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【詩】雲 2023年11月20日作

私はこの世に生を享けて
あたたかな春の日差しの中を駆け回った
私の顔には影の入り込む隙間もなく
屈託のない日々が続いた
草原に寝転がって、ただ青い空を眺めた
雲が流れていく

私は世界の複雑さを知り
木陰で一人本を読み
青い空を見ていた
雲が流れていく

暗闇の中に投げ込まれた私は
必死に光を探した
私は長い長い放浪の末
自分に戻ってきた
私は夜空に光る一番星になった
朝が来た
雲が流れていく

私は異国の地の
空漠とした砂漠にいた
愛への飢えと同情への渇き、そして私を追う終わりのない砂嵐。
私は逃げた。私は走った。
砂嵐はまだ私を追っていた
私は逃避するのを辞めた
長い時が流れた
私は砂嵐をくぐり抜けていた
雲が流れていく

私は眩い光の中に放り出された
あまり明るいので
まやかしの光すら光と信じ込んだ
四月のうららかな陽光の中
心を動かして、懐かしい日々をおもいながら
眼前に広がる真っ白な平面に目を向けた
雲は、変わらず流れていく

雲が流れていく。
雲が、流れていく。

長い路のはずれに来て
この年老いた女は漸く後ろを振り返る
黄金色に光り輝く夕日に照らされて、
ゆっくりと目を閉じる
夕焼け雲が流れていく。
夜の帳が下りるのにしたがって、それらは
山の麓に吸い込まれていく。

朝が来た。
また新しい命の誕生とともに、
山の向こうから雲がやってきた。
深い深い青空の下を、少しずつ、少しずつ、動いてゆく。

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