『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』

担当編集者が語る!注目翻訳書 第13回
1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365
著:デイヴィッド・S・キダー、ノア・D・オッペンハイム 訳:小林朋則
文響社 2018年4月出版

“アメリカ人の基礎知識”がわかる

本書は、アメリカではシリーズ全5作で100万部を超えているベストセラーシリーズの第1作目の翻訳本です。(月)歴史・(火)文学・(水)芸術・(木)科学・(金)音楽・(土)哲学・(日)宗教と、曜日ごとに分野が決められ、毎日1ページずつ分野に合った教養を高める知識が紹介されています。
チンギス・ハンやアレクサンドロス大王など高校の世界史の授業で習うような内容が多く含まれ、「どこかで聞いたことがあるけれどよく知らなかった、あるいは忘れてしまったこと」について、改めて学びなおすことができます。それだけでなく、特に宗教や哲学、音楽分野においては、初めて目にする言葉にも多く出合うかと思います。アメリカで常識とされる内容が、日本人にとってなじみのないことであることが驚きでもあり、この本の面白さでもあるのです。日本にいると想像しにくいアメリカ人の文化背景がわかることが、この本を読む一番のメリットでしょう。
特に宗教の項目ではキリスト教の聖書の有名なエピソード、善きサマリア人やマグダラのマリアなどが紹介されており、映画や文学など、キリスト教の考えを知ってより深く楽しめる作品が増えるかと思います。
ちなみに日本に関する紹介は、歴史における「ミッドウェー海戦」、「マンハッタン計画」、芸術における「葛飾北斎」、宗教における「神道」。このテーマが選ばれたことを考えると、「アメリカから見た日本」がどのようなイメージなのかわかります。

「1日1ページ」という面白さと制約

最初にこの原書と出合ったとき、1日1ページずつ異なるテーマについて読むという構成がとても面白いと思いました。日めくりカレンダーのように1日1ページずつめくって、少しずつ読んでいくという読書スタイルだったら、普段長い本を読まない人でも手に取りやすいのではないか。多くの人にとって、本を身近に感じる最初の一冊になるかもしれないという希望を感じたのです。
そんな本の特徴である「1日1ページずつ読む」という作りは、この本の面白さでもありますが、編集する側としては制約を感じるところでもありました。1日1ページ、1年分となるとページ数が多くて分厚く、価格が高くなる。しかも1年間毎日読むなら、だれかに借りるのではなく自分で買わなければいけない。そこで編集段階から、「読者が自分の家のリビングや寝室に置いておいて、1日1ページずつ読むシーン」を明確に想像していました。
分厚くて価格が高い本でも、「自分のために買いたい」と思ってもらえるような魅力的な本にするためには、装丁デザイナーの力が不可欠です。そこで、装丁家として多くのベストセラーを手掛けられてきた石間淳さんのお力をお借りし、品格ある顔の本に仕上げていただきました。結果的に、文響社の他の本に比べると、ネットよりもリアル書店で買われる割合が多く、書店で実物を見て買ってもらえたことは嬉しく思っています。

「みんなで楽しめる本」だからこそベストセラーとなった

刊行前は、仕事や子育てなどひと仕事を終え人生に余裕ができた方が、自身の教養を磨くために買う、また外国人と仕事をするビジネスパーソンが相手の文化を理解するために買うことを想像していましたが、蓋を開けてみれば幅広い年代の方に読んでいただいたことに驚きました。40代の読者が多いのは予想通りでしたが、それと同じくらい20代の読者も多かったのです。Twitterでは、とある若手起業家の方がつぶやいたこの投稿が14000リツイートを超えるなど、大きな話題にもなりました。

また、読者からは「夫婦で1ページずつ読んでいる」「家族みんなで読んでいる」「子どもと一緒に読んでいる」あるいは「トイレに置いて読んでいる」という声もあり、年代に関係なく楽しめる本になったようです。「普段本を読まないけれど、1日1ページなら読めると思った」という声もあり、いわゆる「読書家」以外の方にも手に取ってもらえたと感じています。
この本は、刊行から5カ月の時点で26万部とベストセラーとなっています。年代や性別、読書好きかどうかなどにかかわらず読まれている様子を見て、このくらい垣根なく読まれる本がベストセラーになるのだなと実感しています。

翻訳書専門の編集者でないからできること

実は「1日1ページ、読むだけで身につく」というタイトルの言葉は、編集段階ではタイトルではなく、本の帯コピーとして使おうかと考えていました。ですが、社内で「タイトルで1日1ページ読む本ということがわかったほうがいい」という意見をもらい、考え直してこのようなタイトルをつけました。読者の方からは「言葉が安っぽい気がする」「原書タイトルと離れている」などのご意見も拝見し、「確かにそうだよな……」と思う部分もあるのですが、結果として「普段本を読まない人」にもわかりやすく届いたことを考えると、このタイトルにして正解だったと思います。

さて、文響社は翻訳書がメインの版元ではないですし、私自身、日本の著者の本の経験のほうが断然多く、翻訳書を手掛けたのは今回の本で4冊目になります。開き直ると、「翻訳書専門の編集者ではない」私だからこそできたやわらかい編集があったのかもしれません。また文響社には「すべての人の『現実』に、夢と希望を与えるエンターテインメントを」というキャッチコピーがあり、読者を選ばずなるべく「すべての人」に届く本であることに意味があると思っています。この本によって翻訳書を読むハードル、ひいては読書のハードルを少しでも下げてもらえたら本望です。

執筆者:野本有莉(株式会社文響社 編集者)


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