こしあんつぶあん。

読んでいただき、ありがとうございます。 その時、思いつくままに書き散らしています。

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記事一覧

マヌルネコと子パンダ。

「何だ、また来たのか」 「うんっ」 獣舎の向こうとあちら側。 マヌルネコは、めんどくさそうに子パンダを見た。 「だって、ぼく、マヌルネコさんの事、好きだもん」 「た…

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水道筋商店街と王子動物園と2度目の献花。

タンタンがまだ生きている頃、ゆめちゃんのファンという方が声を掛けて下さいました。どしゃぶり雨の中、ショップで買ったぬいぐるみを見て「濡れますよ」と。弱ってる心にじわっと沁みました。あれきりの縁でしたが、声を掛けてくれて、ありがとうございました。

最近困っているのが、サントラ盤があまり出回ってない事。
配信されてなかったり、サントラそのものが発売されてない事がほぼ。なので、気になった音楽が出た時、非常に困る。その時はSNS頼りですが、中々これも見つからない。音から情報を得てる者としては、何かと苦労します。

三人だけの時間。

「Uちゃん、行こか」 縮れ毛の飼育員が声を掛けた。 「ん・・・」 「もう・・・おらへんのですね」 グッと詰まった声だけが出た。 そして、鼻水をすする音。 2人は、それぞれ顔…

きいろとタイヤとフライパンと。

きいろ。 それはね、飼育員さん達がいつもしてくれた 大好きなブラシ。 背中をすーいすーいと、なぞってくれるの。 とっても気持ちがいいのよ。 もっとやって。 ちがうわ、…

淡河の翁。

あるところに、淡河の翁と呼ばれる人達がいます。 翁達は3人。交替で山に入っていきます。 そう、白黒のあの子のための、タケノコや笹を取りに行くのです。 翁達は、あの子…

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桜の咲く頃に。

はずかしがりやのあのこ。

笹がたくさん敷かれたお気に入りのベッドの上で、 タンタンは眠っている。 すぅすぅと吐息をたてて。 夢をみているのかな? あのね、 お庭でウトウトした時の事なんだけど…

いつか、かならず。

雨がしとしとと続く水曜日。 どの獣舎にも、満遍なく雨水が沁みていく。 冷たい雨だ。 もうすぐ、桜の季節になる。 園内の桜の花が咲く。 そして、人も動物たちも、待ちわ…

おかあちゃまに会いに。

「ヤダヤダ!おかあちゃまに会いたい!!」 薄闇の中で子パンダは、泣きながらコウコウに訴えていた。 「おかあちゃまはね、病気なんだよ」 「おとうちゃまは、おかあちゃ…

王子のお山のかみさま。

神戸は山と海に囲まれた街です。 そして、王子動物園のうしろには、山が控えています。 大きな山ではありませんが、そこに住む人びと達を見守っています。 『今日はどうだ…

またね。

「ねぇ、タンちゃんって中国から来たのよね」 「そうよ」 タンタンとしろくまのみゆきが、それぞれ好物のタケノコとさつまいもをかじりながら、日の当たる園庭で会話をして…

だいじょうぶ、ここにいるよ。

コウコウ、わたし、おばあちゃんなのよ? あなたといっしょに神戸に来たのは5歳の時でしょ?今、28歳。 歳も取るわよね。ちまたでは、おばあちゃんパンダなんて言われちゃ…

KagamiとAsami

「ただいま、戻りました~」 外出先から帰ってきた滝明久が、「ああ~寒かった」と羽織っていたコートを脱ぐ。 「あれっ、浅見さん、もう帰ったんですか?」 「まぁね」 デ…

雨が近いのか、目が覚めた瞬間から頭が痛い。こんなに晴れてるのに低気圧を感じ取っている。普段でも雨が降る3日前からは感じてるけれど、台風はたまごの時から感じているので、1週間前ぐらいから体調が激ワルである。この才能を生かしたいんですけど。的中率高いよ?ウェザー○ュースさん。

マヌルネコと子パンダ。

マヌルネコと子パンダ。

「何だ、また来たのか」
「うんっ」
獣舎の向こうとあちら側。
マヌルネコは、めんどくさそうに子パンダを見た。
「だって、ぼく、マヌルネコさんの事、好きだもん」
「たべちゃうぞ」
「そんなことないもーん」
黒い丸い目が、ぴかぴか光る。
かわってんな、コイツ。
会う度に同じ事を思ってしまう。
それでも、ウザいとか思わなかった。
「で、今日は何が聞きたいんだ?」
ポーンと岩場から降り、遠巻きにウロウロす

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タンタンがまだ生きている頃、ゆめちゃんのファンという方が声を掛けて下さいました。どしゃぶり雨の中、ショップで買ったぬいぐるみを見て「濡れますよ」と。弱ってる心にじわっと沁みました。あれきりの縁でしたが、声を掛けてくれて、ありがとうございました。

最近困っているのが、サントラ盤があまり出回ってない事。
配信されてなかったり、サントラそのものが発売されてない事がほぼ。なので、気になった音楽が出た時、非常に困る。その時はSNS頼りですが、中々これも見つからない。音から情報を得てる者としては、何かと苦労します。

三人だけの時間。

三人だけの時間。

「Uちゃん、行こか」
縮れ毛の飼育員が声を掛けた。
「ん・・・」
「もう・・・おらへんのですね」
グッと詰まった声だけが出た。
そして、鼻水をすする音。
2人は、それぞれ顔を見せなかった。
泣き顔を見られたくなった。

