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吉川 正人 (よしかわ まさと): 妻と娘と猫と共に暮らす言語学者.群馬大学情報学部准…

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吉川 正人 (よしかわ まさと): 妻と娘と猫と共に暮らす言語学者.群馬大学情報学部准教授*.趣味はクラフトビール (知る,飲む) だが,このところ探求できていない.群馬在住. [*note 上に書く内容は吉川個人の見解に基づくものであり,所属する大学とは一切関係ありません]

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プロジェクトK: 桐生に移住

前回投稿からかなり間が空いてしまいました.その間に,いろいろなことがありました.それはもういろいろな.ある意味その終着点というか,われわれ家族の出した「結論」が,このタイトルです. わが第二の故郷,下北沢を離れ,群馬県桐生市に移住します.きりゅーにいじゅー.2022年度末に移住し,4月には新生活を始められるようにします. ということで本日は,桐生移住計画,プロジェクトK とその経緯について,書ける範囲でいろいろと書き連ねたいと思います. なんで桐生?移住先は桐生市ですが

    • 真夏の再スタート

      突然ですが,季節外れのご報告です.2023年8月1日付で,群馬大学情報学部に准教授として着任いたしました. 夏休み中 (正確には試験期間中ですが) の着任というイレギュラーなスタートとなりましたが,今日はご報告がてら,「本務校」となる新たな職場についてご紹介したいと思います. 着任先のこと群馬大学情報学部 上に述べた通り,着任したのは群馬大学 (以下「群大」) の情報学部です.本学部は実はかなり新しい学部で,2020年度までは「社会情報学部」という名称でした.2021年

      • シモキタと私 2: 学問の街

        演劇や音楽のメッカとして知られ,栄える街,下北沢.近年はカレーやクラフトビール,そしてハンバーガーといったグルメも人気店がひしめきあい,ちょっとした激戦区の様相を呈しています.クラフトビール好きで,うしとらの引力に誘われてシモキタに住み始めた私としては大変嬉しい限りです. そして何よりも今は,古着屋の店舗数が指数関数的に増え,古着の街として急激な成長を遂げています.最近の下北沢は,一つ店が閉店すると数か月後にはそこが古着屋になっている,という謎の「自動古着屋補填システム」を

        • クラフトビール言語学1: IPA の奇妙なふるまい

          言語学者が集う飲み会で,ビールがいろいろと取り揃えてある店に行くと必ず誰かがこういうことを言います: もっぱら「ははは」という乾いた笑いで迎えられるこの手のボケは,言語学者以外には全くもって理解不能な衒学的な悪ふざけにしか見えないこととお察しします. もっとずっと分かりやすい,こういうパターンもあります: はい,ということで,用語を我流で整理すると, IPA 1: India Pale Ale (インディアペールエール) ホップを豊富に用いた苦みの強いエールタイプのビ

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        • シモキタと私
          2本
        • 暮らしの言語学 Popular Linguistics
          7本
        • クラフトビールと私
          1本

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          英語は多様だ: MCUと英語アクセント (導入編とムーンナイト)

          MCU が,大好きです. MCU,マーベル・シネマティック・ユニバース (Marvel Cinematic Universe).言わずと知れたアメコミのマーベルコミックスを原作とする実写映画のシリーズ (フランチャイズ) ですが,実はこの note でも,シリーズのスピンオフドラマである『ワンダヴィジョン』について考察的な駄文を投稿したこともありました ↓ (いやむしろ,『ワンダヴィジョン』について語りたかったので note の投稿を始めた,というのが正確です). ですの

          英語は多様だ: MCUと英語アクセント (導入編とムーンナイト)

          規範と言語と『森のムラブリ』: 後編

          (本記事は,以下の記事の続編です.まずは前編をご覧ください) 前編に引き続き,下記の YouTube 動画「伊藤雄馬×宮台真司×神保哲生【5金スペシャル映画特集Part1】「森のムラブリ」に見る人間のモラルの根源と他者を恐れる習性」の「面白さ」を少しでも広めるため,動画の解説・補足と私の見解を提示していきたいと思います. 後編プロローグ早く後編を書かなければと思っているうちに前編を投稿してから1週間以上経過してしまいました.そうこうしていると,まさかの伊藤雄馬さんご本人が

          規範と言語と『森のムラブリ』: 後編

          規範と言語と『森のムラブリ』: 前編

          YouTube を開いたら,こんな動画が目に留まりました: 初めて見るチャンネルでしたが,あの宮台さんのお名前とお顔があり,そして何よりサムネイルに大きく映っている伊藤雄馬さんのご尊顔が目につきました. 私も伊藤さんと同じ言語学者ですが,実は某学会の懇親会で一度伊藤さんとお会いしたことがあって,お顔とお名前を存じ上げていたものの,交流はその一回きりで,対面でもオンラインでもテキストでも全く関わりがなかったところ,共通の知人から「大学を辞めて独立研究者になった」という衝撃の

          規範と言語と『森のムラブリ』: 前編

          クラフトビールと私 1

          (本記事は,2021年8月11日に Facebook に投稿した内容の再掲 [一部加筆・修正] です) BRUTUS No. 944: 「ビールについて語らせろ!」BRUTUS No. 944 (https://magazineworld.jp/brutus/brutus-944/) 読んだ.パブに行きたくなった.The Aldgate のオーナーが対談されていたが,あんなに歴史のあるパブだとは知らなかった.知らずに堪能していた. *参考: クラフトビールとの出会いとそ

