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BLUE HEARTS

「あのなぁ,Jelly,勝負ていうのはな,自分が負けを認めたら負ける…ってことは,負けを認めてなかったら,勝ちはなくても負けではない.わかる?」

キツネの目をしたマイキー君が風呂上がりに言った.背中には毘沙門天の刺青があった.

この毘沙門天はこの世界で1番美しいのかもしれない…

5月だった.
数人のオトコ達の中から突然声をかけられた,
「久しぶりだなJelly!」
誰が声をかけてきたか探した…
ニヒルな笑みを浮かべたマイキー君がソコにいた.
その景色は中学の渡り廊下ではじめて会った時と変わらなかった.
「元気そうだな」
何年振りに話したか,なんていうことはわからなかった.
博多弁というより,すこし地元色の強い博多弁で会話をした.
「今度飯喰いにいこーぜ」と言われて
「行きましょう」
と言って別れたのは憶えている.
マイキー君は白いセダンの高級車に乗って
「じぁあな」
と言って笑いながら去っていた.

それから,頻繁に会うようになった.
よく遊びに誘ってくれた.
何故かウマが合った.
マイキー君のBROのアルバレス君と3人でよく遊んだ.
2人とも兄貴みたいな存在になった.
いろんな所作を教えてくれた.
マイキー君達は人に対しては善悪の判断は関係なしに最後まで付き合う強さがあった.
厳しさもあった,とくに仕事は徹底していた.
2人とも口が堅かった.
一貫した強さがあった.

こうなれたらいいな…
そうおもった.

いつだったか,夜の高速を走らせている時…
一緒に仕事をしないか?と誘われた.

断った.
オレは中途半端だったかもしれない…

本物の不良になりきれなかった.

「組織に入らなくても,オレの使い方あるでしょう,オレには無理ですよ.そういう生き方」

「おい,勘違いしやんなよ.オレはオマエを使いたいわけじゃない.一緒に笑える景色がみたいだけ.わかる?」

「わかります.オレはオレ達だけが笑える世界があれば,ソレだけでいいです」

世界の答えなんてみつからなかった…
正しさなんてクソみたいなものだった…
法律はオレ達の法律でしかなかった…

何故かマイキー君は笑って

「わかったよ」

と言った.

「いつか,なんてわかんないですけど…」

言葉は最後まで,なかった…
ただそう答えた.

マイキー君は白いセダンの高級車のハンドルを握ってそのままクルマを走らせていた.

オレ達は,目の前の闇をただ黙って眺めていた…

上質のスピーカーからは

ブルーハーツの終わらない歌が流れていた…



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