん伝わってないじゃーないか! ゴールドフォースの出現は結構なコペルニクス的転換なんだけど、それがインパクトになってないんだ。

 でも経緯はどうであれ、『スターウォーズ』シリーズは一旦凍結。この間の期間に、がっちりした構成を練って、本当に驚きのある次回作を作り上げて欲しい。『スターウォーズ』の伝説がより輝くような作品が出てきてくれることを期待している。


とらつぐみのnoteはすべて無料で公開しています。 しかし活動を続けていくためには皆様の支援が必要です。どうか支援をお願いします。