          クラフトビールと私 1

          may は might よりフォーマルかもしれないけれど日常会話で使わないということもないかもしれない

          かなり前のことになってしまいますが,YouTube でこんな動画を見ました: 英語系 YouTuber として著名な Atsu さんの動画です.英語の助動詞 may と might は,双方ともに「~かもしれない」といった推論を表すのに用いられますが,教科書的には may の方が might より「確実性」が高い,という説明が一般的な説明かと思います.ところが Atsu さんは知人の英語ネイティブスピーカーに「may はフォーマルなので普段会話では使わない」「会話で使うとか

          may は might よりフォーマルかもしれないけれど日常会話で使わないということもないかもしれない

          フェミニズム展の論評合戦に見た研究とアートの関係

          (本記事は,2022年4月2日に Facebook に投稿した内容の再掲です) 研究とアート研究とアートはやっぱり似ている.研究成果の発表は,口頭であれ論文であれ,表現活動の一つに他ならないし,研究もアートも,「表現」されることがらは,多かれ少なかれ世界の「真理」らしきものにどうにかして触れようともがいた軌跡であり痕跡だ. ただとある議論,というか言論の応酬を見て,一つ,決定的に異なる部分があることに気が付いた.正確に言えば,その点で両者が性質を異にするということは「知っ

          フェミニズム展の論評合戦に見た研究とアートの関係

          シモキタと私 1

          (本記事は,2022年3月14日に Facebook に投稿した内容の再掲です) シモキタ再開発下北沢エリアに来て早8年、まさに再開発で移りゆく下北沢を目の当たりにしてきたけれど、下北沢の長い歴史を踏まえれば私なんぞ新参者中の新参者で、どちらかと言えば「新しいシモキタ」を歓迎する気持ちの方が強い。 もちろん好きな店やエリアがなくなっていくのは悲しいが、再開発とは無関係に、コロナ禍の影響でこの街を去っていったのだなと思しき商店を見ると、耐震などとは別種の、この街ならではの「

          シモキタと私 1

          ゼンカイジャー =「ゼンカイ」+「ジャー」?: ことばは混ざって意味をなす

          機界戦隊ゼンカイジャー,絶賛放送中ですね. パラレルワールド世界観,リーダー格が「赤」ではない,リーダー以外全員ロボット,など,既成概念を覆す面白い作品だと思って見ています.また,パラレルワールドが過去のスーパー戦隊たちの存在する世界だというのも魅力的な設定ですし,それを「召喚」して戦うというメタな設定もなかなか憎いですね. さて,設定やストーリーも興味深いのですが,本日は「ゼンカイジャー」というネーミングについてお話したいと思います.恐らく既にたくさんの方がスーパー戦隊

          ゼンカイジャー =「ゼンカイ」+「ジャー」?: ことばは混ざって意味をなす

          知人が私の民宿です: ザ・マミィのコントから考える文法とコミュニケーション

          みなさん,ザ・マミィという芸人をご存知でしょうか.林田さん・酒井さんというお二人のコンビで,酒井さんのツイッターによれば結成3年目 (2021年3月現在) というフレッシュさですが,ツギクル芸人グランプリ2019で優勝した実力の持ち主です. このザ・マミィのネタで,「とある町のバー」というコントがあります.今日はこれを題材に,文法とコミュニケーションの関係について考えていきたいと思います. 「文法」とは何ぞや,ということですが,例えば「私」と「の」と「知人」を組み合わせる

          知人が私の民宿です: ザ・マミィのコントから考える文法とコミュニケーション

          「マルチバース」から「メタバース」へ: 『インバース』誌の『ワンダヴィジョン』関連記事紹介

          また『ワンダヴィジョン』か,と思われるかもしれませんが,まだまだネタは尽きない当作品.当然ながら,日本だけでなく海外でも様々な媒体で取り上げられ話題沸騰の様相を呈しています. 本日は,その中から以下の記事を紹介しつつ,私なりの解釈を提示してみたいと思います.当然ながら,『ワンダヴィジョン』の内容についての説明を含みますので,これから見ようと思われている方はご注意ください: ニューヨークに基点を置くアメリカの Bustle Digital Group が刊行するオンライン雑

          「マルチバース」から「メタバース」へ: 『インバース』誌の『ワンダヴィジョン』関連記事紹介

          記憶は身体に刻まれる: 『ワンダヴィジョン』に餞を

          ついにこの日が来てしまいました.来てほしいような来てほしくないような,そんな思いで待っていたこの日,3月5日.Disney+ ドラマシリーズ『ワンダヴィジョン』最終話配信の日.泣きました.それはもう泣きました.膝に乗っていた飼い猫が逃げ出すほどに号泣しました. 今日は『ワンダヴィジョン』最終話 (第9話) を受けて,感想と私なりの解釈,そして先日の記事で提示した仮説と予測の検証を行いたいと思います. 完全にネタバレありなので,これから見ようという方はご注意ください. 最終

          記憶は身体に刻まれる: 『ワンダヴィジョン』に餞を

          それは素敵な偶然の物語: キラメイジャーよありがとう

          終わってしまいました,魔進戦隊キラメイジャー.「子供と一緒に見る」つもりが,いつの間に親の方が熱中してしまっているのが戦隊ヒーロー.1つ前のリュウソウジャーは全くハマりませんでしたが,2つ前の,ルパンレンジャーVSパトレンジャーは,その構成からして「正義とは何か」を考えさせられるなかなか見ごたえのある作品だったように思います. キラメイジャーについては,始まった当初は何じゃこりゃ感が強めでしたが,見ていくうちにそれすらクセになる魅力だと思えてきましたし,実際そういう狙いだっ

          それは素敵な偶然の物語: キラメイジャーよありがとう