”The Long Goodbye“ の世界 【イラストエッセイ】
♠
これまでの人生で読んだ数多の小説の中で、《文体》においてレイモンド・チャンドラーほど僕に深く突き刺さったものはない。
とりわけ彼の最高傑作『ロング・グッドバイ』に至っては英語版、清水俊二訳、村上春樹訳を取り混ぜて何度繰り返して読んだことだろう。
ストーリーにおいても一行ごとの表現においても、これほど緊張感と驚きに満ちた小説にお目にかかったことがない。
チャンドラーを前にしてはドストエフスキーでさえ真っ青であり、日本の小説に至ってはもはや「子どもの作文」である。