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【読書】 打ち込んだことは無駄じゃない! ~ 民宿ひなた屋 山本甲士 ~

積読していた本が無くなったので、清水ミッチャンの新刊を買いに近所の本屋さんへ出掛けました。

新刊はすぐに見つかり、もう1冊何か買おうと思った時。

いつも同じ作家さんの本を選んでしまうので、今回は書店員さんのオススメPOPのある本を読んでみようと思い、一番熱心な感じでオススメされていたこちらの本を買ってみました。


物語は41歳の古場粘児が実家のある佐賀に帰省したところから始まります。

粘児の実家は「なべしま市」という、特に何があるというでもない土地の民宿「ひなた屋」であり、地元の調理師専門学校で調理師免許を取得したにも関わらず、大好きな釣りで仕事をしたくて若い時に実家を飛び出していました。

つい最近までテレビに出演するような釣り師でリポーターでライターをするまでの、その筋では有名な釣り師でした。ですが、その釣りの方法で釣りメーカーから干され、連載していた釣り雑誌2冊が廃刊の憂き目となり、悲しいかな無職になってしまいます。

そんな粘児は引きこもりで中2の女の子・希実がいるバツイチ女性の知希と結婚を前提にお付き合いしており、どうにか定職に就きたい。そして思い付いたのは「実家の民宿を継ぐこと」。

そんな思いを胸に実家に帰省しますが、思わせぶりに母に話したところ「釣りでやっていくはずだったんだろう」と、けんもほろろな返事。そして父は病のため入院中。

軽い気持ちで就職口も結婚も手に入れるつもりが、急に八方塞がりとなってしまいお先真っ暗。

そんな時に高校時代の釣り仲間である今は地元の地方公務員である大串から、市の嘱託職員を募集していると聞きます。簡単な試験で楽勝のはずが、これまた高校時代の因縁の同級生も試験を受けており、その真剣な試験に対する姿勢に敢え無く敗退。。

さてどうしたものかと途方に暮れていると、知希が腰痛により入院することになったと連絡が入ります。軽い気持ちで希実を佐賀で預かるよ、と話をします。来ると思っていないから。すると後日、希実が「佐賀へ行く」と話しているとのことで、さらに重荷が増えてしまいます。

そんな中、民宿の経営は先細り傾向であり、市内中心部にあるホテルにお客さんが流れていることも分かり、そのために民宿を継がせる訳に行かない親心があると知ります。

その最中で希実がやって来ます。

知希との結婚に向けて仲良くしたい粘児ですが、希実が距離を置き、上手く接することが出来ません。

そんな二人がある日、ひょんなことから釣りに出掛けます。

初めて釣りをして、魚を釣り上げた希実に初めて笑顔が浮かびました。

釣った魚を何となく民宿で鍋にしてみたところ、物凄く美味しい。

しかも、魚の原価はタダで地元産!

これをきっかけに気持ちの距離が近づいた希実と、民宿の再建に向けて快進撃が始まります!


物凄く端折ってざっくりしたストーリー紹介ですが、実際に読むと、ほぼ一気読みに近いワクワク感。

理想だけで生きているように見える粘児が実は同級生たちから一目置かれていたり、希実の思いがけない才能や「持っている」天賦の引き寄せ力。

粘児の誠実な人柄により、自然と協力してくれる人間が集まり、何も無いと思っていた故郷が実は大いに魅力のある土地であり・・と、徐々に民宿と粘児の人生も建て直されて行く様が魅力的です。

地方都市、元釣り師、そして民宿が舞台であるため、田舎の自然の豊かさや釣りをする際の丁々発止、それはそれは美味しそうな料理の描写がたまりません。


読書タイムは大抵、公共機関の移動中や待ち合わせの時間位でしたが、久しぶりに楽しくて自分の部屋で読書タイムを取りました。

どうもこの「ひなた」はシリーズ化しているようなので、刊行されている本はまた手に取ってみようと思います。

ついつい同じ傾向の本を選んでしまいがちでしたが、物凄く素敵な本と出会えました。

好きな作家さんの新刊はこれからも読んで行こうと思いますが、書店員さんのオススメ本も手に取って行こうと思います。


粘児もですが、希美も引きこもりであり、粘児の両親も民宿の経営の傾き、ライバルのホテルも内実は厳しいそろばん勘定で、地元自体も伸びしろを見出せず、挫折を感じて自信を無くしている状態です。

ですが、ここから個々の持ち味を気づかせてくれる出来事があり、ライバル関係だった相手と再び争うことを選ばず共闘の形を取り、協力関係を築いてお互いの良さを認め、みんなで楽しんで頑張っていけるように進んで行きます。

自分も転職が多く、現在起業した会社がそれなりに軌道に乗るまでは、様々な出来事がありました。とても共感を覚えるシーンが発生する度に、登場人物を応援する気持ちを強く持ちました。

そして、過去に大好きで頑張って来たことや経験は未来で何かに繋がっている、必ず役に立つ、誠実な姿勢は誰かが見てくれていて見守ってくれていたり、応援してくれる、そんな希望を見せてくれる素敵な本でした!


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