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博士と妻

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大阪生まれの私(博士)と神奈川生まれの妻との日常
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記事一覧

博士と妻 第七回 はんこ

博士と妻 第七回 はんこ

妻は結婚して名字が変わった。

となると必要なのがハンコである。

よくある名字であれば、たとえ持っていくのを忘れても、そこら辺の100円均一の店で買うことが出来る。

しかし、

「粟谷」という名字はそうはいかない。

タワーのような印鑑売り場ですら「粟田」「粟飯原」「粟野」「粟津」はあれど粟谷はない。

ふたりでハンコ売り場を見つけるたび、駆け寄っては肩を落とすことを繰り返していた。

やはり

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博士と妻 第六回 妻の告白

博士と妻 第六回 妻の告白

今日の夕食は妻と鍋を囲んだ。
私は「かしわ」が好きなのでリクエストしたのであった。妻は「かしわ」の意味がわからないと言い、私はそれは鶏肉のことであると、いつもの如く関西弁を伝える儀式を行った。関東では「ヘレ」肉も言わないらしい。「それは『ヒレ』」妻は言う。大阪では肉屋でもヘレ肉を売っている。

鍋の後はテレビで「ベスコングルメ」を見るという流れだった。オードリー春日が司会で「キャスガ(第五回参照)

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博士と妻 第五回 キャスガの謎

博士と妻 第五回 キャスガの謎

妻が大阪にやって来て少し経った日、私たちは妻の用事で中之島まで車で出かけることになった。

妻と私は、妻が大阪にやってくるのに神奈川から一緒に車に乗って来たので、車の運転は上手いことは分かっていた。神奈川から大阪までの旅路に関する出来事は改めて述べたい。

新御堂を南に向かい、途中で事故による渋滞を挟んで私たちは中之島に着いた。大阪は交通マナーが悪いとも言われているが、大阪生まれの私にはわからない

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博士と妻 第四回 草むしり

博士と妻 第四回 草むしり

妻が大阪にやって来てから、家もいろいろと綺麗にしている。

先日も庭の草むしりをやることになった。うちの庭は、父が生前に花を植えて以来ずっと放置していたので、雑草が生えていたのだった。

妻とホームセンターに行って草切り鋏を買ってきて、私たちは庭の草を刈っていった。庭師の職人には及ばないが上手く切れた。また、鋏では切れない大きく育った雑草の木は、父が残してくれていたノコギリで切っていった。

綺麗

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博士と妻 第三回 指輪物語

博士と妻 第三回 指輪物語

文化記号論的に言うと、結婚指輪は記号の意味と機能として考えられる。それは、二人の間の約束や契約という意味として、あるいは周りの人には「お知らせ」として機能する。

今回は結婚指輪の話なのだが、この「お知らせ」をめぐること。

私と妻は、結婚して結婚指輪を購入することで指輪を嵌める生活が始まった。結婚指輪については改めて述べたい。ところで、「お知らせ」としての最初の難関が行きつけの散髪屋なのだった。

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博士と妻 第二回 洗濯機

博士と妻 第二回 洗濯機

今思い出しても笑ってしまう。

たしか結婚してすぐの頃だった。
洗濯機の調子が悪かったので、私は近くのコインランドリーに洗濯に行っていた。

妻は第二種電気工事士資格を持っているので、はりきって洗濯機の修理をするというので私は一人で出かけたのだった。

乾燥機にもかけて洗濯物もふかふかになって、意気揚々と帰ってきたちょうどその時、事件は起こった。

「キャー」という妻の声に何事かと駆けつけた。する

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博士と妻 第一回カニカマ

博士と妻 第一回カニカマ

関西出身の私(博士)と関東からやってきた妻との日常。

妻との会話

いつも見ている「おはよう朝日です」で、アナウンサーの二人がエンタメコーナーになると急にボストンメガネをかけることに対して、関東から来た妻が「これはインテリってこと?」と言った。

「おはよう朝日です」については、何の説明もなく元野球選手も出演していて、妻は「誰だかさっぱりわからない」と言っており、私はそこで、ひとしきり関西ローカ

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