マガジンのカバー画像

31
詩になんない日々はそれはそれでOK
運営しているクリエイター

記事一覧

やさしい世界

やさしい世界

空気の指揮棒を振る老人
燕尾服と蝶ネクタイ
公園の中心でタクトは振られて
退屈そうな野良猫がか細く鳴いた

あちこち穴の空いたベンチ
私はハムサンド片手に腰掛け
まだ咲かない桜に踊る毛虫を見る

哀しみ協奏曲
違う痛みが世界を鳴らす
首を傾げる男の子
擦りむいた膝頭が痛そうで
乾いたリンパ液が乾いている
いつかの涙のように
張り付いて忘れていく

共感は毒 甘くてやわらかな
毛布の毛羽立ちを疎みな

もっとみる
呼吸と繭

呼吸と繭

締め付けられる思い出の枷
ゴルゴダの丘は見えないまま
それぞれが過去を背負って歩いている

わかりにくい茨の冠
罪を図る天秤は透明で
罰を受けたがる犬のように
欲しがるがそれも与えられない

引き上げられる希望の亡骸
そこから無数の蝶が羽ばたいて
夢は蛹で毎晩生まれては消えて
想いはいつも見失われていく

礫刑の自意識は眠りを許されず
不確かな確かさは身を苛むが
赦しを願うより欲望を息絶えさせぬよ

もっとみる
長い終わりを朝が包み

長い終わりを朝が包み

辞書にない単語を探しながら夜を歩く
走ることとシャワーが嫌い
歩くことと湯船が好きで
相違点の確認は潜水艦
壊れたソナーで探り合う手と手

シャンプーハットの名前を忘れて
役割だけおぼろげにインプットされたまま
時の経過と劣化の連携
密約のように歳月の細分化
おおまかな温もりだけ隔離した

きみが好きだよと嘘だよの未来航路
好きを使わない伝え方は暗夜行路
いずれ歩むなら繋いだ手を信じてみたい
不信

もっとみる
ただれた空気

ただれた空気

ただれた空気
ただのだれた雰囲気
もたれた胃をさすりさすらう

潰瘍の概要はあらかたストレス
言うまでもないけど言っておきたい
ひとことではすまないひとごとのできごと
それくらいに受け流して

トランポリンじゃないから
浮き沈みもしないでいい

ほら押しつけの普通がやってくるよ
間抜けな海鳥のように
餌がいつでも与えられると思っている

食い物にすることで声太る自尊心
踏み躙るための革靴は
浅黒く

もっとみる
夜の半分

夜の半分

夜の半分をミキサーにかけて
魔法の成分を抽出する
季節事のイベントに限らずに
望めば毎日が記念日で
忘れる度に 思い出せることが僕たちの特権

夜の残り半分は
孤独や正体の見えない不安のテント
薄い闇に 逃げ出したくなることもあるだろう
不安から学ぶ教訓や発見
サーカスのように孤独は変化し

展開していく
どちらに転ぶかは分からないままのダイス
ミキサーが止まり 魔法が溶ける頃
ようやく眠る人もい

もっとみる
散文死

散文死

夢のような夢
諦めた熱帯魚
低音調理の羊のロースト
払うコストは写実主義
射精のコストパフォーマンス
カビて硬くなったパン
林檎を摩り下ろす朝
嗜みとしての麻
小鳥の剥製
白線の後側までお下がりください

しらけた郵便
未開封のマーマレード
方眼紙を塗りつぶすためだけの時間
カルテの電子化とルーズリーフのスキャン
マスカレードのライブアルバム
フラメンコギター弾きの老人
鳥葬の朝
超高層ビルの夜

もっとみる
素浪

素浪

I feel the sorrow 哀しみの色彩に溺れ
掴んだ藁は誰かの手
孤独を恐れながら 群がる姿に怯える
深手を負った百足のように

悶えくねらせる体と理屈
シャンプーとトリートメントを弾く憂鬱

目立ちたくないけど 目指したい
高みに昇る夢を見ては落ちる気分
重力と それ以外に縛るもの
縛られるものを感じるなら
居場所がないと思うなら作ってしまうか
さすらい続ければいい

