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睡眠不足がどうして痛みを生じさせるのか

はじめに

痛みと睡眠障害の関係性については数多く報告されています。
痛みを抱えていると、睡眠障害になりやすく。一方で、睡眠障害を抱えていると、痛みを生じやすくなります。

ヒトにより、痛み→睡眠障害のパターンもあれば、睡眠障害→痛みのこともあります。

痛みには、急性痛と慢性痛があります。
睡眠障害には、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、むずむず症候群などがありま
す。

今回は、睡眠不足になるとなぜ、痛みが生じやすくなるかをまとめていきます。

睡眠不足が痛みを生じさせる理由

①痛みの抑制が効かなくなる

ヒトには、痛みを抑制する仕組みが備わっています。
具体的には、内因性オピオイドや下行性疼痛抑制系などがあります。

内因性オピオイドとは?

一般的に、「オピオイド」は「麻薬性鎮痛薬」を指す用語ですが、“麻薬=オピオイド”というわけではありません※1 ※2。オピオイドとは「中枢神経や末梢神経に存在する特異的受容体(オピオイド受容体)への結合を介してモルヒネに類似した作用を示す物質の総称」で、植物由来の天然のオピオイド、化学的に合成・半合成されたオピオイド、体内で産生される内因性オピオイド※3があります。

※1 オピオイドと麻薬のちがい
以前は麻薬とオピオイドは同じ意味で用いてもあまり混乱は生じなかったのですが、現在では「麻薬」という用語は社会的用語であり、薬理学的あるいは分子生物学的用語である「オピオイド」とは意味が異なります。「麻薬及び向精神薬取締法」で「麻薬」に指定されている薬剤が麻薬であり、オピオイド受容体とは関係しないものもあります。

※2 オピオイドではない麻薬
例えば、「ケタミン」という静脈麻酔薬はオピオイドではありませんが麻薬に指定されています(平成19年1月1日から麻薬に指定)。つまり、ケタミンは「麻薬性非オピオイド鎮痛薬」になります。

※3 内因性オピオイド
内因性オピオイドは体内で作られ、生理的状況あるいは生体に危機が迫ったときに放出される物質です。エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィン、エンドモルフィン等があります。

日本ペインクリニック学会

要するに、ヒトは、オピオイドと呼ばれる物質を作り、痛みの抑制をする機能が備わっているということです。

下行性疼痛抑制系とは?

脳幹部から神経線維が脊髄後角に下行し、そこで痛みの伝達を遮断するシステムです。ノルアドレナリンやセロトニンを伝達物質とする下行性疼痛抑制線維がよく知られていますが、その他にもGABAやドパミンを伝達物質とする下行性疼痛抑制線維もあるようです。下行性疼痛抑制系はオピオイドだけでなく、精神的興奮、精神的集中、恐怖などでも作動します。(興奮したスポーツ選手が怪我をしても痛みを感じていないのを見たことがありませんか?)

日本ペインクリニック学会

要するに、オピオイド、精神的興奮、精神的集中、恐怖などにより脳から痛みを感じにくくするシステムが備わっているということです。

睡眠不足になると、この痛みの抑制が効かなくなります。
つまり、痛みを感じやすくなることを意味しています。

②ネガティブ感情になる

痛みは、大きく分類すると急性痛と慢性痛に分けられます。

急性痛から慢性痛に移行する際に、ネガティブな感情が大きく関わっています。

順調に痛みが回復していくパターンでは、痛みが生じても恐怖心がなければ良い方向に進んでいきます。
しかし、ネガティブな感情(破局的思考)があると、さらなる痛みが生じてしまい、痛みの悪循環から抜け出せなくなります。

このネガティブな感情を引き起こす一つの要因が、睡眠不足です。

まとめ

・痛みと睡眠不足の関係性は、多くの研究で報告されています。
・ヒトには、痛みを抑制するシステムが備わっていますが、睡眠不足により働きが低下します。
・睡眠不足によるネガティブな感情が痛みを長引かせます。

痛みを感じていて、「自身が寝不足だな」と思っていたら、睡眠時間を確保していただけるとよいと思います。

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