【書評】『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』、喪失と再生の物語
Sakapatat,Semarang,INDONESIA
"There are events in our lives that are difficult to explain with any kind of language"
ここ10年の読書履歴の中で、最も強く印象に残った1冊が村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』であることは間違いない
村上春樹が繰り返し主題とする『喪失』の物語
10代の主人公たちは、ある日何の前触れもなく親友が自殺して足早に去っていき、20代30代の主人公たちは唐突に、妻や友人から理由も明かされずに去っていき、残された者たちは・・・そのなかを、生ききるしかない
そしてほとんど例外なく、去っていってしまった者たちが、彼らの前に戻ることはない
物語の全編を通して流れているのが古典音楽とジャズ
そしてウィスキー、セックス
久しぶりに多崎つくるを英訳版で拾い読みしていたら、また深く絡めとられてしまい、食後に喧騒渦巻くSakapatatのカウンターで一杯、いや、三杯
ほろ酔いになってきたところで、頭の中で繰り返し流れてくる、ラザール・ベルマンの『ル・マル・デュ・ペイ』
多崎つくるのメイン・テーマとも言える、古いロシアのピアニストが奏でる、フランツ・リスト
田園風景が想起させる、理由のない哀しみ
"There are events in our lives that are difficult to explain with any kind of language"
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