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イギリスとの比較:日本の「若さの呪縛」について


2022年9月より、ロンドン芸術大学のセントラルセントマーチンズにてMA Graphic Communication Designを勉強している大学院生のSです。

日本には、若い=価値があるという若さへの呪縛が強く根付いていることに気づいた。

・青春に美しさを見出す広告

・若さを取り戻すことを押し出した化粧品

・歳を取ったら「卒業」という程でクビになるアイドル

・1-2年すると看板番組から異動させられる若くて可愛いアナウンサー(男性アナウンサーはずっと同じなのに)

それらをこれまで当たり前に見てきたけど、一時帰国をしてなんだかモヤモヤするようになった。

私の今いるイギリスでは、学割の広告は目にするけど、「青春」や「若さ」を押し出されている場面をあまり見ない気がする。(私がもう30手前で若者のターゲットから外れているからかもしれないけど。)

若者に人気の街 Shoredtich にて

もちろんTikTokなどからトレンドが生まれて流行ったりすることもあるが、日本ほど大人たちがそれに影響されている印象もない。

年をとったせいで歌手の一部メンバーが引退させられるようなおかしな話もないし、女性アナウンサーはとても知的でかっこいい。(ちなみに、BBC の気象アナウンサーは、親しみやすさのある60代の女性)

どちらかというと、若者=未熟で不安定さがあり、大人になればなるほど、安定して成熟している印象がある。

インスタ映えスポットも日本ほど盛り上がりはない


もちろん、日本の部活文化や、学生たちの礼儀正しさ、ひたむきさといった圧倒的に何かに「一生懸命」になっている姿は胸を打つものがあり、美しく感じる。

だけど、それを引きずったままいると、年を取る=魅力的ではなくなる、といったネガティブな方程式を生み出していることにも気づいた。

ヨーロッパ出身の私のパートナーは、年上の女性の方が魅了的と感じるようで、最初それを知った時は「熟女好きなのかな…?」とちょっと戸惑ったりしたけど(笑)、むしろフランスなどはその考え方の方がマジョリティのよう。

どちらかというと、ヨーロッパでは若い子が好き=小児性愛者なのでは、という懸念を生んでしまうのだと知った。

ヨーロッパで日本的なアイドルがあまり流行らないのは、彼女たちのコンセプトが幼さや無垢さを押し出しているがゆえに、もしファンだとしても周りから「あいつ、ロリコンなのでは?」と思われてしまうからなのかもしれない。

もちろん年下の彼女がいるカップルもいるが、ハンガリー出身の彼女は20代前半で私よりも若いのにとてもしっかりしていて、1人の大人の女性としての魅力に溢れている。日本のように、幼さや若さをアピールしている様子は全くない。

少なくとも私のパートナーは、「年をとって太ったり、シワが増えていく=人生の経験の豊かさを表している」という考えのため、それを美しいと見出してくれる発言にびっくりしたと同時に、ふと、安心している自分がいた。

年数を重ねるほど価値の上がるイギリスの建造物
に対する考え方と同じなのかもしれない


そこで安心した、ということは自分自身こそ「若さの呪縛」に囚われていたことにハッとさせられた。

大人の方が魅力的だと信じていたにも関わらず、いつの間にか自分に長年染み付いていた日本的思考を恐ろしく感じた。

今では、その価値観を気づかせてくれたパートナーに非常に感謝している。

こうした価値観を持って発言してくれるだけで、救われる女性(女性に限らずだが)がどれだけいるだろうと思った。

妻と子供もいる大学の学長のパネル
みんな自由でいいのだ


現に私はパートナーの言葉を聞いて安心したし、「この人と将来を過ごすのが楽しみだな」と思えている。

特に日本の女性は、若さを維持することを重要視している気がするし、日本の男性もそれを求めることが自然になっている気がする。もちろん個人の価値観なので否定はしないが、私は海外の異なる価値観を知ってとても救われたので、これだけは声を大にして言いたい。

私たち人間は、若いだけが私たちの価値ではない。
むしろ人は年を重ねてこそ、成熟していく。

ぜひ、知性や経験をたくさん積んで、人間として魅力的な大人になっていきたいな、と思った。

どんな大人になれるだろう
フランスにて