ブランドとは”偏り”である

■「ブランドは最適化されてはいけない」という気づき

Minimalを運営していてとても苦い失敗の思い出があります。

それはあるパッケージをつくった時の事です。

パッケージはある程度のロッド(数千から数万の単位)で発注をしないと単価が折り合わないもので、小さなクラフトブランドにとってオリジナルでパッケージを作るのは本当に大変です。

小ロッドで作るとパッケージ代がとんでもないことになります。原価を抑えるためには数千の単位で発注をすることが最低条件です。

そのため、ある程度標準的な仕様で、無難なデザインで使いまわしがきくパッケージを作ったことがありました。それを大量に発注してコストを抑える事ができたので作った時は利益率を見て満足していました。

しかし、このパッケージの商品は結果として予想の半分も売れませんでした

それどころか常連の方々から忘れられない言葉を頂きました。

「まるで百貨店で売られているようなパッケージですね。Minimalどうしたんですか。正直がっかりです」


この言葉を恐らく一生忘れないと思います(笑)

ブランドが少しずつ大きくなるにつれて、お客さんの層が広くなり、運営上の固定費も上がってきて、なんとか利益や売上を確保しようという事に意識の比重が大きくなっていた時期の出来事でした。


ある意味で効率や採算を度外視して自分たちのこだわりを優先していた偏りやエッジが価値になっていたという事を気付かず、最適化しようとした結果でした。


名もないブランドが立ち上がる時は強烈な偏りやエッジがあり、そこに一部のお客さんが共感して頂く事でブランドがよちよち歩きでも成り立っていくという事を痛感した経験でした。

ブランドは最適化されてはいけないし、安易に最適化しようとしていけないと実感しました。


■”偏り”がブランドを創る

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ワインは数千年の歴史をもち、文化として定着しています。
その中でフランス産のワインは圧倒的なブランドを確立しています。

歴史を紐解くとワインはフランス以外のヨーロッパ各地に広まっています。その中でなぜフランスが圧倒的にブランドを確立できたのでしょうか。

それはフランスが国を挙げて法律でワインの品質を厳しく管理したことが大きいと思います。

俗に「AOC法(原産地統制呼称法)」と呼ばれるものです。

この法律で、使用可能なぶどう品種や最低アルコール度数、ぶどうの栽培・選定方法や収穫量、ワインの醸造方法や熟成条件まで、産地ごとのルールを細かく定めたのです。

これを冷静に見ると、かなり偏っており、頭がおかしいと思います(笑)。内容を知れば知るほど「そこまでやる必要あるの?」と呆れてしまいます。

しかし、フランスワイン愛好家は世界中にいて、しかも多くが熱狂的なファンです。そして、彼らは喜んでめんどくさいそのルールを覚え、フランスワインを楽しんでいます。

国を挙げてある意味偏ったやり方で厳しくワインというモノを楽しむ作法を統制したことで伝統と文化が培われて圧倒的なブランドが確立されたのです。

最初は偏っている思える事が徹底されていき、そこを愛するお客さんが増える事でそれがブランドのアイデンティティとして確立されていくのです。

■「チョコレートのためのカカオ豆」ではなく、「カカオ豆を表現する手段としてのチョコレート」

Minimalを立ち上げて4年間を振り返ると、完全に私たちは口コミで成り立っているブランドです。

当然メディアに出る事で新規のお客さんが来てもらっていますが、来店客を分類するとリピート率が高く、新規のお客さんはリピーターのお客さんが口コミで連れてきて頂いています。

お客さんになぜMinimalに通って頂けるのかを聞くと面白い回答が返ってきます。

「ザクザクした食感が癖になる」

「ボンボンショコラが好きだったが、Minimal食べてから、ボンボンが重たすぎて食べられなくなった」「元々甘いものは苦手であまり食べなかったけど、Minimalはすっきりしているので好き」

「Bean to Bar を色々食べたけど、Minimalが一番香りが強くて良い」

「デザインがシンプルで潔さがあり、他のブランドにはないから気に入っている」「板チョコの形のデザインが独特でとてもおしゃれだと思う」

と、とても嬉しくありがたいコメントですが、この意見はあくまでMinimalを好きでいてくださる方のごく一部のニッチな意見であるという事も事実です。これこそがMinimalがブランドとして4年間存続できた理由であり、ブランドとしての偏りなんだと思います。

お菓子会社やオーセンティックな高級ショコラブランド、そしてMinimal以外のBean to Bar ブランドも含めて、普通チョコレートブランドは「美味しいチョコレートをつくるために良質なカカオ豆を仕入れます」。


あくまでチョコレートが主でカカオ豆は美味しいチョコレートをつくるための手段という関係性です。

しかし、Minimalはその主従が逆で「チョコレートはカカオ豆の個性を表現するための手段である」と考えているのです。


■”偏り”がブランドの個性を創り、個性がファンを創る

カカオ豆を主とする偏りが、様々な差別化を生んでいます。

① 滑らかさよりもザクザク
まずチョコレートの食感です。普通チョコレートはくちどけの滑らかさが重視されますが、Minimalのチョコレートはカカオ豆が粗挽きでザクザクしています。カカオ豆本来の食感を楽しんで頂きたいという思想と、カカオ豆自体の香りを強く残すことを意図しています。

