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月またぎレビュー「6月→7月」

アジア、文化(映像)人類学、論理学、人工知能(とアンドロイド)など、くしくも最近の関心が凝縮された月になったように思います。なんか地味な関心ですみません。。。しかしこれらも明確な関心というわけではないんですね。まだよくわからない。話聞いたり、映像見たりしていても、明確な理解として頭に入ってこない。ただその「わからなさ」が、今のぼくの関心を刺激しているのだと思います。
その点でいうと、舞台ではマームとジプシーあげたんですが、山縣太一×大谷能生による「海底で履く靴には紐が無い」は、この「よくわからなさ」に凄みがあってむしろ印象に残りました。


【アート】
「MAMリサーチ001:グレイト・クレセント 1960年代のアートとアジテーション――日本、韓国、台湾」 @森美術館
こちらの関連イベントに参加してきました。
まずは1960年代に東京を中心に活動したゼロ次元の記録映像と映画「いなばの白うさぎ」を上映。合わせて、戦後日本前衛美術研究家の黒ダライ児氏のレクチャーと、ゼロ次元をリードした加藤好弘氏のアジテーションを拝聴。
また、今回のリサーチで注目する1960年代の反芸術パフォーマンスが、各地域(日本、韓国、台湾)ではどのような政治的、社会的背景から生まれて来たのかを比較検証するパネルディスカッションを聞く。
共通の登壇者である黒ダライ児黒田雷児)氏は戦後日本前衛美術研究家としてだけではなく、福岡アジア美術館のキュレーターとして、アジアの現代美術動向にも深く目を向けている方なので、これからも機会があればお話を伺っていきたいと思います。
アジアの現代アートへの考察を試みるMAMリサーチ。第一弾は7/5(日)に終了してしまいますが、第二弾はフィリピン現代アートをテーマとしています。継続していくプロジェクトとして注目していきたいと思っています。

大谷臣史「Mexican Train」  @G/P gallery
ふらりと立ち寄った写真展なのですが、モチーフの選び方、フレーミング、色、また組にして1枚に収める構成など、直感的にいいなと思いました。海外(オランダかな?)で写真集も出していますが、写真はモノクロで収録されていて、色がいいなと思っただけにちょっと残念。7/8(水)まで。


【映画】
ハント・ザ・ワールド
 @シアター・イメージ・フォーラム
ハーバード大学感覚民族誌学ラボから送り出された独創的なドキュメンタリー4本を見るシリーズ。「モンタナ 最後のカウボーイ」「ニューヨークジャンクヤード」「マナカマナ 雲上の巡礼」「リヴァイアサン」はどれもその特別さを語るのが難しいんですが、不思議と目が離せない映像体験でした。
特にリヴァイアサンは2度目だったんですが、やはり圧倒的。写真集化、BD化、爆音上映などへの実現の動きがあれば、全力で支援したいと思います。
渋谷シアター・イメージ・フォーラムでのプログラムは7/17(金)まで。(リヴァイアサンは7/3(金)で終了してしまいました。。。)


【テレビ】
「ロンリのちから

緒川たまきのクールビューティーを愛でる、、、もとい論理的思考を養うための高校講座から新シリーズが始まりました。ドラマ仕立てでいろいろな命題にたいしてロールプレイを重ねていくこのシリーズ。今回は舞台が映像部に代わり演劇部になっています。監修は論理学に関する著書を多数執筆している野矢茂樹さんと本格的。番組最後の不思議の国のアリスを舞台とするパートも健在。
映像部の前シリーズも並行して放映中です。


【ライブ・舞台】
「cocoon 憧れも、 初戀も、爆撃も、死も。」 マームとジプシー
2013年初演、第二次世界大戦末期の沖縄戦の中の少女たちを描いた今日マチ子さんの『cocoon』を原作とする演劇作品、再演です。結構演出が変わっていたらしいのですが、どこが変わってたのかがわかるほど初演を覚えておらず。。。ただ今回は、飴屋法水さんが幽霊のような(?)不思議な役どころで出演していました。ともあれ時間と空間と感情が複雑に絡み合い、それらを束ねる演出が見事な名作。一見の価値ありです。
前売りは完売だと思いますが、当日券は出るはず。7/12(日)まで。


【本】
『アイデア 2015年07月号 思想とデザイン』
見事にハレーションを起こしている表紙が目印の『アイデア』最新号は「思想とデザイン」の特集です。
1960年代のマーシャル・マクルーハンから2010年代の思想家・東浩紀による「ゲンロン」まで、思想がどのような媒体で、どのような流通を経て、どのように読者に届いてきたのかが、時代を追ってまとめられています。思想それ自体と、その思想が読者に届く過程が相互に反映していることが見えてきておもしろく、さらに思想「誌」のマトリクスや年表などからも、思想「史」を視覚的に俯瞰できるのが、デザインの専門誌ならでは。
tumblerに少し続きがあります。

『人工知能は人間を超えるか』 松尾 豊
以前の記事
で「アンドロイドのいる社会というのが、そろそろ現実に想像できるようになってきた」と書いたように、アンドロイドについては、ひとかたならぬ関心があります。そこで彼らの「中身」の部分も気になり読み始めました。この本では、最近よく耳にする「シンギュラリティ」という思考実験のような話よりは、むしろ人工知能に何ができて何ができないのか、そしてそれをどのように進化させていく道があるのか、という実際的な言及について読むことができます。
たくさんある類書の中からこの本を選んだ理由は、表紙のカバーが、アンドロイド映画屈指の名作「イヴの時間」だということだったりします。

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