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マルチリンガルの頭の中

ある日、知り合ったばかりのひとに聞かれた。
「マルチリンガルの頭の中ってどうなってるんですか?」
マルチリンガルだからといってIQが格別高いわけではないだろう。
でも、「マルチ」なものを取り入れた頭だからこそのおもしろい「スイッチ」や「やわらかさ」はある。

今回はわたしがじぶんで体感したことにくわえ、まわりにいるマルチリンガルたちをみていて感じた「わたしたちの頭の中ってこんなかんじ!」をシェアしてみる。

*わたしがマルチリンガルになった経緯は、こちらのnoteをどうぞ!↓

マルチリンガルはプチ多重人格

ことばは、そのことばが話される国や地域の文化が反映される。
それだけでなく、それが習得されたときの状況やよく使う環境にも影響される。
だから、使うことばによってキャラが少し変わることがある。
それをわたしは「プチ多重人格」とよんでいる。

たとえばわたしのばあい、
中国語を話すときは、「ラフな甘えんぼうキャラ」
英語を話すときは、「ポジティブな自己主張キャラ」
日本語を話すときは、「サバサバな謙虚めキャラ」

中国語は、幼少期に習得し、中国の親戚と話すときに使うため、すこしぶりっこなこどもっぽいかんじになるのだろう。
あと、中国語モードのときは、失礼まではいかなくても、こころなしかラフな態度にはなる。
気を遣いすぎず、迷惑かけられることにも寛容な中国人の親戚たちの性質がうつるのだ。
だから「ラフな甘えんぼうキャラ」

英語は、大げさに褒めるたり喜んだりするポジティブな表現を聞くことが多い(北米英語はとくに)ので、そういう表現を使うことも多くなる。
そして、意見を多く交わす場面が多かった高校・大学時代に習得した。
だから「ポジティブな自己主張キャラ」
その頃に開放的になる体験もたくさんしたため、英語を話すと開放的な性格になって楽。
だから、英語を話しているときのじぶんが心地よい。

日本語は、一番話せることばだから一番じぶんを表現しやすい。
学生のときリーダー的なポジションにいることが多かったせいか、あまり日本語で恋愛をしてこなかったせいか、あまり女の子っぽいかわいいキャラにはなれず、サバサバめ。
そして中国語や英語を話すときより少しひかえめになり、謙虚さが出る。
だから「サバサバかつ謙虚めキャラ」

さいきんは、その違いを感じながらそのことばを使うのも楽しい。

他のマルチリンガルに聞いても、同じような「プチ多重人格」な感覚をもつひとはいるようだ。
人格のギャップの大きさはそれぞれだけど。
ことばを切り替えると、キャラも切り替わる。
そう、マルチリンガルの頭の中には、ことばによって複数のキャラとそれを切り替えるスイッチがあるのだ。

まわりのマルチリンガルの共通点

わたしのまわりには、マルチリンガルのともだちが少なくない。
たとえば

・3ヶ国語ができる中国人
・4ヶ国語ができる韓国人
・5ヶ国語ができるマレーシア人

むしろ日本を出ると、世界はマルチリンガルだらけだ。

そして彼らに共通していることがある。
(※統計とか学術的ではない、わたしの感覚的な結論)

それは
・状況を把握する力がある
・「違い」に寛容

・マイペース
ということ。

マルチリンガルだと、ある状況から読み取れる情報量が多い。
とくに自分が一番なじみのある国のそとに出ると、それが顕著にわかる。
たとえば、母国語のメニューがないレストランに行ったとき。
たとえば、複数のことばが行き交うグループで動くとき。
じぶんがネイティブのことば以外の会話もわかるし、わからなくても情報や雰囲気の感知度が高いからどういう状況なのかなんとなくわかって、不安要素が少ない。
じぶんのわかることばなら、わからないひとたちに説明もできる。

また、複数のことばができるのは、複数の文化にふれてきたということ。
複数の文化にふれてきたから、複数の「普通」があることもわかる。
複数の「普通」があることがわかっているから、いちいち「違い」に過剰反応しない。
「ああ、ここではAが好まれるのね。Bのほうが身近だけど、まあ、Cもありだしね。」といったかんじで寛容。
新しいことや異なることに対してオープンだ。

そして、マイペースなひとが多い印象。
それはたぶん、複数の常識がある中で、どれか一つの「正解」にしたがうことの無意味さを知っているから
じぶんのペースややり方でいけばいいと思っているからだろう。

これらの共通点は、もちろんマルチリンガルにしかない要素ではない。
でも、わたしがマルチリンガルのともだちと過ごしていて楽なのは、これらの理由もある。

マルチリンガルはネコである

冒頭の彼の質問
「マルチリンガルの頭の中ってどうなってるんですか?」に答えよう。

マルチリンガルの頭の中は
・多重なキャラが住んでいて
・状況をすばやく感知しながら
・いろいろなことを受け入れられる
ようにできている。

そんな、「マイペースなネコの頭の中みたいなかんじです。

って、答えになってないか。

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