② 油分よりも軽さ
普通チョコレートはカカオバターを追油したり、ミルクを入れたりして油分のリッチさを重視しますが、Minimalはカカオ豆とお砂糖のみで造っており、さらにはカカオ豆が粗挽きである事が多いため、カカオバターの溶け出しも少なく余韻のスッキリ感が軽さが際立っています。

③ 甘味よりも香り
Minimalはチョコレートで一般的にイメージされる味わいの甘味よりも、カカオ豆本来の香り高さを重視しています。そのため、一つ一つのカカオ豆を11項目10段階に細かく分類し、その複雑な香りを残すための製法を研究しています。またパッケージも密封パックにこだわり香りを逃がさない設計にしています。

④ 高級よりもミニマル
パッケージやデザインもシンプルにミニマルにしており、オーセンティックブランドの高級感やお菓子のかわいさを重視したパッケージとは真逆のトーンのデザインとなっています。


このようにカカオ豆という素材をシンプルに表現することに括っているため、かなり偏りがあり、従来のチョコレートブランドと並ぶと全く異質な存在として際立ちます。

上記にあるお客さんの声は、まさにこの特徴に対して興味や共感をして頂いているのだと思います。

偏りがブランドのオリジナリティになり、個性になるのです。

そして、その個性を愛してくれるお客さんがいる時にブランドは初めて成り立ちます。

つまり、ブランドとしての(偏りからくる)個性が際立っており、その一貫性がプロダクトとその世界観をわかりやすくしているので、その個性にファンがつくのだと思います。


■未来を拡張させる”偏り”

偏りは個性を創り、ファンを創ってくれますが、この偏りというモノは同時に恐ろしいモノだと日々実感します。

偏りに対して共感をしてくれるお客さんがいない場合は、それはただのブランド側の自己満足に終わり、ニッチなモノとして市場原理の中で淘汰されていきます。

ブランドの持っている偏りがニッチなモノとして終わっていくのか、それが新しい市場を創ったり、ブランドを大きくしていくような未来を拡張させる偏りのどちらであるかあるかは大きな違いがあります。

未来を拡張していく事ができれば、ブランドが大きく成長してやがてそれが新しい市場を創造したり、フランスワインのように文化として定着していく可能性をも秘めています。


■狂気的にこだわり続けることに以外に近道はない

では、ブランドの偏りやこだわりを未来を拡張させる偏りに育てていくには何が必要なのでしょうか。

正直正解はわかりませんが、Minimalの4年間経験からつくづく思うのは、何も近道はなく、地道に共感者を拡げていく事ではないかと言うことです。

まずブランドのファンを1人創る事が本当に重要であると思います。

そしてそのファンから広げて次は10人ファンを、次は100人のファンを創っていく事です。

ブランドファンを1人創れればその先に広がっていく可能性があります。

そのためには自分たちのこだわりである偏りに対して絶対に妥協しない事だと思います。

中途半端にではなく、全エネルギーをそこに集中して、狂気的にこだわり続ける事ができた時のみにそこにファンがついていくのだと思います。

それはMinimalで言えば「カカオ豆の個性豊かな香りや味わいの表現に徹底的にこだわる」という事です。


■1/3119のこだわり**

カカオ豆からチョコレートを造ったレシピを数えてみたら数えられるものだけで1年間に3119回レシピを造っていました。

これは1日に10回程度レシピを変更したり、調整しているという事です。

自分たちの事ですが、冷静に見るとやり過ぎな気がするほどです。

少し頭がおかしいのではないかと思えるくらいこだわる事で初めてお客さんに少しだけ自分たちがやりたい事が伝わるという実感値があります。

逆に言えばそこまでやっても伝わるかどうかはわからないくらいのモノという事です。

ブランドが本当に愛されて残り、未来を拡張するという事がどれだけ難しく、どれだけの熱量がいるかという事をこの4年間を通して嫌と言うほど思い知らされてきました。

狂気的な活動を積み重ね行く事が本当に大事であるとこの4年間で学びました。

これは正直しんどいことしかないですが(笑)、それでも「Minimalに出会って本当によかった」と言って頂ける瞬間、お客さんの嬉しそうな笑顔が見える瞬間が病みつきになってしまいます。

Minimalの偏りから来るこだわりが世の中に受け入れられるかはまだまだわかりませんが、少なくとも自分たちの括りやこだわりに対して妥協せずにモノづくりやブランド創りを努力することはできると思います。

ブランドの偏りが自己満足ではなく、本当に未来を拡張させるものである事はブランド経営の実経験を通して証明していきたいと思います。

究極は「モノ言わぬモノにモノを言わせるモノづくり」を体現するチョコレートを造れる事です。

道はまだまだ長いが、少なくとも4年間そこに妥協はなかったと言えます。Minimalのプロダクトが共感するに足るのかは、ぜひこのバレンタインやホワイトデーの機会にチョコレートを食べて頂けると嬉しいです。

超個人的ですが、一つ商品を選べと言えば、
「Minimal Works : Flavor 2019」です。

これ間違いないです。今の僕たちの全力です。



※Minimalのバレンタイン商品

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Minimalのこだわりのモノづくり




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