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地域の課題を連携して組織的に解決するか? それに対するムチャな回答。

例えば高齢者ひとり世帯の増加にともなって、そのような人々が賃貸住宅を借りることができない(大家さん=貸し手が死後の遺品整理や引受人の保証を求めるため)という問題がある。このような地域の課題を連携して組織的に解決するにはどうしたらいいのか?

ふかくさの答え:当事者・医療従事者・行政担当者・NPO・不動産業者・地権者などを関係者を全員同じdiscordサーバにぶちこむ。

ここで、discordというのは一例であり、TeamsやSlackのようなビジネスチャットでも話は同じである。とにかく同じオンラインのチャットサービスに全員をぶち込んで担当者同士で直接テキストチャットを交(かわ)させるということである。

この回答の欠点:実現不可能である。

なぜ実現不可能なのか?

  1.  関係者全員がテキストチャットが可能な環境とスキル(例えばタッチタイピングなど)を持っているとは限らないから。そしてそのようなスキルが無い人こそが言わば本当に困っている人でもあるから。

  2.  誰がサーバ全体=地域全体・自治体全体の意思決定をおこなうかが不明瞭であるから。なぜならば、従来の行政組織であればタテ割りに指揮系統が整備されているが、このようなタテ割り以外のヨコのコミュニケーション(〝お声がけ〟〝見守り〟)に対するインセンティブがなく、また、最終的に一人の当事者(受益者)に対してベストとなるようなサービスのパッケージを提供するようなケースワーキングをするための意思決定者が不足するからである(もし当事者や当事者の後見人または保護者がそのような意思決定能力があれば最もよいが、そうではない事例が増えている)。

  3. 自治体の規模にもよるが、仮に関係者全員がテキストチャットの経験とスキルに精通していたとしても、情報が膨大過ぎて適切な人とつながることができないだろうから。

確かにdiscordやTeamsの同じチャットシステムに全員をぶち込むというのはまったくもって乱暴なやり方でありバカげている。私自身も含めて、誰もそれを本気にしないだろうし、非難すらしないだろう。なぜならば、仮にそのようなことがまかり間違って実施されたとしても、上記の理由もあいまって、誰も使わない廃墟になることが目に見えているからである。

このような問題について、研究者や現場で活動しているNPOの方の声をきくと、地域として自治体として「連携」することが必要なのだという。例えば地域住民の高齢者の課題であれば「地域包括支援センター」や「ケアマネージャー」など私のような素人が思いつく限りのこと、予算内で実施できる限りのこと、担当者の気持ちの余裕が許す限りのことをそれぞれの現場で精一杯実施されているのではないかと思う。

そのなかで「連携」とは具体的にどういうことなのか? というと、自分が直接所属していない組織や人物に対して「お声がけ」してアプローチしていくということになるだろう。しかし、所属組織や所属家族を超えた「お声がけ」というのは行政にとっても支援NPOにとっても、もちろん当事者や当事者家族にとってもハードルの高い作業なのである。なぜならば、この「お声がけ」というのはまったくルール化や制度化されていないシロモノであり、また、「お声がけ」というのはもちろんむやみやたらにすればいいものではなく、門前払いを食らってションボリすることもあれば、個人的な時間や人事評価を損するばかりで終わる可能性もある(所属組織にとっては成果が保証されたものではないため)。したがって、自助としての「連携」=お声がけアプローチは関係する諸個人にとって極めて大きな負担となるにも関わらず、実際は声高にアピールせざるを得ない方法となってしまっている。

別の言い方をすると、現代日本における人間同士のつながりの課題において「お声がけ」によるリエゾン、あるいはネットワーキングの役割は物流におけるラストワンマイル問題のように価値が少しずつ上昇しているということでもある。例えば今は生成AIやドローンが話題であるが、ドローンは配達物を直接庭先まで届けてくれることはあっても「お声がけ」まではしてくれない。すなわち、「ちょっと今いいですか?」「最近どうですか?」といった何気ない一言をかけて様子を見守ることはしてくれないのである。また、一部のファミレスで見かけるようになった配膳ロボットも、お料理をテーブルのすぐそばまで運んではくれるものの、やはり同じように「こちらのメニューもどうですか?」とか「こちらもおすすめですよ」といったお声がけをしてはくれないのである。

いずれはテクノロジーが発展して同じdiscordサーバに全員をぶち込むといった乱暴なやり方ではなく、全自動でのお声がけ&見守りサービスがIoTやスマートナノマシンの身体実装(体調や認知状態のリモート検知)などによって実現する可能性があるし、そのときは世界的に莫大なビジネスチャンスが生まれるものと思われるが、これはさすがにまだ10年以上先ではないか、と素人ながらに思っている。

(2,068字、2024.04.21)

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