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【おすすめ本】アドリブ劇での騙し合い!吹奏楽部を舞台にした青春ミステリー!『退出ゲーム』初野晴

息抜きに最適な、ミステリー初心者にもおすすめの小説を紹介します。

本書の紹介

初野晴の第61回日本推理作家協会賞(短編部門)候補となった「退出ゲーム」です。「ハルチカ」というタイトルで2016年にテレビアニメ化され、2017年に橋本環奈主演で映画化もしています。(映画はミステリー要素排除されてますが。。。)

穂村チカ、高校一年生、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみで同じく吹奏楽部のホルン奏者、完璧な外見と明晰な頭脳の持ち主。音楽教師・草壁信二郎先生の指導のもと、廃部の危機を回避すべく日々練習に励むチカとハルタだったが、変わり者の先輩や同級生のせいで、校内の難事件に次々と遭遇するはめに―。化学部から盗まれた劇薬の行方を追う「結晶泥棒」、六面全部が白いルービックキューブの謎に迫る「クロスキューブ」、演劇部と吹奏学部の即興劇対決「退出ゲーム」など、高校生ならではの謎と解決が冴える、爽やかな青春ミステリの決定版。

コンクールを目指す吹奏楽部の青春ミステリー

高校の吹奏楽部のメンバーが主役となる連作短編小説です。

実在する「吹奏楽の甲子園」と呼ばれる普門館のコンクールの出場を目指す主人公たちの学生生活を描く青春小説にもなっています。

殺人や誘拐など刑事事件ではなく、いわゆる日常のナゾが中心ですが、「亡くなった弟が残した真っ白なルービックキューブの謎」や「老人の語った存在しない色の謎」といった、ちょっと変わったエピソードが多いです。

キャラが個性的で、マンガ的な展開やセリフも多いのですが、ストーリーは結構センシティブな内容(戦争体験、人種差別、家庭問題など)に関わるものが多く、コメディとシリアスがよいバランスで成り立っています。

ミッションは舞台からの脱出、相手を出し抜け!

表題作の「退出ゲーム」ですが、これは本編の中で登場する、吹奏楽部と演劇部が対決するアドリブ劇となります。※なぜこんな勝負をする事になったかは後述します。

その名の通り、それぞれの代表者が参加し、舞台から自然な形で退出する(させる)事が出来れば勝ちという勝負となります。

1つ目の勝負内容は『恩師の送別会にて、恩師の最後の挨拶前に退出する』という内容です。

簡単に見えますが(実際に作中の主人公もそう思ったのですが)、実はかなりクセモノで、例えば「病気っぽいから医務室に行ってくる」と主人公が退出しようとすると「恩師の友人のお医者さんが来てるから見てもらいな」と演劇部が止めに入ります。

今度は「母親が交通事故にあったので病院に行く」と退出しようとすると、「先ほど電話があって交通事故は間違いだったらしいよ」とまたしても演劇部の妨害に合います。

退出する理由が自然かどうかは見ている観客が判断する「言ったもの勝ちのアドリブバトル」。如何に相手を出し抜く事が出来るかという知略戦が始まります。

時効まで15分、潜伏先から相手を退出させろ!

後半戦は更に難易度が上がり「時効15分前のニセ札グループとなり、潜伏先から相手を退出させる」というお題になります。

全くもって退出するメリットが無い中で相手を退出させなければいけないので、1回戦目以上に一筋縄ではいきません。

しかし、膠着しているように見える状況の中、主人公の仕掛けより事態が一変します。これが、ミステリーではお馴染みの叙述トリックを使っており、更にこのエピソードの根幹に関わる部分とも絡んでおり、勝負の決着がエピソードの決着に繋がる展開となっており大変面白かったです。

仲間が増えていく様がワンピースのようで面白い

そもそも何故、吹奏楽部と演劇部がこんな妙な勝負をしているのかというと、実はこれ、演劇部に所属しているサックスの名手を吹奏楽部に引き込む為にメンバーを賭けて勝負をしていたのです。

このように、このシリーズでは全編を通して、人数の少ない吹奏楽部に有能なメンバーを引き込む為にナゾに挑むという展開が散りばめられています。

前回は話の中心にいたゲストキャラクターが、次回には主要メンバーに加わっているという展開は、まるでワンピースで仲間集めをしている展開のようで心が躍ります。

実際、「退出ゲーム」で仲間に加わるマレン・セイも、次回以降から頼りがいのある仲間になり、個人的にもお気に入りのキャラになります。

ちょっと特殊なミステリーである表題作「退出ゲーム」がおすすめですが、それ以外も趣向を凝らした設定のミステリーが多く、軽く読める作風ですので、学業や仕事の合間の息抜きにも読める作品ですので是非手に取ってみてください!

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