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過去とわかれ、今そばにいる人と。 / 映画「ノマドランド」

こんにちは、よすです。

映画「ノマドランド」(2021年)を観ました。

※ 以降、完全にネタバレしますのでご注意を



思い出は生きつづける。でも・・・

あなたはこの映画のラストシーンをどう考えるでしょうか?

ぼくは、ファーン(主人公)はノマド生活をやめると思います。

そう思った理由を話す前に、映画を観ていないかたのために簡単にストーリーを説明します。

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ファーンが働いていた鉱山が閉鎖になり、社宅から出ないといけなくなります。彼女は亡き夫との思い出が詰まった街・エンパイアから離れることを拒み、エンパイアで車上生活をはじめます。しかし、すでに高齢者であるファーンが就ける仕事は少なく、各地で日雇いの仕事をしながらなんとか食いつなぐしかありません。

さまざまな事情で同じく車上生活を余儀なくされている高齢者たちの互助グループに助けられながら生活するうちに、デイブという男性と出会います。デイブも車上生活をしていたのですが、彼の息子に赤ちゃんが誕生したことをきっかけに、彼は長年の身勝手さと葛藤しながらも彼の家族が暮らす家に帰ることになりました。

デイブはファーンを自宅に招き、ファーンに「一緒に暮らさないか」と誘います。ファーンは彼からの好意と家族という暖かさを感じながらも亡き夫への想いの間で葛藤し、無言でデイブの家を去ります。

そしてラストシーンへ。

ファーンは互助グループのリーダーに胸中を打ち明けます。
「夫はエンパイアを愛してた。わたしがエンパイアを去ると、彼も消えてしまうように思えて、エンパイアを離れられなかった。」
「父からこう教わったの。思い出は生きつづけるって。・・・でも、わたしの場合、思い出を引きずり過ぎたのかも。」

その後、ファーンは夫との思い出の品をすべて捨てます。そして、夫と暮らしていた社宅を訪れ、最後の別れを告げるように見回ったあと、車を走らせエンパイアを去っていきます。

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以上がストーリーのあらすじです。

ファーンが「思い出を引きずり過ぎたのかも」と思い至るにはかなりの年月と孤独が必要でした。

この映画にはところどころに長い「間」があるのですが、この「間」に彼女の葛藤と孤独と、彼女がそれらに費やした膨大な時間を感じました。

ラストシーンで、互助グループのリーダーが打ち明けてくれる印象的な言葉があります。いわく、「この生活には"さよなら"がない」。

彼が心に抱えていたのは息子の自死でした。ノマド生活で仲間たちと別れるときに交わす「またどこかで!」は現実に再現する言葉で、数ヶ月後か何年後かに本当に再会することになる。つまり、この生活を続けていくうちはだれとも「さよなら」をする必要がない。だから、この生活を続けているうちはまた必ずどこかで再会できる仲間たちと同じように、また息子とも会えるような気がするんだと。

しかし、彼のロマンチックな言葉と裏腹に、現実はそうではありません。ファーンが車上生活で目にしてきたもの、それはもう元通りにはならないものばかりでした。例えば、亡き夫が闘病中、モルヒネを大量に投薬して楽にしてやれなかった後悔。割れてしまった思い出の皿。壊れゆく車。仲間の死。そして、思い出の場所。

思い出は生き続けますが、もう2度と元には戻りません。
いつかは"さよなら"をしないといけない。

ファーンが最後に見つけたのは、思い出の中にはない、新しい生活だったのではないでしょうか。彼女がデイブの元へ戻るのか、援助を提案してくれた姉の家へ行くのかは分かりませんが、「思い出を引きずり過ぎた」という悟りは、おそらくエンパイアでの車上生活へ戻したりはしないでしょう。

ファーンの周りには、彼女を貧困や孤独から助けようとする人が何人もいました。そして彼女自身もデイブや若者には「車上生活をやめ、家族の元へ」と助言をおくるひとりでした。

ぼくたちもファーンと同じく、過去に囚われ、孤独を深め、自分を苦しませる道を選んでしまっているかもしれません。もし、信頼するだれかから援助の手が差し伸べられたなら、素直に応じて社会的な繋がりやそこにある日常を大切にする生きかたのほうが実は幸せなのかもしれません。

今いる友人、家族を改めて大切にしようと思いました。


おわりに

お読みいただいてありがとうございました!
今回は本ではなく映画からヒントをもらいました。

(「ノマドランド」は、2024年4月21日時点で Amazon Prime で見放題対象です!)


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