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世界を変えるのはいつも「新人」だが、大人たちが応援するのは「世界を変えない若者」

「古い世代の人たちに世界を変える力はない。世界を変えるのは、いつも『新人』なのだ」
 トーマス・クーン『科学革命の構造』による結論です。
 なかなか変わらない世の中…狭い世界で言えば町内会や職場、広く言えば政治や国々…ITイノベーションなどによる大きな変化がある一方、変わって欲しいのに変わらないものは多々あります。

 自分がこのフレーズに出会ったのは、原著ではなく、瀧本哲史『ミライの授業』(講談社2016)における引用からです。

 今回は、「なぜ、世の中なかなか変わらないのか」について、瀧本哲史『ミライの授業』を引用して考えてみます。

1 世の中が「天動説」から「地動説」に変わるのに百年単位!?

 顕著な例は、コペルニクスの「地動説」です。天文学に詳しくない自分でも、地動説の理屈はなんとなくわかります。が、コペルニクスの時代16世紀ごろまではそうでなかったのは有名な話です。
 
 コペルニクスの時代、天文学には絶対的な教科書、紀元前2世紀古代ローマの天文学者プトレマイオスが記した『アルマゲスト』がありました。今見ればでたらめなのですが、天動説を数学的に説明し、1000年以上に渡って支持されていたそうです。
 
 コペルニクスは30年かけて詳細なデータを集め、地動説を整理しましたが、すぐには発表しなかったそうです。
 問題は数学的な面だけでなかったのが、その理由の1つとされています。聖書の中に「神が大地の土台をいつまでも動かないように置いた」という話があったほど、「神」の存在と密接だったようで、天動説をひっくり返す地動説は、当時では神に逆らうような行為だったようです。そのため、発表をためらっていたコペルニクスは、地動説をまとめた著書『天体の回転について』の出版前にこの世を去っています。

 そして出版されたら…当時の学者を始め、多くの人は地動説が発表されても多くの人は受け入れず、無視され続けたそうです。
 その後、ヨハネス・ケプラー、ガリレオ・ガリレイらに受け継がれ、17世紀に地動説は完成しました。特に、ガリレオは「ガリレオ裁判」でご存じの通り、命の危険にさらされながら地動説を説いています。それくらい、世の中には受け入れられていなかったのです。この時点で100年近い年月が経っています。
 しかししかし、ローマ教皇庁やカトリック教会、つまり天動説を強く押し、地動説論者に圧力をかけていた人々が正式に地動説の正しさを認めたのは…なんと1992年のことだそうです。日本でいえば平成、今から30年前です。

 驚異的とすら思いますが、なぜでしょう。

2 世界を変えるのは、いつも「新人」

 
 瀧本氏は以下の様に紹介しています。

 コペルニクスの地動説は、彼の死後1世紀あまり、ほとんど賛同者を得られなかった。(中略)それでは、こうした世界をひっくり返すような新説は、いつ、どのタイミングで、どのようにして受け入れられていくのか?
 彼(トーマス・クーン)の結論は「世代交代」です。
 つまり、天動説を信じる古い世代の大人たちは、どれだけたしかな新事実を突きつけても、一生変わらない。なにがあっても自説を曲げようとしない。地動説が世のなかの「常識」になるのは、古い世代の大人たちが年老いてこの世を去り、あたらしい世代が時代の中心に立ったときなのだ。「世代交代」だけが世のなかを変えるのだ。……と、そんなふうに言うわけです。
 そして古いパラダイムが、あたらしいパラダイムに移り変わる(パラダイム・シフト)のためには、「世代交代」が必要である。古い世代の人たちに世界を変える力はない。世界を変えるのは、いつも「新人」なのだ。

瀧本哲史『ミライの授業』(講談社2016)

 つまり、世の中が変わるのは、世代交代によって人間が入れ替わるから、ということです。

 これは、例えば為政者のように、権力のあるポジションにいる人たちにどれだけ訴えても変わらない現状は当然で、なぜなら「古い人」たちは変わることは無いからです。
 

3 大人たちが応援するのは「世界を変えない若者」だけ

 
 コペルニクスの例からパラダイム・シフトの話題に加え、書籍の末にはこのような記述もされています。

 みなさんが世界を変えようとするとき、自分の夢をかなえようとするとき、周囲の大人たちが応援してくれると思ったら大間違いです。大人たちが応援するのは、自分の地位を脅かさない若者だけ。つまり、「世界を変えない若者」だけです。大人たちからすれば、みなさんの手で世界を変えられることは、大迷惑なのです。
 「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」
 これは一生をかけて問い続けてもかまわない、大きなテーマです。
 逆風が吹き荒れても、周囲の大人たちがこぞって反対しても、怒られ、笑われ、バカにされても、そこでくじけてはいけません。あなただけの「ミライ」は、逆風の向こうに待っているのです。

瀧本哲史『ミライの授業』(講談社2016)

 つまり、「古い人」たちは自分たちの考えを変えない、変えようとする人間も受け入れない、だからその人たちがいるうちはいつまでも変わらない、ということが言えます。

4 若者だった自分、大人になっていく自分

  
 上の世代は、良い方向に変えている気はしない。いや、正確にはしようとしている人もいるのだが、それでも変わらないのは、やはり大勢的には前述のようなメカニズムが働いているからだと考えられます。

 さらに、そこから派生して…もしそういった人たちがリーダー等を選ぶ場合、近い志向の人が選ばれるので、世代が変わっても再生産されてしまう危険性があります。
 つまり、年長者が上に立ちやすい組織の場合、本人たちも変わらなければ、変わらない再生産が促進されやすいといえます。

 よってチャンスは人が変わるとき!虎視眈々と仮面をかぶり、バッと取って…などとできればいいのかもしれませんが、そんなクレバーかつ意思をもった人材がどれくらいいるのかといった話になります。

 
 この書籍を読み、上記のようなことを考えながら大きな納得感を得ると同時に、若者ではなくなってきた自分に目を向けました。

 
 自分も組織の中でそこそこのポジションになりました…比較的物言うキャラクターで通ってはいますが、それでも叶わなくなったことが多々あるように感じます。

 しかし、もっと怖いのは、自分が「古い人」になって、次の世代の芽を摘んでいないか、という危機感です。よりよい未来を叶えられずにいる自分が、未来をよりよくする可能性をつぶしているとすれば、滑稽極まりません。

 少なくとも、「古い人」にならないよう研鑽し続ける必要を感じた今日この頃でした。


最後までお読みいただきありがとうございました☆


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