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「ルパン三世」って、オワコンなのか?

先日、「ルパン三世vsキャッツアイ」というのを見た。
率直にいって、結構酷かったなぁ。
内容は、キャッツアイ3姉妹の父親が実はルパンの恩人であり、その義理もあってルパンが3姉妹を助けるために体を張って悪人たちと戦う、といった感じ。
もうね、ルパンが普通に正義の味方みたいなヒーローになってるのよ。
もはや「ダークヒーロー」ですらない、ただの「ヒーロー」。
さすがにこれはあかんやろ、と思った。

作りはセル調の3DCGアニメ

さて、今回は「ルパン三世」について少し書きたい。
2021年、日テレが「ルパン三世」アニメ化50周年を記念して「みんなが選んだルパン三世」という人気投票アンケートを実施していたのをご存じだろうか?
ちなみに、結果は以下の通り。

みんなが選んだ「ルパン三世」

<TVシリーズ編TOP10>
①2期155話「さらば愛しきルパンよ」
②1期1話「ルパンは燃えているか・・?」
③5期24話「ルパン三世は永遠に」
④2期145話「死の翼アルバトロス」
⑤1期4話「脱獄のチャンスは一度」
⑥1期5話「十三代五ェ門登場」
⑦2期148話「ターゲットは555M」
⑧1期2話「魔術師と呼ばれた男」
⑨1期11話「7番目の橋が落ちる時」
⑩2期99話「荒野に散ったコンバットマグナム」

このランキングを見て思うのは、やはり宮崎駿強し、である。
彼がTVシリーズで「ルパン」を演出したのは2度だけなんだが、その2作が1位、4位、どっちも上位に入ってるわけよ。

さらば愛しきルパンよ>1位

<死の翼アルバトロス>4位

両作とも飛行機が出てきて、空で戦うパターンなんだよね。
さすが、「風の谷のナウシカ」「紅の豚」「風立ちぬ」の宮崎駿。
彼は「ルパン」で思いっきり、自分の趣味に走ったといえよう。
「さらば愛しきルパンよ」のヒロインとか、どう見てもナウシカそのまんまじゃん?
この回を見たことある人は分かってると思うが、内容も結構ふざけている。
話が始まって、ヒロインとずっと行動を共にしていたルパンが実は偽物だと発覚し、本物が出てくるのは終盤にちょっぴりだけ。
それも、ヒロインを助ける為だけに出てくる。
もうね、完全にヒーローなんですよ。
思えば「カリオストロの城」もそうでしょ?
あれも盗みとかそっちのけで、ヒロインを助ける為だけにルパンは頑張る。
この「いい人路線」の生みの親って、結局は宮崎駿なんじゃないの?

「カリオストロの城」

一説には、原作者のモンキーパンチ先生は「カリオストロの城」をあまり気に入ってなかったともいわれている。
その気持ちは、分からんでもないわ。
原作のルパンは善人じゃなく、もっと盗賊っぽいし。
私、5~6歳の時に「ルパン」の原作漫画読んで、あまりにもイメージ違うので読むのをやめた記憶があるよ。
確か、あの時読んだ回はルパンが必死に女性の貞操帯を外そうとしてたんだが、当時の私は彼が何をしてるのか全く理解できなかった・・。
かなりオトナ向けで、ややハードボイルドな作風だったと記憶する。

これが「カリオストロ」効果なのかはともかく、ルパンはちょっとマイルドになりすぎたよね。
で、そこは制作陣も一応分かってたらしく、その打開策となるTVスペシャル第1弾、監督を「ハードボイルド」の名手・出崎統に託したんだ。
最初が「バイバイリバティー危機一髪」。
これ、私は結構好きだったりする。
世間的にもそこそこ好評だったみたいで、しばらくTVスペシャルは出崎さんが担当することになった。

相変わらずの出崎演出・・

その精神を継承してるのが2010年代、小池健監督のやった劇場版「LPIN THE ⅢRD」で、この路線は今後もなくさず、是非大事にしていってほしいと思う。
「次元大介の墓標」とか、モンキーパンチ先生も絶賛してたらしいじゃん。
とかいいつつ、実は先生って基本的に寛容というか、一番驚いたのは2012年の「ルパンしゃんしぇい」を公認したことさ。

