【SLAM DUNK GI】172話「翔陽の1年生」
インターハイ広島大会、神奈川県代表の湘北高校は王者、山王工業を破るというジャイアントキリングをおこし、
海南大付属は準優勝というインパクトのある結果を残した。
長年、海南との2強と言われた強豪校、そして湘北に足をすくわれた翔陽高校の夏は、ハードなトレーニングを課していた。
「俺たちの夏は終わったんだ。関係ない。」藤真
「ああ。とは言ったものの、神奈川の躍進、俺たちに立ちはだかることは関係ないとは言えないな。」花形
「俺たちが上がるためには、変化が必要だ。」藤真
「・・・その髭は止めておけ。女性ファンが減るぞ。」花形
「それこそ、関係ない。」藤真
選手兼監督、主将でもある藤真健司と副主将の花形透。
藤真がコートにいないとなればフロアリーダーを担う翔陽のキープレイヤーである。3年が全員残った翔陽は夏を終え、ウインターカップへ準備を進めていた。
強豪校として名の知られる翔陽の部員数は多く3軍まで抱えていた。ある日の練習後、
「まずチームのレベルとしてギアを一つ上げるために、藤真。お前のスタメンは不可欠だ。」花形
「そうだな。悔しいが海南、湘北、陵南の試合は見てきたからな。データは取れている。同じ轍は踏まない。俺もそのつもりだ。」藤真
「監督がいなくても、コート上の監督になるか?でも藤真の負担を減らすためにも、チームの共通認識、連携、意識を共有し、阿吽の呼吸で動けるように積み上げが必要だな。」花形
帰宅の準備をしている二人だったが、コートに響くボールをつく音が聞こえてくることに気付く。
「体育館? もう誰もいなかったよな?」藤真
「ああ。確認したが誰もいない。よく聞け。この方向は格技棟からだ。」花形
「格技棟? が確かにバスケットボールの音だ。行ってみるか。」藤真
二人は、格技棟へ足を運んだ。そこには一人黙々と自主練をこなす選手がいた。
「3軍の1年か?」藤真
「!?!? あっ 藤真さん!? いや 監督!? すみません。無断で使用してしまい。」
「監督なんて言わなくていい。お前と同じ選手でもある。」藤真
「いつもここで、自主練を?」花形
「ええ。まぁ。」
「先輩、翔陽は背が高くなければ1軍になれないのですか?」
「自分は162㎝ですが、こんな選手は眼中にないですか?」
「!?!? そんなルールはない。」藤真
「しかし、今年の翔陽は高さが武器であることも事実だ。」花形
桜木花道のようにすぐに頭に血がのぼりがちな1年生もいれば、そうではないものもいる。
翔陽の1年生は、冷静だった。
「藤真さんも自分も2つしか変わらない高校生です。監督も選手も完璧にこなして、体は1つしかない。3軍には目を届いていないなんて不満は言いません。しかしこの場をお借りして不満ではなく意見を言ってもいいですか?」
「ああ。翔陽の為になることなら歓迎だ。」藤真
インターハイ神奈川予選の湘北戦を引き合いに話す。
「流れが翔陽にある時に、難易度が高いボックスワンにシフトする必要はあったのですか?結果、そこから崩れた。」
「・・・・」花形
「一志は三井をおさえていた。一志は三井に固執していた。一方、俺は一志の努力、能力を認めていた。お互いの感情が先に出てしまった結果だ。お前の言うことは最もだ。俺の責任だ。」藤真
「では、どうすればいい? ここからが本題だ。」藤真
「俺たち、翔陽のために。」花形
「流川のところを手を加える必要があったかと。点が取られるのは仕方ないにせよ、そこをシューターにして加点できれば、、、、。藤真さんをフォワードにあげて、3ポイントのある伊藤さんをPGに戻してもよかったかと。」
「なるほどな。いい答えだ。ストロングポイントである高さ、インサイドが停滞した時にアウトサイドに広げるためにシューターという戦力はほしいところだ。」藤真
「藤真さんも3ポイント打てますよね。」
「無論だ。では誰がPGに?」花形
「お前に、そのギアを上げることができるのか?」藤真
「見てもらえるのですか?」
藤真は、主将として、監督として、選手として、様々な立場を配慮したうえで発言した。
「今日ここで、たまたま話したからと言って、明日から1軍の練習に参加することを許すことは出来ない。しかし戦力の発掘が必要なことも事実だしチャンスの芽を潰すこと等、許されない。翔陽のチームのためなら歓迎するべきだ。」藤真
「俺たちは翔陽なんだ。」花形
「・・・・」
「必ず、もう一度、ここにくる。それまでしっかりと準備しておけよ。」藤真
「出来るか?」藤真
「はい。」
「名前を聞いておこう。」花形
「こんだけ部員が多い。普通の苗字で忘れられたらたまんないですから、コートネームとして覚えておいて下さい!」
「大維(ダイ)です!!」
「ダイか。」藤真
「覚えておこう。」花形
続
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