分野を越えた「ビッグヒストリー」の大学教育における可能性
私たちは歴史を学ぶ。昔の日本には侍がいたこと、石器で狩りをしていた時代があること、恐竜がいたこと、太陽ができて地球ができたこと、ビッグバンから宇宙が始まったこと。
138億年におよぶ壮大な歴史を自然科学・人文科学を融合した視点で紐解いていく試みが「ビッグヒストリー」だ。
『ビッグヒストリー入門』では、以下のようにも説明されている。
この試みは、あのビル・ゲイツ氏を感激させ、彼の支援によって知名度をぐんと上げたそうだ。
上述の『ビッグヒストリー入門』や以下の『ビッグヒストリー』は、最近出版された日本語の関連書籍だ。『ビッグヒストリー』については明石書店のウェブページに紹介があるので、興味のある方は参照してみてほしい。
さて、先述した歴史は言葉や文字によって伝えられ、私たちが享受している。この営みは「コレクティブ・ラーニング(集団的学習)」と呼ばれ、「コレクティブ・メモリー(集団的記憶)」として蓄積されることで、世代を超えることができる。
歴史を有していることは、私たち人間(ヒト、ホモ・サピエンス)の特徴であることを「ビッグヒストリー」から改めて学ぶことができる。『ビッグヒストリー』の監修を務められた長沼毅氏も、このことに関して、「人類≠人間」であることと併せて強調している。
※「人類」だとネアンデルタール人なども含まれる。
例えば、アインシュタイン博士の相対性理論も、数多くの人たちが理解し、検証し、伝承しているからこそ、今日の物理学を支えるに至っている。アインシュタイン博士の業績はもちろん偉大だが、それが今日でも活かされていることは“コレクティブ”の賜物だと言える。
「ビッグヒストリー」を通して、学校で習う一つひとつの事柄の背景には、歴史の積み重ねがあることに気付かされる。そして、人間が“コレクティブ”に前進していることも学べる。
この「ビッグヒストリー」は分野を越えた学際的な教育手法としても、注目の価値があると僕は思っている。実際に、「ビッグヒストリー」を用いた教育を展開している大学もいくつかある。例えば、桜美林大学ビッグ・ヒストリー・プロジェクトなどが挙げられる。
この「ビッグヒストリー」が今後の大学教育、さらには、科学教育にどのような効果をもたらすのか、とても興味がある。
『ビッグヒストリー入門』の訳者でもある渡辺政隆氏は以下のように書いている。
「ビッグヒストリー」は理系・文系の“壁”を越える一つの貴重な教材なのだと思う。
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