これは、いわゆる「FLASHアニメーション」というやつ。
普通の手描きじゃなく、アプリで作った簡易なアニメね。
しかも「秘密結社 鷹の爪」で知られるFROGMANが手掛けてるので、とてもチープである。
実際、ルパン役は栗田貫一でなく誰か知らん人がルパンっぽく喋ってるだけで、しかもセリフはほぼ
・俺の名前は、ルパン三世
・とっつぁ~ん
・ふ~じこちゃ~ん

の3パターンしかない。
顔の表情や体の向きも、ほぼ変わることがない。
こんなアニメ、何の目的で作ったんだ?と思ったが、モンキーパンチ先生はなぜか喜んでたっぽい(笑)。

とりあえず、1話だけ見てください↑↑
もはや、何でもありになってきたね・・。
気を取り直して冒頭のランキングの話に戻るが、このランクの第3位に5期最終話の「ルパン三世は永遠に」が入っていたのは少し嬉しいな。
私、これ結構好きなのよ。
この5期では、ルパンは「そろそろ引退すべきかな・・」と悩んでるのね。
そりゃそうだろう。
いまどき、昔気質の「錠前を外して盗む」という金庫破り的窃盗団なんて、時代錯誤も甚だしいよ。
今はセキュリティもコンピュータ制御されてるんだから、どっちかというと窃盗の世界も電脳戦になってるはず。
そういう当たり前の現実に、この5期ではきっちり踏み込んでるんだ。
この脚本は誰が書いたんだ?と思ったら、「コードギアス」「プリンセス・プリンシパル」等で知られる大河内一楼氏だった。
なるほど。
確か2012年の「LUPIN THE ⅢRD峰不二子という女」でも、脚本に岡田磨里や佐藤大などを使ってたっけ。
やっぱり、このへんの売れっ子作家が絡んでくると「ルパン」も少し新鮮になってくるね。

「ルパン三世」5期

5期の敵キャラはITの専門家で、ヒロインもまたITの専門家。
あ、ちなみにヒロイン演じてたのは水瀬いのりね。
思えばルパンのチームは次元が銃の専門家、五ェ門が剣の専門家、不二子がハニートラップの専門家、あとはトータルでルパンが何とかするという形で、いまどきの最も重要なポジション、IT専門のスタッフが元々いなかったわけよ。
これ、やばいよね。
いまどきのアニメなら大体が凄腕ハッカーをチームに抱えてるというのに、やはり「ルパン三世」は70年代スタートの作品ゆえ、こうして設定に無理が出てきてしまう。
で、大河内さんは敢えてその課題を顕在化させたんだ。
なんていうかな、5期はルパン一味や銭形の老いのようなものが若干見えてきて、なんか妙な哀愁が漂っている。
特に最終回の「総決算」感が凄くて、「あ、これひょってしてシリーズ終了か?」と感じたほどさ。
前期のヒロインとか色んな人たちが出てきて、卒業式感がハンパない。
多分、私だけでなく皆さんもそう感じたからこそ、「ルパン三世は永遠に」はランキング3位に入ったんだと思うよ。
だってさ、あのルパンが「本当の素顔(我々が知るサル顔は素顔ではない)」を不二子にだけ見せたんだから。
あのシーンはビビったわ~。

ただし、視聴者には素顔が見えないアングルだった

ああ、これで「ルパン」も遂に終わりか、と確信したのも束の間、その僅か3年後には第6期がスタートしました(笑)。
まあ、それはそれでよかったんだけど。
6期は「押井守回」もあって、なかなか充実してたし。
うん、やっぱ「ルパン」は終われないよね。
ただ、「ルパン=ヒーロー」路線はもはやマンネリ感が拭えないので、個人的には何らかの新機軸が必要だと思う。
たとえ古いコンテンツでも、最近では「シンゴジラ」「シンウルトラマン」「シン仮面ライダー」など色々なリニューアルが施されてるじゃん?
当然、「シンルパン三世」もまた必要な段階にきてると思う。


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