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小説・自叙

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事実は小説より奇なり否か。
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#エッセー

『唯一愛した女性③』 -別れ/未来編‐

世紀末。高校一年生の秋。

僕は人生で初めて彼女と付き合うという関係になったが、それはその以前と特に何も変わらなかった。相変わらず二人はジャスコに行っては安いソフトクリームを買い、大好きな松本大洋の漫画のことや、数学や物理のことを話した。

「話した」と言っても、僕に無いものを彼女が与えてくれる、というある意味で一方的な矢印のものだった。

松本大洋の作品の数々を教えてくれたのは彼女だったし、テス

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『唯一愛した女性②』-交際編-

世紀末。高校一年生の夏。

僕は半ば強制的に友達にワンゲル部の体験入部に連れ出され、”テント張り大会”に猫の足も借りたいように使われたが、結果は散々。ふてくされ、見知らぬ山から顧問の車でみんなで高校に帰っていた。

体験入部に僕を誘ったアグレッシブな女友達が「今日はすいませんでした!みんなが楽しんでもらえたらよかったです!」なんて言い、負けても一致団結感を強制してくるようなところがきもちわるかった

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『唯一愛した女性』-出逢い編-

もうカミングアウトをしてから18年近く経つ。

ここまでくると初めて会う方でも、十中八九、僕がゲイだということが事前に耳に入っているので、それはそれでラクでいいが、「いつからですか?」とか「女性には本当に興味ないんですか?」とか、未だに聞かれることが多い。
幸い僕は"自己開示欲"の高い人間なので、同じような話をこれまで百回以上してきたと思うし、そこで受ける軽い差別も含めて、それはもう慣れた。

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【実録】僕の躁鬱日記3~そして世界へ~

2011.3.11

思い返せば、2010年は光と影を見た。

過労から躁鬱状態となり、水風船のようにパチンと今にも弾け散りそうな不安定な日々を過ごしながらも、なんとか年を越せた。(日記1~2参照)

かと思ったら、大好きだった彼の前でボロクソに泣いてしまい、しまいには病院送りに。会社には内緒での通院生活が始まろうとしていた。

企業としての”年越し”である年度末3月決算に向けて、様々なプロジェク

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【実録】僕の躁鬱日記2~それから~

前回Noteした『僕の躁鬱日記』。予想以上に反響が大きく、驚いています。中には「泣いてしまいました」とメッセージ頂く方もいらっしゃって、僕は特に泣かせるために書いたわけではないですが、何かを感じて頂けたなら幸いです。自分をさらけ出した甲斐があったのかな?

2010年。
僕は26歳で過労による躁鬱状態になり、家族にまでSOSを出す羽目に。それから・・・

まず、躁鬱とは「躁=トランス状態」「鬱=ダ

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【実録】僕の躁鬱記録

いいことは何度思い出しても思い出し笑いをする材料になるけど、悪いことは、その時は猛烈に自分を蝕み寝ることさえ遮断させるパワーを持っていたのに、時と共にいい意味で風化し、忘れる。人間の脳は本当によくできているな、というお話を。ヨシモト自身の体験したノンフィクション話です。

ふとその悪夢を思い出す時があって、これも自分の人生の1ページだと思って、ここはなんとか記録しておきたい。

26歳の頃。大手広

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