流浪の歩みはSo

もっとみる
idol is dead

idol is dead

君は何かの間違いで
生態反応だけを頼りに生きている
宗教にも流行にも興味がない
信心の真実なんていらなくて

腹が減ったらジャンクフード
自分自身がゴミだと思っている
セックス 注射器 錠剤に対しても
罪悪感なんて感じてはいない
なぜなら劣等感がそれらを上回るから
塗りつぶされた壁に劣等感

君は流れ星を追いかけて
ロシアの針葉樹林で死にたいと言った
配給制のパンが食べられなくても
凍り付いた心臓

もっとみる
BLIND

BLIND

目は口ほどに物を言うなら
命を失った魚の瞳は何を語る
瞳ですら語りたくないから
固く目を瞑る

闇に惑う羽虫
奏でるノイズは恋の囁き
受け入れられない戯言を
折り編んだ糸は燃やされてしまう
灰は舞い上がり地に落ちて消える

人々の願いを空は聞き流して
気まぐれな雨で半端に流して
それでも断片を人は探して
それを人間の性として

動脈の色で染めた惰性の海
たどり着いた時に指先は震えていた
見せたい景

もっとみる
終わりの日

終わりの日

多感な時期を過ぎて不感になる
不安を感じず俯瞰で見る
千年の孤独は専任事項
生贄を決めるルーレットは生前から
前からでも後からでも整然と進められる
無機質な試験管の中
有機質の培養
コピーの羊と遺伝子の船

真似する鸚鵡と並べるガイコツ
廃棄物と漂流物
心は洗われないが身体は削がれたしゃれこうべ
首を垂れるも当該は頭蓋のみ

不惑も先延ばしの迷える羊
棺の中まで頓馬なマトン
馬と鹿のみでない鳥獣戯

もっとみる
孤独な筺の中で

孤独な筺の中で

愛情はまた人を殺す
退場はほら理由になる
細胞がした悪戯は拗れて
螺旋は結びついて首を絞める

MUDER IN APPLE
錯乱しながら柘榴に齧り付いて
繚乱の毒の華縋りついて

プログラムされた排他的思考に
あなたを守るための蠱毒を
生き延びた最後の感情を筺の中へ

ただ愛を知らないために
ただあなたを殺さないために
勘違いの感情を頑丈に締めた鎖で
諦めた
諦めたんだ

壁打ち際のスーサイド

壁打ち際のスーサイド

壁打ちの呪詛はピンボール
不幸になりたくて吐いてる訳じゃない
暗転曇天の反転攻勢
光が見えたら幻覚だろ

ローカロリーを不味い不味いと
生まれたら死ぬくらいの当たり前を
愚図愚図喚くなら救命信号
黄色のままで迷ってろ

意味に意義はない
君に異議はあるがそれは却下
結果論の備忘録
閉じて寝ろ

ことばはいつも

ことばはいつも

指先も声も
いつも必ず届かない
あらかじめ決められているかのように

猫の髭を撫でるように
しなやかな髪にふれてみたかった
損得も忖度も可能性など考えずに

いつも置き去りで
それなら最初から見せないで
期待は待機したまま腐っていった

繰り返し綴られることばはいつも
宙に浮かんで落ちて消える
みえない波紋が それでも起きるのなら
それでいいと そう思うんだ

願いはいつもかなわない
ことばはいつ

もっとみる
never forever

never forever

昨日が追いかけてきて
明日が逃げていく
思想が強めの死相が出た男
偽装された約束を売り歩く

太陽を紫に
血の色を青く
コンフィグは続く
札束から数字に置き換えながら

安定剤は不安定に脈をくすぐり
新聞は何も包み込みはしない
いまだ届かぬ明るい知らせは
闇の中で子猫の様に眠ったままだ

Never ever forever
死に絶えた恐竜の足跡の様に
無粋な人工物に隠されていくよ
真実なんてあり

もっとみる