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短編小説

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野球、イコール

野球、イコール

野球よりサッカーの時代。

そう言われ始めたのはいつからだろう。

明らかに野球人口が減って、それ以外のメジャーなスポーツに子供が関心を持ち始めている。

サッカーはもはや国民的スポーツになりつつある。

だって、ワールドカップになるとあんなに若者たちが騒がしくなるのだから。例え、町が汚れることになっても、その熱狂は収まらない。

サッカーが悪いということではない。むしろ、サッカーはそれだけ人々を

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レンズ越しの世界に描く夢

レンズ越しの世界に描く夢

楽しい夏休みが終わり、暑さも次第に和らぎ始めた9月下旬のことである。

大学生になって初めての夏休みを終えた私の足は、重い。この長い休みの間に何かに取り組んだわけでもなく、プールや海で青春を謳歌したわけでもない私の足は、とにかく重かった。

大学生になって、何か自分の人生に変化をつけたかったのだが、サークルに入るでもなく、バイトをして貯めたお金で1人、旅をすることもなかった。

ここまでの私を例え

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その葉がどこまでも高くあらんことを

その葉がどこまでも高くあらんことを

こんな神話が、確かあった。

世界樹という世界を体現する、巨大な木の話。

生命の象徴であるこの木は、なにかとよくアニメやゲームに登場してきては、その魅力をいかんなく発揮している。

やはり位置づけは神秘的な立場に置かれている。

こういう神話には人々を引き付ける力が確かにあるのだと、私は以前から思っていた。

木はとてつもない長い時間を経て、種から形を変える。

そいていつか、私たちの目の前にそ

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あなたの輝きを忘れない

あなたの輝きを忘れない

「灯籠流し」

その始まりは、故人の霊を弔う供養のために行われたそうだ。灯籠は川を下り、あの世へと流れていく。

今は初夏の風物詩に行われるのが一般的だ。なんとも幻想的で、見る人々に感動であったり、心の平穏を与えてくれる。

時代は変われど、人の心に何かを与える効果をこの灯籠流しは持っていることは間違いないだろう。少しだけ、与えるものの種類は違うが。

灯籠の火が川に写り、キラキラと輝きを放ってい

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本が紡ぐ、甘い思い

本が紡ぐ、甘い思い

家の近所の川の橋を渡り、細い道を行ったところにわりと新しめの古本屋がある。本を囲む環境は新しいのに、本自体は古びている。そのどこか不釣り合いなところにちょっとした魅力を感じている。

この古本屋はカフェも併設されているため、よく足を運んでいる。本を買い、そのままカフェで読むことができる。

今日も2冊ほど本を買い、またいつもの席で本を読む。ジャンルはミステリーでも自己啓発でもコメディーでも、何でも

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十戒とあと一つ

十戒とあと一つ

ミステリーのルールにはノックスの十戒というものがある。

簡単に言うと、

1.犯人は物語の始めに登場しなければならない

2.探偵の解決方法に事前能力は使ってはいけない

3.秘密の抜け穴などがあってはならない

4.未発見の毒薬、難解な機械を用いてはならない

5.中国人を登場させてはならない

6.偶然や第六感によって事件を解決してはならない

7.探偵自信が犯人であってはならい

8.読者

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誰かの笑顔が、私の笑顔になる瞬間

誰かの笑顔が、私の笑顔になる瞬間

「仕事は慣れたかい?」

私は掃除中で、後ろからいきなり声をかけられため少し驚いた。

「はい。ようやく慣れ始めました。」

その人の顔を見たが、誰なのかは思い出せなかった。男性で、年齢は50代だろうか。バイトの関係上、こういった人たちには1日に何度もお会いする。

まだバイトを始めたばかりの私は、お客様の顔を覚える余裕などなく、ただただ仕事をこなすだけだった。

「そうかい。頑張ってね」

そう

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”音”を楽しむ人たち

”音”を楽しむ人たち

私は少しばかり、音楽家や吹奏楽部やピアノの調教師や、そんな音楽に携わる人たちに尊敬の念を抱いている。

単に誰にでもできる訳ではない技術を持っているということだけではなく、誰かを魅了することの出来る人たちだからである。

それならスポーツ選手やアーティストもそうなのかもしれないが、その人たちにはないカッコよさや綺麗さや聡明さがあるのである。

時にその人たちが奏でる”音”は、感動、驚き、楽しさ、哀

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世界の広さに比べたら

世界の広さに比べたら

「海の広さに比べたら、なんて私は小さいのだろう」

小説やドラマ、演劇でよく使われている言葉だ。

この言葉を実際に使ったことはないが、海は確かに広い。僕なんかを寄せ付けないくらいに。

高校生の時に水泳部だった僕は、学校の小さいプールで泳いでいた。そのプールを何往復しても、海の広さに比べたら、到底敵わない。

海という自然の産物に広さで勝負を挑んでも、荒唐無稽、お門違いこの上ない。

だが、やは

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