空っぽになった部屋。
最期に敷かれてたマットもなくなり、
掃除も済んで、ここに本当にあの子がいたんかと
思うぐらい何もなくなった。

エイプリルフールや。
現実見てるのに、そう思い

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きいろとタイヤとフライパンと。

きいろとタイヤとフライパンと。

きいろ。
それはね、飼育員さん達がいつもしてくれた
大好きなブラシ。
背中をすーいすーいと、なぞってくれるの。
とっても気持ちがいいのよ。
もっとやって。
ちがうわ、ここよ。って言うでしょ?
ハイハイって言いながら、ブラッシングしてくれるの。
うふっ、わがまま出ちゃうんだもん。ごめんね。

タイヤ。
それはね、おもちゃにしたり、クッションにしたり
時には噛んだり、爪でひっかいたり、いろんな事に使っ

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淡河の翁。

淡河の翁。

あるところに、淡河の翁と呼ばれる人達がいます。
翁達は3人。交替で山に入っていきます。
そう、白黒のあの子のための、タケノコや笹を取りに行くのです。
翁達は、あの子がおいしそうにたべる姿を思いながら、
ガサガサと竹林を分け入り、新鮮で歯ごたえのある
竹を探します。
「ふぅ、いいのんあれへんなぁ」
汗をかきかき、翁の一人は奥へ奥へと入っていきます。
「ホンマ、あの子は食べ物にうるそうて、気に入らへん

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はずかしがりやのあのこ。

はずかしがりやのあのこ。

笹がたくさん敷かれたお気に入りのベッドの上で、
タンタンは眠っている。
すぅすぅと吐息をたてて。
夢をみているのかな?

あのね、
お庭でウトウトした時の事なんだけど、気配を感じたの。
そう、子パンダの。
じっと、こっちを見てるの。そして、首を少しかしげるの。
「どうしたの?」って聞いても、何にも答えてくれない。
びっくりして、逃げていっちゃうのよ、あの子。
あなたは、だぁれ?

祝祭の日。
母子

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いつか、かならず。

いつか、かならず。

雨がしとしとと続く水曜日。
どの獣舎にも、満遍なく雨水が沁みていく。
冷たい雨だ。
もうすぐ、桜の季節になる。
園内の桜の花が咲く。
そして、人も動物たちも、待ちわびた春の日を堪能する。
誰しもが、いつものその日が来ると疑っていなかった矢先だった。

「固形物を食べへんようになったんです」
タンタンを担当する2人の飼育員のうちのひとりが、獣医にそう告げた。
「いつものジュースだけは飲んでくれてるん

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おかあちゃまに会いに。

おかあちゃまに会いに。

「ヤダヤダ!おかあちゃまに会いたい!!」
薄闇の中で子パンダは、泣きながらコウコウに訴えていた。
「おかあちゃまはね、病気なんだよ」
「おとうちゃまは、おかあちゃまのこと、心配だからって
会いにいったじゃない!!どうして、ぼくはダメなの?!」
丸く黒い目から、涙がぽろぽろとこぼれる。
「そ、それは・・・」
コウコウは言葉に詰まった。
やっと生まれたのに、短い時間しかいれなかった母と子。
それでも、

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王子のお山のかみさま。

王子のお山のかみさま。

神戸は山と海に囲まれた街です。
そして、王子動物園のうしろには、山が控えています。
大きな山ではありませんが、そこに住む人びと達を見守っています。
『今日はどうだい?』
『寒くないかい?』
『急がなくても大丈夫だよ』
人びとには聞こえない声で、語りかけています。
そして、動物園に住む動物たちも。
『おはよう』
園舎から出ていた象に、山のかみさまは挨拶をします。
『おはよう、山のかみさま』
返事をす

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またね。

またね。

「ねぇ、タンちゃんって中国から来たのよね」
「そうよ」
タンタンとしろくまのみゆきが、それぞれ好物のタケノコとさつまいもをかじりながら、日の当たる園庭で会話をしている。
「いいわねー、私は動物園生まれの動物園育ちだから、うらやましい」
小鳥のさえずる声が、空いっぱいに響き渡る。
「でも、わたしだって、ここに来たのは5歳の時よ?」
「そうだったわね」
みゆきは、次のさつまいもを手に取って、ムシャムシ

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だいじょうぶ、ここにいるよ。

だいじょうぶ、ここにいるよ。

コウコウ、わたし、おばあちゃんなのよ?
あなたといっしょに神戸に来たのは5歳の時でしょ?今、28歳。
歳も取るわよね。ちまたでは、おばあちゃんパンダなんて言われちゃってるのよ?
やぁね、レディに、おばあちゃんだなんて。
子供達がいなくなっちゃって、あなたもいなくなっちゃって、
ひとりぼっちになっちゃったけれど、
私の事を見に来てくれるお客さんや子供達、
飼育員さん達が、いつもいてくれてたから、さび

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KagamiとAsami

KagamiとAsami

「ただいま、戻りました~」
外出先から帰ってきた滝明久が、「ああ~寒かった」と羽織っていたコートを脱ぐ。
「あれっ、浅見さん、もう帰ったんですか?」
「まぁね」
データ入力をしながら、船縁由美は答える。
キーを叩く音がカチカチと響く。
「最近、退勤するの早いですよね。前は、みんなで飲みに行ったりしてたのに。浅見さん、オーバーアルコールになっちゃうから、こっちが大変だったけど」
「あの頃はね」
「え

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雨が近いのか、目が覚めた瞬間から頭が痛い。こんなに晴れてるのに低気圧を感じ取っている。普段でも雨が降る3日前からは感じてるけれど、台風はたまごの時から感じているので、1週間前ぐらいから体調が激ワルである。この才能を生かしたいんですけど。的中率高いよ?ウェザー○ュースさん。