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甘い思い出は独り占め
家に帰ると、蘭ちゃんとスズが来ていた。
最近歩けるようになった由隆(ゆたか)が俺の方に
てちてちと迎えにくる。
「おかえり、和政。」
「大澤おかえりー」
詩織に続いて蘭ちゃんとスズも俺の方を少しだけ見る。
俺たちはなんだかんだで近所に住んでいるせいで
この二人は俺の家を
料理教室かなんかと勘違いしている。
…確かに、我が家はキッチンがやたら広い。
アイランドにしたし、あらゆるキッチン家電を
あなたがくれた透明な花束
夜遅くに鳴ったインターホンに答えると
フミくんを背負った泰睦が笑顔で手を振っていた。
男一人背負っても余裕そうなところとか
いちいち、私の気に触る。
「もうー!これ、何回目?!」
「つぐみ先輩、ごめんなさい。
フミくんの足から靴取ってあげて。」
スヤスヤ眠るフミくんの足から靴を外し、玄関にバラバラと落とした。
フミくんの赤いスニーカーが、椿みたいに落下する。
泰睦は物の多い廊下を歩き慣れ
てるてる坊主が並ぶ窓
連日、雨が降る中で
5歳になる鞠子と、3歳になる私の双子の息子、
孝義(たかよし)と旭孝(あきたか)と
淳士の子どもの真姫ちゃん(5歳)と隼也くん(2歳)の7人で
幼児向けのテレビ番組を見ながら、てるてる坊主を作る。
「皆川と一緒に、てるてる坊主を作るなんて
高校の時は想像もしなかったわ」
淳士はため息混じりで笑いながら
真姫ちゃんに色ペンを渡した。
「つーか、お前四人目お腹にいるんだってな
その線を超える機会を、もう何年も窺っていた
表彰台に上がり、頭を下げながら
花束と表彰状、ガラスの盾を受け取る彼を見て
私は顔を伏せた。
「最優秀営業契約数は
関東営業海南区3課、伊達泰睦くんです!」
ニコニコしながら手を振ると
「やすちかー!」と黄色い歓声が上がる。
「伊達くんは今年も
営業部門全賞総なめしちゃったね」
社長も嬉しそうに、ちかちゃんの手を握る。
「そうですね。
今年も妻とハワイ旅行に行こうと思います!」
ドッと
遥かに超えた未来調和
美波の入院している病院に、遥と零香と行くと
流香と、山本家族が先に来ていた。
結婚する時、バタバタ忙しそうだったのも
もう、3年前の話になる。
「あ、流香ちゃん、ともくん、さーちゃん!
こんにちはー。」
「やっほー!
だて!さくら!るか!」
零香の後に、粋がって挨拶する遥を俺は軽く小突いた。
零香はそんな遥を気にせず、流香のところに笑顔で駆け寄った。
「るかちゃんも来てたんだ!会えて嬉