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日本の美意識

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日本の美意識、余白、に関して調べるために読んだ本
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記事一覧

日本の美意識~『風姿花伝』より~

なんで珠光は侘び茶を思いついたのだろう、と思って、世阿弥の美意識に影響された説があったので、世阿弥の「風姿花伝」の美意識の部分を拾い読みした。芸や美について、観客視点で説明してあり、色あせずわかりやすかった。

芸能とは、人のこころを和らげて、感動を呼びおこすもの。とか。

花(=美)とは、珍しいなあ、面白いなあ、と思うこと。それは四季折々の草木の花が咲いて散りゆくのに感動するのと同じこと。とか。

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日本の美意識 ~小泉八雲『日本の心』より~

”日本の絵は万事非個人的で暗示的である。”
"Everything in a Japanese drawing is impersonal and suggestive."

”日本の画家が提示するのは、一般的な類型であって、わずらわしい細部をごてごてと描き出すことはない。それでいてより大いなる法則をこのように完全に究め尽くしているので細部の暗示は見事というほかない。”
"Observe that

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日本の美意識 ~長谷川等伯「松林図屏風」より~

余白の美は、長谷川等伯の松林図、と暗記した気がする。等伯は南宋の牧谿の画に影響受けたらしいので、牧谿画の受容が室町時代だから、余白の美は桃山時代に意識化された美意識なのかな。

長谷川等伯「松林図屏風」

長谷川等伯が私淑した、南宋時代の牧谿の水墨画は、室町時代に茶掛けとして人気だったらしい。好んで日本に輸入された理由は、独特な霧の中のような表現が好まれたとか、死後中国での評価が下がったので輸入し

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日本の美意識 ~珠光『心の文』より~

”この道の一大事は和漢のさかいをまぎらかす事、肝要〱、ようじんあるべき事なり。また当時、ひゑかるゝと申して、初心の人体がびぜん物・しがらき物などをもちて、人も許さぬたけくらむ事、言語道断なり。かるゝと云う事は、よき道具をもち、そのあぢわひをよくしりて、心の下地によりてたけくらみて後までひへやせてこそ面白くあるべきなり・・・。”

「心の文」茶人珠光から古市澄胤へ書き送ったもの。
「冷える」「かれる

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日本の美意識~高階秀爾『日本人にとって美しさとは何か』より~

以下「日本人にとって美しさとは何か」(高階秀爾著、2015年、精興社)より引用

クロード・モネ
"作品の源泉をどうしても知りたいというのなら、その一つとして、昔の日本人たちと結びつけてほしい。彼らの稀に見る洗練された趣味は、いつも私を魅了してきた。影によって存在を、部分によって全体を暗示するその美学は、私の意にかなった。”(p68)

フランスの評論家エルネスト・シェスノー
"日本美術は三つの基

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日本の美意識~対談:司馬遼太郎×ドナルド・キーン『日本人と日本文化』より~

以下、『日本人と日本文化』(著者:司馬遼太郎/ドナルド・キーン、1984年、中央公論社)より引用

"キーン 
日本人はいつも何が日本的であるかということについて心配する。昔からそうだったようです。・・・(中略)・・・現在でも日本人は、日本的なものはどういう形で残るか、日本的なものは全部滅びるんじゃないかという心配を抱いているようですが、日本国民というものが残るかぎり、何らかの形で日本的な特徴はあ

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日本の美意識 ~世阿弥『花鏡』より~

舞台上での余白の美を言語化したのは、世阿弥なのだろう。動作と動作の間(隙)がよいのだと。"見所の批判にいはく、「せぬところが面白き」などいふことあり。”『花鏡』

『世阿弥芸術論集』(校注者:田中裕、平成30年、新潮社)より以下引用

" 見所の批判にいはく、「せぬところが面白き」などいふことあり。これは、為手の秘するところの安心なり。
 まづ二曲をはじめとして、立ちはたらき・物まねの色々、ことご

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日本の美意識 ~散らし書き~

紙面上では、平安時代中頃の三色紙の和歌の散らし書きが、余白の美の源流なのかなあ。

「継色紙(つぎしきし)」(伝小野道風)・「寸松庵色紙(すんしょうあんしきし)」(伝紀貫之)・「升色紙(ますしきし)」(伝藤原行成)は三色紙とよばれ、平安時代中頃(11世紀後半頃)の名筆。
万葉集や古今和歌集など和歌を、散らし書きにしたもの。

「継色紙」
『万葉集』『古今和歌集』等の古歌を集めた未詳私撰集の写本断簡

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余白の美の源流

長谷川等伯「松林図屛風」

 漆塗り教室で「歴史的に見ると、中国の螺鈿は余白がなく貝が貼られているけど、日本の螺鈿は余白があり、黒く鏡面のように仕上げられる部分も美しいのです。」と話していたら、「日本の余白の美っていつからですか?」と質問を受けた。

「いつからだろう?」と即答できず、うーん、と考えてみた。
そして、余白の美は、安土桃山時代の長谷川等伯の松林図、と日本史で暗記した気がする、と思い出

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『日本人とは何か。』山本七平より

『日本人とは何か。』(著者:山本七平、祥伝社、平成18年)より抜粋

"日本人は「かな」をつくり「かな」が日本文化をつくった。この意味で日本を考える場合、「かなの創造」は、忘れることのできない画期的事件、「かなの創造」がそれ以後の日本に与えた影響は計り知れない。"(p79)